なりたいから、なれるもん!
「ねえ、ね〜えっ!B子、聞いてっ!カッコイイひと見つけちゃった〜!!」
「またぁ?こないだの、隣の学校の男子はどうしたのよ。あのひと好みになる!って言ってなかった?」
「あ〜、あのひとね…ウン。彼はもういいかな」
また出た、A子の癖。好みのひとを見付けると、コロッと好きになっちゃう。もう何十回と聞いてきたこのセリフを、それでも親友のことだからと受け止めた。
「でね、でね!そのひと、集めた情報によるとぉ…足が細いコが好きなんだって〜!すぐに痩せるのムズいから、叩きまくって脂肪をツブしたら細くならないかなぁ?!」
ちょっとむちっとしている脚を伸ばし、ぷるぷるしながらべちんべちんと音をたてて叩き始めたA子に、思わずぎょっとした。
「ばっ、バカじゃないの!?叩いたら腫れちゃって、逆に太くなるってば!!ちょっと、こらっ!一旦!一旦やめなって!!」
ほら〜、もう赤くなってるじゃん!!好きなひとの事になると急におバカになっちゃうの、本当になんなの!?心配でしかないんだけど!!
自分で容赦なく叩いた痛みで涙目になってるA子は、「やっぱ痛いの無理だぁ」とか言いながら脚を抱えて撫でている。パンツ見えてるぞ、隠しな。
思い返せば、A子は何度となく好きなひと好みになろうとしてきた。
「〇〇くんね、ショートヘアの子が好きなんだって!切ってきちゃった〜!」
「え!?あんたヘアアレンジが好きだから伸ばしてたんじゃなかったっけ…!?」
「☆☆くんってさぁ〜、スポーティな服装が似合う子に弱いらしいの!これ、どう?似合うかなぁ!?」
「待って、季節考えて!素足でホットパンツなんて真冬にやることじゃないでしょ!!寒すぎて脚青くなってるってば!!」
「△△くん、絶叫マシンを一緒に楽しめる子がいいんだって…B子、お願い手は離さないでね…!?ひとりにしないで!死んじゃう!!!」
「死にそうなくらい苦手ならやめときなさいよ、っていうか私も得意じゃないんだってば!!なんで特訓に付き合わせるのよおおおおっ!!!」
……あ、もう思い出したくない。つい真顔になってしまった。
私はA子が過剰に相手好みになろうとする姿に、本来の彼女らしさがどこかへ行ってしまいそうで…もやもやしてしまっていた。けど、本人がやりたいなら反対するのもなぁ…って、気にしないようにしてたんだ。でも。
「ねえ、そんなに相手に合わせてばかりじゃ自分が無くない?普段のA子を好きになってくれるひとがいいと思うんだけど」
「え?だって好きなひとの好みになりたいのが『あたし』だもん!」
A子はとびきりの笑顔でそう言ってのける。
その表情は、本当にそうしたくてやっているんだと納得させられるものだった。
「……なるほど、そっか。それが普段通りのA子、なんだね」
それならいいのか、と納得すると同時に。
この先も彼女の努力に付き合っていく未来が見えて、何とも言えない笑みが零れた。




