第四章
ベアトリスが追放されてからのカスティリオーネ城は、死神が羽を休める墓所のように、一層深い沈黙に包まれていた。磨き上げられた図書室の床には再び埃が舞い始め、せっかく息を吹き返した城は、主の心と同じく、急速に体温を失っていった。
ダミアンは、かつてベアトリスが寝泊まりしていた北向きの小部屋にいた。追い出したはずの彼女の気配が、いたるところに染み付いている。石鹸の清廉な香り、彼女が整えたリネンの柔らかな感触。
「……裏切り者め」
彼は自嘲気味に呟いたが、その声は以前のような冷酷さを失い、今にも壊れそうなほど震えていた。ふと、サイドテーブルの引き出しが僅かに開いているのが目に留まった。そこには、数冊の簡素なノートが残されていた。
ダミアンが震える指でその頁をめくると、そこには彼が夢にも思わなかった「ベアトリスの真実」が、血を流すような切実さで刻まれていた。
『〇月〇日。ダミアン様は今日も右の顔を隠して、図書室の隅で古い騎士物語を読んでいらした。幼い頃、お母様が焼いてくれた甘いスフレの香りが忘れられないと、一度だけ寂しそうに零されたことがあった。私にその味を再現できるかしら。もし、彼が一口でも食べて、あの孤独な瞳を和らげてくれたなら……。たとえ彼に「余計な真似を」と叱られたとしても、私は彼の笑顔を見てみたいのです』
『〇月〇日。ロレンツォ男爵の従者が私に接触してきた。彼は囁いた。「公爵は狂っている。あの男の隣にいては、お前も、お前の妹も不幸になるだけだ。私に従え」と。失礼な人!私は言い返した。「たとえ世界が彼を怪物と呼んでも、私は彼の騎士になります。引退したら修道院の子供たちに本を読んであげるような、穏やかな余生を彼に送ってほしいのです」と。ああ、私はなんて大胆なことを口にしてしまったのかしら。けれど、あれが私の本心なのです。彼をあの暗い椅子から連れ出してあげたい』
『〇月〇日。男爵が妹の薬を盾に、城の機密を要求してきた。……いいえ、私は裏切らない。彼に泥棒だと思われてもいい。彼を守るために、私がすべてを背負って消えればいい。私が「金目当ての女」として彼に憎まれることで、彼が親族たちの毒牙から身を守るための警戒心を取り戻してくれるなら、それでいい。ただ、神様……いつか彼が、本当の意味で自分を愛せる日が来るまで、どうか彼をお守りください』
「……ああ、ああああああ……!」
ダミアンはノートを胸に抱きしめ、子供のように声を上げて哭いた。彼女が焼こうとして、彼が叩き落としたあの皿。あれは単なる菓子ではなく、彼が失った「母の愛」を彼女が取り戻そうとしてくれた、祈りそのものだった。彼女は自分の取り分をすべて妹に捧げ、自分自身のためには一銭も使っていなかった。それどころか、汚らわしい親族の脅迫に一人で立ち向かい、彼を救うために自ら悪女の汚名を着て城を去ったのだ。
「私は……何ということを……!私を愛してくれた唯一の光を、この手で雨の中に投げ捨てたのか!」
ダミアンは立ち上がった。廊下に飾られた鏡に、自分の右顔が映る。かつては呪いそのものに見えた三筋の傷。だが、今はもう怖くなかった。鏡の中の自分を見つめ、彼は初めて自分の名前を呼んだ。
「ダミアン・カスティリオーネ。お前が真に醜い怪物になりたくないのであれば……今、何をすべきか分かっているはずだ」
彼はマントを掴み、廊下を駆け抜けた。その背中には、もはや孤独な君主の影はなく、一人の女を救うために命を懸ける騎士の熱情が宿っていた。




