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ダークビースト  作者: エロ姉
33/36

三面獣2

突き飛ばされたと気づいたのは一瞬遅れてのことだった。

 俺の後ろでばたりと誰かが倒れた音がした。


「え…?サー…シャ?」


 俺は倒れた姿勢のまま後ろを振り向く。

 そこには胸にぽっかり穴が空き、その穴水のようなものを垂れ流しているサーシャがいた。


「あの…る…さ…」


「サー…シャ!サーシャ!」


 俺はすぐに立ち上がり、サーシャの元へ駆けつける。

 

「おい!しっかりしろ!死ぬな!死ぬな!!!」


「グオォオオオオオオ!!!!」


 俺は咆哮の方へ振り向く。

 樹上から雄叫びを上げる三面…いや、四面獣の姿があった。

 まさか奥の手を隠しているなんて思いもしなかった。

 しつこくあの戦法を使っていたのはこの奥の手でケリをつけるつもりだったからに違いない。

 完璧にやられたのだ。


「くそ!くそおおおおおお!」


 俺は泣きながら叫ぶ。


「あの…る…さん。逃げ…て…ください」


「そんなこと言うなよぉ!俺が絶対連れて帰る!だから死ぬんじゃねぇぞ!」


 ガコンガコン…。


「くっ…!」


 四面獣はこちらの様子を伺いながら顔を入れ替える。

 

(どうすれば…!どうすればいい…!)


 まさに絶体絶命だ。

 攻撃の手段を持たない俺では太刀打ちできない。

 攻撃は捌けても、それが3回、4回になったら!

 サーシャを庇いながら捌くことは不可能だ。

 

「あの…る…さん。実は…私…アンデット…なんです。だから…痛くありません…。大丈夫…ですから…逃げて…ください」


 俺はサーシャの胸を改めて見る。

 たしかにぽっかり空いた穴から血は出ていなかった。

 代わりに空いた穴の奥に黒色の石のようなものがチラリと見えた。

 

(そうだったのか…あの違和感はこれだったのだ)


 だが、今はそんな疑問を解消している暇はない。

 次の攻撃を捌かなければ勝機はないのだ。


「私…の(コア)はもう傷がついています…。助かりません…だから…早く…逃げて…!」


「うるさい!俺は!絶対に逃げない!絶対にだ!死んでもお前を連れて帰る!俺は!三面獣だろうが何だろうが、絶対に倒してみせる!」


「あのる…さん」


「グルルルルルルルオオオオオオオオ!!!!」


 四面獣が吠える。

 それと同時に水色の魔力が放たれた。


「うおおおおおおお!攻撃を弾く魔法【ドナート】!!!!!!!!」


 俺は決死の叫びと共に攻撃を弾く。

 だが四面獣は顔を瞬時に入れ替え、黒色の攻撃を間髪入れずに放つ。

 だが俺も負けてはいない。

 その攻撃も弾き飛ばす。

 痺れを切らした四面獣は地面に飛び降りまたも突進しながら顔をガコガコと入れ替え、炎属性の魔力攻撃を放つ。

 俺はそれも捌く。

 だが、またガコンと聞こえた。

 なんとさらに体毛に隠していた5個目の顔を切り替えたのだ。


(五面…!!!!!)


 俺は驚愕する。


(こいつ…!まだ隠してたのか!)


 五面獣の新しい顔は先ほど4属性全ての色が混ざっているように見えた。

 俺は歯を食いしばる。

 五面獣は咆哮と共に全属性の放出を行った。

 俺も最速で腕を戻し、ドナートで何とかその攻撃も弾き飛ばした。

 だが、五面獣はもう目の前に迫っていた。


(ああ。俺…ダメかもしれない)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 私はあのるさんを突き飛ばしていた。

 このままでは2人ともやられてしまうと思ったからだ。

 四面目の顔から打ち出された魔力の攻撃は私の胸を完璧に貫いた。

 

(私だけでよかった)


 私はそう思い、力が抜けていくのを感じなら地面に倒れる。


「え…?サー…シャ?」


「あの…る…さ…」


「サー…シャ!サーシャ!」


 私は精一杯声を出そうとするが途切れてしまう。

 

「おい!しっかりしろ!死ぬな!死ぬな!!!」


「グオォオオオオオオ!!!!」


 四面獣はけたたましい咆哮を上げる。


「くそ!くそおおおおおお!」


「あの…る…さん。逃げ…て…ください」


「そんなこと言うなよぉ!俺が絶対連れて帰る!だから死ぬんじゃねぇぞ!」


 ガコンガコン…。

 四面獣が顔を入れ替えている音がする。


「くっ…!」


(あのるさんだけでも逃げてもらわないと)


 私そう心の中で思った。

 

「あの…る…さん。実は…私…アンデット…なんです。だから…痛くありません…。大丈夫…ですから…逃げて…ください」


 ずっと隠していたことだが、打ち明けるしかなかった。一刻も早く逃げて欲しかったから。


「私…の(コア)はもう傷がついています…。助かりません…だから…早く…逃げて…!」


「うるさい!俺は!絶対に逃げない!絶対にだ!死んでもお前を連れて帰る!俺は!三面獣だろうが何だろうが、絶対に倒してみせる!」


「あのる…さん」


(ああ。この人はなんていい人なんだろう。どうして私のためにここまでしてくれるだろう。だからこそ、助けたい。彼だけでも。)


 そんな思いが通じたのか薄れゆく意識の中で奇跡は起きた。


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