エチチ・シト4
エチチ・シトは考えていた。
やはりこいつ何かある。突然魔力が覚醒したことに加え、未知の魔力だと。そんなもの1つしかない。
ダークビーストの出現。
だがなぜだ。ダークビーストを生み出した獣の神はレイナースによって殺されたはず。そして、かつてその神に仕えていた闇の眷獣が行き場を失い、この世界に解き放たれた。
ありえない。
もしかしたら獣の神が復活した?
またダークビースト同士の血で血を争う戦いが始まるのか?
いや、復活の予兆などなかった。以前レイナースが獣の神をその手にかけた時自分の身体にイナズマのような感覚が走ったのだ。それはまるで鳥籠から放たれた鳥のような感覚だった。
だがまだそういったものを感じていない。それに闇の眷獣はまだこの世界に跋扈しているではないか。
となると別の何かの仕業か?
息を潜めていたダークビーストが行動し始めたという線もあるか。
ううむ。
それにしても、突如奴に出会ったことは偶然ではなさそうだし、ここ数時間での奴の目覚ましい”成長”は異常なものだ。
完全に人族の域を超えている。
おまけにその魔力はおそらく副産物である可能性が高い。他の何かの根本的な力があるに違いない。
奴の修羅場を何回も潜り抜けたような表情から察するに何度も死んだ結果自身に負荷がかかり強制的に魔力が覚醒したと考察するのが妥当だろうが、死んだ者が何回も生き返ったなど聞いたことがない。たしかにそれに近しい死人族という種族はいるがそれは死んでいる状態だ。だが、奴は生身で生存しているだけではなく全くの無傷だ。死んで生き返るダークマジックか、攻撃を受けて回復するダークマジック、または、攻撃を無効化するタイプのダークマジックか。どちらにせよ奴がダークビーストであればそれは世界がまた変化し始める予兆かもしれないし、私が討伐目標にしている雷竜ガイガルキンを駆逐する絶好のチャンかもしれない。
吉と出るか、凶と出るか。
とにかく今はまだ様子見して利用できそうなら最大限利用しよう。