サーシャ2
逃げることは許さぬ
逃げれば汝に不幸をもたらさん
我は拒絶
拒絶の楔を汝に打ち込もう
拒絶は祝福ではない
拒絶ゆえに苦悩もあるだろう
だが汝、諦めることなかれ
拒絶の先に未来を求めよ
振り返ることなかれ
俺は目を覚ました。
何か不思議な夢を見ていた気がするが、覚えていない。
どこか懐かしい夢だったような気がする。
木々の間からは光が差し込んでおり幻想的な風景は健在だ。
少し違うところと言えば、でかい胸で空が半分遮られてるといったところか。
このサイズの胸に心当たりは1人しかいない。
おそらくサーシャであろう。
胸を貫かれた際に真ん中が破かれているので下乳が半分見えておりなんとも扇情的である。
(うむうむ。悪くない)
それにしても後頭部もなんだが柔らかいな。
も、もしかしてこれは…
(膝枕というものでは…)
おっと、あぶない。俺のエクスカリバーが反応するところであった。
気をつけなければ。
血が猛ったのが原因なのかわからないけど、左腕の痛みがじわじわ復活してくる。
もっと余韻に浸っていたかったんだけどな。
そんなことを考えてる間にサーシャが意識を取り戻した俺に気づいたご様子だった。
「あのるさん。起きましたか?」
「ああ。起きたよ。無事でよかった」
俺はそう言って体を起こす。
どうやらエルの笏丈はもう拾ったようだった。
エルとカールを救えなかったのは辛いが、サーシャだけでも助かってよかった。
「サーシャ動ける?」
「はい。動けます」
「そっか。じゃあ組合に戻ろう」
俺はとりあえず五面獣のところに向かい、報告する時に証拠となりそうな物を探す。
何を持って帰ったらいいものか。
「あのるさん。顔を剥ぎ取るのがいいかと思います」
サーシャが俺の状況を察して助言してくれる。
「なるほどね。それならかさばらないし証拠にもなるか。血でべとべとになりそうだけど」
俺はシュミレットを拾い上げ、顔の皮膚に突き立て、弧を描くように切り目を入れる。
だが、シュミレットの手入れを怠っていたせいかなかなか切ることができない。
おまけに右腕だけしか使えないし。
四苦八苦している俺を見かねたのか、サーシャが横にきて自分の短刀で手伝ってくれた。
「よし。帰ろう。ああそれと、カールの鎧の一部があるからそれも持って帰ってあげないとね」
「そうですね。その方がカールも喜ぶと思います」
俺は頷き。五面獣の顔の一枚を薬草かごの中に放り込み、シュミレットを腰の鞘にしまう。
そしてエルの笏丈を拾い上げた。
左手を失ったのはなかり痛いけど、サーシャだけでも助けられたことで俺の左手も浮かばれるだろう。
とりあえず、疲れたから早く帰りたい。
それが真っ先に浮かぶのであった。