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2022年3月22日放送 フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日 八巻和行の七転び八巻 妄想【愛の劇場】#28 ひこうき雲


 サクソフォン奏者八巻和行(やまきかずゆき)さんのラジオ番組

 こうのすFM フラワーラジオ

 フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日(午後4時~午後6時)

   八巻和行の七転び八巻

 

 というラジオ番組の投稿コーナー

  妄想【愛の劇場】

 毎週パーソナリティ八巻さんから出題される【作品のテーマ】を小説風に書いた作品を投稿するコーナー。


 小説の書き方を知らないシロウトが投稿コーナーに参加。

 そのコーナーに投稿した作品をこちらに投稿しています。


 妄想【愛の劇場】のコーナーで、絶賛!妄想仲間を募集中!! 

 こんな感じで大丈夫なので、コーナー投稿に興味がある人がいてくれると嬉しいです! 

 《番組への参加方法》

 ①フラワーラジオが聴けるように、ListenRadioリスラジのアプリをダウンロード

 フラワーラジオを選局して、お気に入り登録

 ②パーソナリティ八巻さんのX(旧Twitter)をフォロー

 ③毎週日曜日の夜に、八巻さんのX(旧Twitter)から【作品のテーマ】が発表

 ④八巻さんのX(旧Twitter)のダイレクトメールから投稿

 ※番組放送当日の火曜日午後6時頃までに投稿できれば、コーナーの時間に間に合います。

 ※何故か八巻さんが初見で読むルールのようなので、漢字には「ふりがな」をふって下さい。


 小説の書き方を意識しながら文字おこしをしています。

 文章はできるだけ、投稿当時のままにしています。

 言葉が二重になるのが気になるところは、手直しをしています。


 サイト投稿回数 第26回目の今回は………

 2022年3月22日放送。

 妄想【愛の劇場】#28 ひこうき雲

 八巻と杏シリーズ第五回目。


 今日も凍えるような朝を迎える。

 水の冷たさに顔を歪ませながら、山吹(やまぶき)(あん)は仕事へ向かうための準備を急ぐ。

 窓の外には、高く広がる青い空の(した)で赤や白の椿の花が可愛らしい笑顔で冬の寒さを満喫していた。

 申し訳程度の薄い化粧で身なりを整え、ダウンジャケットを羽織る。

 黄色いワンポイントの入ったスニーカー姿の杏は、仕事場となる幼稚園へと向かうために最寄り駅へと急いだ。


 天気予報は晴れのち雪だとテレビでは話していた。

「雪が降ったら子供たちは、とても喜びそうね。でも、気を付けなくてはならない事も多いわ。色々と注意しなきゃ」

 杏は、心の中で自分を(いまし)める。

 でも本当に降るのかしら?と(いぶか)しげたくなるほど、空は青い。


 最寄り駅まで歩いて15分ほど。杏はいつも乗っている電車に間に合う様に少し小走りになる。


 ゴォォォーーッと、空を飛行機が行く音が聞こえた。

 ふと、視線を空に向ける。

 杏の前方を、飛行機から一筋の白いテールが延びている。

 飛行機は気にしないというように、そのまま杏とすれ違うように消えていった。

 杏の視線には白いテールだけが残された。

 足を止めて白いテールを指でなぞる。

「ひこうき(くも)……」


 電車に揺られ勤務先の幼稚園へと着いた。杏は通園してくる園児たちのお迎えをするために、園舎(えんしゃ)の校門に立っていた。

「おはようございます!」

 元気にあいさつをしてくれる園児たちの笑顔に、杏も顔がほころぶ。

「ねぇねぇ。せんせい、みた?」

 年長さんの女の子が杏に声をかけてきた。

舞峰(まほ)ちゃん、なにを見たの?」

「ひこうきくも!」

「ひこうき雲かぁ。先生も見たよ。凄く長かったね」

「ひこうきくもはね、そらさんと、かぜさんが、いとでんわしてる()()なんだよ」

「そうなんだ。空さんと風さんが糸電話してたんだ。どんなお話してたのかしらね」

「うーんとね。ないしょのおはなしだから、いっちゃだめなの」

 舞峰はにっこりと杏に笑顔を向けると、近くに居た友達の方へ走って行った。

 杏は、舞峰の背中から再び空へと視線を向ける。

「糸電話してたんだ。仲が良いのね。どんな話をしていたの?」

 見上げた青い空には白いテールはない。

「ナイショの話かぁ……」

 (ひと)()ちながら、杏は小学六年生の頃のバレンタインの日を思い出していた。


 昼を過ぎ夕方を迎えたあたりで、青く広がった空が鈍色(びいろ)様相(ようそう)を変えてきた。しかし、雪が降る気配はまだない。

 杏はそうそうに仕事を切り上げ家路を急ぐ事にした。


 いつもより二本早めの電車に乗る。

 誰も彼も同じ事を考えているのだろう。電車の中はいささか混み合っている。

 ふと、懐かしい顔が目に飛び込んできた。

 心臓が跳ね上がる。

 まさか、偶然とはいえそんな事がある訳がない。

 杏はそう思いながら、声をかけるべきかどうかを思案(しあん)したが、思い切って声をかけることにした。


 心臓の高鳴りを小さな深呼吸で落ち着かせながら、人と人とを()(くぐ)り懐かしい顔に近づいていく。

 杏はもう一度小さく深呼吸をしてから、両手を力強く握りしめた。

 そして、思い切って声をかけた。


 電車の窓から見える空は、深い鈍色(にびいろ)の空へと変わっていた。

 ヒラヒラと白い花びらが舞い降りているようにも見えた。


 小学生の頃、ナイショのままで終わらせようとした初恋が再び動き出すかもしれない。

 年甲斐もなく、万にひとつの希望に心を踊らせても許されるだろうか。


 杏は幼馴染みへ今あった出来事を報告するべく、スマートフォンを取り出しメールを打った。


「ナイショの糸電話よ」


 ありがとうございました。

 次回もラジオ番組の投稿コーナー

 妄想【愛の劇場】へ投稿した作品の投稿になります。


 妄想【愛の劇場】#29「アルバム」

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