はじまり
かつて栄えた彼の地は今や衰退の一途を辿っていた。「闇獣」と呼ばれる者たちの争いで大地は悲鳴をあげ宇宙は割れて闇の眷獣が解き放たれた。そこに住んでいた様々な種族は滅びまたは数を減らしながら追い込まれていった。
世界はこの混沌を平定させる者を望んでいた。
そして、それに呼応するように1人の勇者を呼び寄せた。彼はその使命を知らぬままただ1人世界に解き放たれた。
目が覚めたら、「俺」はうつ伏せで横たわっていた。砂埃と何かが焼けたような焦げ臭い不快な匂いで目が覚めたのだ。俺はそれを吸い込んでしまい、「おえっ、ゲホゲホ」と咳き込みながら手を地面について体を起こし、顔を上げる。見ると辺りは黒い霧のようなもので覆われており視界が悪い。しかし、ここが建物の中であることはなんとなくだが理解することができた。
昨日は職業支援先進学校から帰ってきて疲れて寝ていた記憶がある。だがそこからの記憶がない。
俺は夢か?と思ったがこの妙にリアルな夢に背筋がゾワゾワとした。
俺は真っ暗な辺りを這うようにして進み、壁のような物に突き当たりペタペタと触った。石造りに思えるそれを触りながら、
「冷たい…」
俺は思わず声を漏らした。
そのまま冷たい壁を伝い、ドアノブらしき物に手が当たったので勢いよくドアを開けた。
すると目の前には
焼け野原が広がっていた。
「嘘だろ…」
俺はその光景に思わず絶句する。焼けたような匂いはこれだったのだ。家屋だったと思われる物は倒壊し火が燻り消えかかっているが、確かに焼けて黒焦げになっている。周りの建物も倒壊し、バラバラになって大地に転がっていた。
状況が理解できず、俺は困惑する。
(なんだこれは…)
そう思ったは束の間、上空からとてつもない轟音が聞こえた。
空気が震えるような爆音のそれは俺の鼓膜を破壊せんと迫りくる。
俺は思わず耳を手で覆い、その場にうずくまる。
そして顔を歪めながら上空に顔を向けると、空に巨大な怪物が翼を広げて飛んでいた。
(マジかよ…)
現実離れするほど巨大なそれは空を飛びわまりどでかい声で嬌声を上げる。
「ド…ドラゴン…!」
あまりの恐ろしさに俺は足が震えて動かない。呼吸も不規則で早くなり、手足が痺れる。
俺、伊藤亜ノ流。今日が命日かもしれません。