プロローグ「九尾」
夜。
宮殿は静まり返り、昼間のような活気も、異様な程に無くなっていた。
いつもの事、昼間は騒がしく、夜は静かで…。私も、それには慣れていた。
でも、その日は違った。
月明かりに照らされた"それ"は、残酷なはずなのに、怖いくらい綺麗だった。
「起きて…ッ!目ぇ覚ましてよっ!ねぇ!ねぇってばッ!!いい子にする…ッ、私、いい子にするからぁっ……!」
目の前に広がっていく赤い血、そして、触れたところから冷たくなっていく体温。
「泣くな…って、お前はいい子だ…。」
そう言って、頭を撫でてくれた、冷たい手。
「俺は大丈夫…。死にはしない……、ただ、ちょいと長い間…眠っとくだけさ。」
ヘラりと笑った、あの表情。
「だから、だから、さ……もし、お前がいい子で、強くあってくれたら…。俺を見つけて、その時が例え、"あいつら"みたいになってたとしても……そうじゃなくても、俺を────殺してくれ。」
「無理…ッ、強くあれって……私には無理だよ…っ!殺せなんて…なんで!?なんで…なんでよ…。」
──そばにいて欲しい、ずっと、居なくならないで……。
「また会えば分かるさ。約束、俺とお前の誰にも切られるのことのない、たった一つの約束だ……。」
力もないはずなのに、小指を差し出してきた。
「ッ…約、束。約束っ!」
月明かりに照らされて、二人での、大事な大事な約束。
結ばれた指から眩しい光が溢れ、当たりいっぱいを照らした。
消える。絡めてた指がすり抜け、空を掴んだ。目の前が、真っ白になった。
「──絶対、絶対見つけるから…。」




