第五話:謎めいた先輩との出会い
私は、シリウス様、ルナリス様、アルタイル様、三人から運命の鍵の手がかりを得た。
しかし、その鍵をどう使えば星の書の魔力を回復できるのか、その答えはまだ見つかっていなかった。
それぞれ異なる鍵が、なぜ一つに結びつくのか、私には理解できないでいた。
ある夜、私は一人、沈黙した星の書の前に立っていた。
三人の協力を得たにもかかわらず、進展がないことに、焦りと不安を感じていた。
その時、背後から優しい声が聞こえた。
「一人で抱え込まないで。その重荷は、あなただけのものではないわ」
振り返ると、そこに立っていたのは、図書館の先輩番人、エルミナだった。
彼女は、いつも穏やかな微笑みを浮かべ、静かに図書館の番人の仕事を務めている。
「エルミナ先輩……」
私が声をかけると、彼女はゆっくりと私の隣に立ち、沈黙した星の書を見つめた。
「その書物は、魔力を失ったのではなく、あなたを待っていたのよ」
彼女の言葉は、私の心を揺さぶった。
星の書が魔力を失ったのは、私を導くためだったというのだろうか?
エルミナ先輩は、私の胸元にある、運命の鍵が眠る場所を示す星の光に、そっと触れた。
「あなたを導いているのは、この光だけではない。星の書とあなたは、特別な繋がりがある。
それは、私たち番人だけに与えられた、運命の絆よ」
彼女の言葉に、私の魔力に反応して、鷹の光が飛び出した。
鷹は、エルミナ先輩の周りを飛び回ると、彼女の首元につけられた、星の書と同じ紋様のペンダントを、優しく突いた。
「……あら、どうしたの?」
私が慌てて鷹を呼び戻そうとすると、エルミナ先輩は、微笑んで私を制した。
「いいのよ。この子は、何かを教えようとしているわ」
彼女は、ペンダントに手を当て、私に告げた。
「このペンダントは、私が図書館の番人になった時、この書物から賜ったもの。
これも、運命の鍵の一つかもしれないわね」
しかし、私の胸元の光は、彼女のペンダントには反応しなかった。
エルミナ先輩は、そのことを知っているかのように、静かに微笑んでいた。
「鍵は、それぞれが持つ意味を理解して初めて、真の力を発揮する。
あなたと、彼ら、そして私、それぞれの鍵が持つ意味を理解した時、星の書は再び輝きを取り戻すでしょう」
エルミナ先輩の言葉は、謎めいていたが、私の心を温かく包み込んだ。
彼女は、すべてを知っているかのように、私を優しく導いてくれる存在だった。
「さあ、行きましょう。私たちが、この書物を守るのよ」
彼女は、私の手を取り、温かい声でそう告げた。
彼女の手は、驚くほど冷たかったが、その心は、私を勇気づけてくれた。
こうして、私は謎めいた先輩と共に、運命の鍵の真の意味を巡る旅を続けることになった。
彼女の穏やかさの奥に隠された、深い謎が、私を惹きつけてやまなかった。