第四話:陽気なる商人との出会い
シリウス様とルナリス様、二人から運命の鍵の手がかりを得た私は、次なる協力者を探していた。
手がかりは、図書館の利用者名簿に記された、ある貿易商の名前。
その名は、アルタイル。彼は世界中を旅して、失われた歴史に関する古書を借りていた。
彼の情報網が、運命の鍵の手がかりになるかもしれない。
私は、彼の居場所を突き止めるため、王都の賑やかな市場へと向かった。
市場は活気に満ちており、人々は楽しそうに買い物をしていた。
その中で、一際明るい声が聞こえた。
「いらっしゃい! 今日もとびきりの品を用意しているよ!」
声の主は、アルタイルだった。
彼は、色鮮やかな布地や、見たこともない珍しい品を並べた露店で、人々を笑顔にしていた。
彼の周りには、常に笑い声が絶えない。
私が彼に近づくと、彼はすぐに私に気づいた。
「おお、図書館の番人さん! いらっしゃい!」
彼は、私が身につけている図書館の制服を見て、すぐに私の身分を理解したようだ。
「アルタイル様……お尋ねしたいことがありまして」
私がそう言うと、彼は「もちろんさ!」と満面の笑みで答えた。
「僕に会いに来てくれるなんて、光栄だよ! 何か、お探し物かな?」
私は、星の書が魔力を失ったこと、そして「運命の鍵」を探していることを、彼に話した。
彼は、私の話を真剣な表情で聞いていた。
「星の書が……そうだったのか。それは大変だ」
アルタイル様は、私の話を聞き終えると、私を露店の奥へと案内した。
そこには、彼が世界中を旅して集めた、古ぼけた地図や、謎の文字が書かれた石版が並んでいた。
「僕が図書館で借りていた本は、全部、これに関連するんだ」
彼は、一枚の古びた地図を指差した。
その地図には、誰も知らない「星の村」という場所が記されていた。
「僕の故郷なんだ。幼い頃、この村の記憶だけが、僕にはないんだ」
アルタイル様は、その陽気な表情を少し曇らせて、そう告げた。
彼は、失われた故郷の記憶を取り戻すために、世界中を旅し、情報を集めていたのだ。
その時、私の魔力に反応して、鷹の光が飛び出した。
鷹は、アルタイル様の持っていた石版をくわえると、私に差し出した。
その石版には、私を導く星の光と、同じ紋様が刻まれていた。
「これは……?」
アルタイル様は、石版に刻まれた紋様を見て、驚きを隠せない。
「この紋様は…僕の故郷の紋様だ。それが、君の魔力に反応するなんて……」
彼の瞳に、初めて故郷への郷愁と、運命的な出会いを感じさせる光が宿った。
「君の魔力は、僕が探し求めていた、故郷への道しるべかもしれない。
僕が君の旅を手伝おう。その代わり、君の力で、僕の故郷を見つけ出してくれないか?」
「はい! よろしくお願いします」
アルタイル様は、再び満面の笑みを浮かべ、私の手を取った。
彼の温かい手に、私は安心感を覚えた。
こうして、私は陽気な商人と共に、運命の鍵を巡る旅を始めることになった。
彼の明るさの裏にある、深い想いが、私の心を温かく包み込んでくれた。