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ダークビースト  作者: エロ姉
32/36

三面獣

俺は堂々と姿を現しエルの笏丈を取りに行った。

 なるべく目立つように、かつ、大胆に。

 乗ってやるぞ三面獣。いつでもかかってこい。

 俺はエルの笏丈を拾い上げる。

 

(何も起こらない…?)


 辺りは静寂そのものだ。


(杞憂だったのか?)


 俺は周囲を見渡し、ゴクリと唾を飲み込んだ。

 汗が頬を伝い、鎖骨にポタリと垂れる。何とも不快な感覚だが、それよりも三面獣を警戒すべきだ。

 心臓が大きく鼓動する。

 澄んだ静寂の中で大きく聞こえる音は俺の心臓の音だけだ。

 

 ガコン…ガコン…


 何かが擦り合わさったような音が静寂にこだまする。

 緊張が走り、全身の筋肉が強張るような感覚を覚えた。

 次の瞬間左上から閃光が放たれた。

 俺はそれに素早く反応し、魔法を発動させる。


「攻撃を弾く魔法【ドナート】!」


 閃光は小盾から跳ね返り斜めに逸らされ、上空で炸裂する。


「いまだ!サーシャ!」


 俺は全力で叫ぶ。


「魔力の槍【マナランス】!」


 サーシャが攻撃用の第二魔法を対象めがけて打ち込む。

 だが、対象はもうそこにはいない。

 まるでパルクールのように木を次から次へと蹴り、高速で三次元移動を行う。


(速い!追いきれない!)


 マナランスは木に突き刺さり魔力となって霧散する。

 

「ゴォォオオオオオ」


 三面獣は木を高速で移動しながら大きな咆哮をした。

 

 ガコンガコンガコン!


 またこの音だ。

 この音の後は来る!

 木を飛び移りながら今度はサーシャめがけて黒色のレーザービームのようなものを放つ。

 もちろん俺は想定済みだ。

 素早くサーシャの前に割って入り、その攻撃を弾き飛ばす。


「攻撃を弾く魔法【ドナート】!」


 小盾に跳ね返され黒色のレーザービームは地面を抉る。

 

(大丈夫だ。防御できる!)


 俺はひとまず安心した。

 もし防御できなかったら死が確定していたが、どうやら俺の魔法はかなり有用らしい。


「あのるさん!すごいです!」


 サーシャは思わず褒めてくれるが気を抜いてはいけない。


「サーシャ!俺が隙を作るからその間に攻撃してくれ!」


「わかりました!任せてください!」


 ガコンガコンガコン。


 この音だ。

 三面獣は相変わらず高速で木を蹴って次から次へと飛び移りながら的を絞らせないようにしつつ、攻撃の機会を逃さない。

 今度は炎のようなビームを放ってきた。

 

(こいつ…やばすぎる…!)


「攻撃を弾く魔法【ドナート】!!!」


 炎の攻撃も俺の魔法によって弾かれ霧散する。

 再三に渡る攻撃を無効化されたためか三面獣は木を蹴るのをやめ地面に降り立つ。


「グルルルルルルル…」


 ライオンのような見た目をしているが顔が3つも付いており、口はヤツメウナギのように丸く、その全てに鋭い牙をつけている。

 足には鋭い爪が3本あり、そのおかげで樹上を移動できていたことに気がついた。

 そして、俺の真正面に立ち唸り声で威嚇している。

 俺は身震いと震えの区別がつかないほど震えて、呼吸も荒くなる。


 ガコンガコン。


 この音!


(そうか!顔を入れ替えていた音だったのか!)


 顔ごとに魔力の色が違う。

 おそらく、先ほどの多彩な攻撃は顔それぞれの魔力による攻撃だったのだ。

 金色の魔力の顔から黒色の魔力の顔へと切り替えている。

 来る!

 

「グオォオオオオオオ!」


 三面獣は黒色の魔力をその恐ろしい口から放出する。

 だが同じ手は食わない。


「攻撃を弾く魔法【ドナート】!!!」


 黒色の魔力の渦はまたも俺の魔法に弾かれ地面を抉る。

 だがそれが三面獣の狙いだったのだ。

 俺が魔法を発動した一瞬の隙をついて高速で突進攻撃を行う。


「なっ…!」


(やられた…!間に合わない!)


 死を覚悟した次の瞬間、信頼できる相棒の声がした。


「魔力の槍【マナランス】!!!!」


 俺の後ろから黒色の槍が放たれ、突進してきた三面獣の肩口を掠め進路を妨害する。

 三面獣はそれに面食らったように体を無理やり捩って回避した。

 とんでもないリフレックスだ。

 三面獣はそのまま地面に生えた苔を巻き込みながらゴロゴロ転がり鋭い爪を地面に突き立てて無理やり体制を立て直すと再び地面を蹴り木から木へと高速で蹴りながら移動する。

 

 ガコンガコンガコン!


 金→黒→赤と顔を切り替え、そこから炎攻撃を飛ばしてきた。


「攻撃を弾く魔法【ドナート】!」


 炎はまたも弾かれ地面の苔を焼く。

 焼けた植物の匂いがあたりに充満した。

 そしてまたその間隙をつくようにまた地面に飛び降り俺めがけて突進する。

 戦い慣れているものの動きだ。

 

(これが三面獣…!)


「魔力の槍【マナランス】!!!」


 それを待っていたかのようにサーシャが攻撃をする。

 だが、三面獣はその場で突進しながらサイドステップを用いてマナランスを回避した。


「な!」


 サーシャが避けられたことに驚きの声をあげる。

 だが俺は冷静に三面獣の突進のタイミングを見計らって魔法を発動させる。


「攻撃を弾く魔法【ドナート】!」


 小盾に三面獣が衝突し、俺の左側に弾かれ木に激突する。


「グオォオオオオオオ!!!!!」


 激突した衝撃で木が大きく揺れ、三面獣も苦悶のような咆哮をあげた。


「魔力の槍【マナランス】!」


 サーシャがすかさず攻撃をするが一歩遅く三面獣は地を蹴り樹上に退避する。

 そして再び木を高速で蹴り飛ばしガコンガコンと顔を入れ替える。

 そして今度はそのまま地面に飛び降り、金色の魔力を飛ばす。


「攻撃を弾く魔法【ドナート】!」


 当然俺はそれを弾き飛ばす。

 そして三面獣はまたそのまま突進してきた。


(懲りないやつだがいける!)


 俺はそう確信した。

 

「魔力の槍【マナランス】!」


 だが、俺の予想は大きく外れた。


 ガコン!


(え…)


 新しい水色の顔が深い体毛の中から出現し、切り替わる。


(まずい…!間に合わな…)


 水色の顔から放たれた水色の魔力が俺めがけて放たれる。

 俺は避けることができない。

 全てがスローモーションに感じた。

 刹那、俺は地面に顔面から倒れた。

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