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第9戦線~魔王様、お食事中はお静かに~

 帝国皇帝、ノドック・ロアメには秘策があった。


 帝国内の政治、教育、宗教を牛耳る教会内部に協力者を送り込み10年。教皇を取り込み、教会を帝国の傀儡とすることができつつある。

 一部反発があるものの、力と金で解決し、もはや表立ってその体制に異を唱える者はいない。


 そして、教会がご神体と同じように崇める対象。聖骸が残されていた。

 聖骸は、いつから存在するのか、いったい何でつくられたのか全て不明の人型(ひとがた)の物体だ。

 頭部は無く、その首部分からはひも状の物がいくつか飛び出しており、不気味な様相をしている。腕や足なども動くようだが、自立して動いていたのか、ただの置物だったのかもわからない。

 元々傷だらけで、所々焼け焦げた跡などもあったが、それ以外に()()()()()()()()()()()()()()()()()


 教会の宗教面や政治的な力を削ぐため、教会に剣や魔法を用いて聖骸の破壊を命じたが傷一つ付かず、皇帝の近衛兵が試しても同じ結果で、皇帝はそれならば、と聖骸自体を兵力にしてしまおうと考えた。


 以降、教会は魔法の技術と(かね)を注ぎ込み、ついに完成させたのである。

 首から下は聖骸、頭部に魔石、魔力の込められた宝石を核としたゴーレムが完成した。しかし魔法によって操作されるため機微に疎く、敵味方の区別がつかないなど完成当時は未だ課題は山積みだった。


 しかし、魔法攻撃も斬撃も打撃も、一切効果がないというのは夢のような兵士であり、ゴーレムを基に量産することを目標とし、そしてついに先日量産型ゴーレムの生産に成功した。


 防御力は足元にも及ばないが、自立し、恐怖心もなく、動作不可能になるまで敵を屠り続ける人類最強の帝国兵士が誕生したのだ。

 皇帝ノドクは魔国侵攻に勝利を確信したのだった。



「ふおおっ!ふおおおおおっ!!なんじゃ生きておったか!」


「魔王様、お食事中はお静かに」


 左手に肉を刺したフォークを持ち立ち上がり、右足をテーブルに上げた少女を窘める老人。

 静かに食べるどころではない。そもそも行儀が悪いのだ。


「例の部隊より、地図上に魔王様と同様のマーカーが1つ表示されたとの報告がございました。認識番号から、所属は補給101部隊のようです」

 バトラーが眼鏡を少しずらしてメモ用紙を読み上げる。


「で、で、場所とデータベースでの認識番号と照合は済んでおるのか?」


「膨大な情報からの照合ですので多少時間がかかっておるようですな」


「ふむーん・・・あのギークも大したことないのう。いっつもいっつも良い学校出てるとかなんとかうるさいくせに」


「それ、くれぐれも本人には言わないように。まぁあの様子ですと近いうちに判明するでしょう。それと」


 目を細め眉間に皺を寄せるバトラーに怪訝な顔をする魔王。


「なんじゃ、申してみい。もう肉がなくなるとかそういう不景気な話なら聞かんぞ」


「いえ、大したことではないのですが。()()帝国が攻め入ってくるようです」


「あやつらも全く飽きもせず・・・。それで、今回もどうせササっと終わるのであろう」

 ドカッと椅子に座りなおし、食事を再開、空いた皿を交換する。


 2回目のおかわりの肉、3口目をほお張ろうとしたしたとき、コンコンとノックの音。

「お食事中失礼します、敵情偵察のカラスにより情報がわかりましたのでご報告いたします」


 カラス、というのは隠語でも部隊名でもない。鳥のカラスだ。

 正しくはカラスを模したドローンである。カメラと記憶媒体を搭載し、衛星を介してリアルタイムで情報を得ることができる。

 飛行機タイプでもよかったのだが、もう見るからに魔国のものだと分かる異様さに偵察もクソも無いので擬態しているというわけだ。


 そして部屋に入ってきたのは上下黒の戦闘服にヘルメットの男。この世界に合わせて鎧に兜なんてものは重い上に動きづらいだろうと、魔王がデータベースをもとに戦闘服を量産した。

 重量も軽く、防刃機能もあり概ね兵たちには好評である。

 その戦闘服の男は敬礼ののち状況を読み上げる。


「帝国より騎馬隊1万、歩兵隊3万が出発したとのこと。先頭には何やら動きのおかしい兵が一人。右往左往しながら進み、なぜか後ろから追い越して来た仲間を切り捨てながら進んでいるようで、ゴーレムと呼ばれているようです」

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