表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
文明開拓のすゝめ  作者: パル
4/394

4話『明日への1歩』

ダジ、そう名乗る光の球体は自分を神だと言う。


『崇めても良いのだぞ?』

「あ、はい…」


時間が止まってるのか、空中に留まってる火炎と口を開いた状態で動かないドラゴン。

アミーラをゆっくり地面に置いて正座する。


『さて、早速だがいくつか使命を言い渡す』

「使命…?」

『冨谷歩…つまりお主がこの世界でやらなけらばならない事だ、元々は我の謁見の間で行う筈だったんだがここでは締まりがないが…仕方ない』


使命、突然言われ困惑するが今は安全?と分かった途端に体が一気に脱力する。

あと少しで死ぬかもしれなかったから。


「あの質問いい…ですか?」

『ん?まぁ時間はまだある、申せ』

「……貴方が…俺をこの異世界に転移させた神様でいいんですか?」

『その通り…本来は創造神の役目だが事情があってな』


ふわふわとアユムの周りを漂う球体は面倒そうに言う。


「…こういうのって安全な所で『おぉ勇者よこの世界を救たまえ』って説明してくれるものじゃないんですか?」

『だからそれは創造神の仕事なんだって、今回は例外で我がやったらその上手くいかなくてだな』

「…つまりあんたのせいで俺は死にかけたって事ですか」

『耳が痛いな』


少し神らしくないが、アユムを異世界転移させたのは間違いないらしい。


『質問は以上か?』

「…なんで俺なんですか?俺は死んでも無いし…」


こういうのは転生系ではないが何かしらきっかけがある筈、だがアユムがあった事は浮遊感の中落ちただけだ。



『…あぁ…いや…そうだな……お前は選ばれたのさ、抽選に』

「抽選?」

『あーそっちの惑星で言う生物誕生5兆目だよ5兆目』

「………」


明らかな嘘の雰囲気があるが、追求しても答えてくれる感じはない…なら今出来る事を探した方が良いだろう。


「俺は何をすれば帰れるんですか?魔王を倒す?それとも世界を救う…?」

『…くっ…はははははは!!!』


定番であるこの世界を救え…や魔王を倒して欲しい…思い浮かんだ事を口にするが球体は愉快そうに上下に揺れる。


『何を言うかと思えば…くくく…』

「………」

『まぁそう怒った顔をするな、冨谷歩よ?お主は我が破壊神ダジの『使徒』としてある仕事をしてもらう』

「俺が使徒…?」

『そう!我々はこの世界の事でしか手出しが出来ない、だからお主の力が必要なのだ!』


光の球体はそう言うと上昇して更に輝きが増していく。


『お主に渡した我の権能『消滅』の力を使い『前文明の異物』を全て破壊するのだ!』

「前文明の異物…」

『その通り、この世界は幾度も繰り返しより良い可能性の世界へと向かっている…だが何故か理由が分からないが前文明の異物が残ってしまった…世界の可能性の為前文明の異物は残してはならない!』

「……その前文明の異物ってのを破壊?すれば俺は帰れるんですね?」

『その通り』


つまり、アユムはその前文明?から残った何かを消す…尻拭いをやればいいらしい。


『さて、理解したか?冨谷歩』

「……分かりました、ただひとつお願いがあります」

『言ってみろ』

「…このアミーラを直してくれませんか?」


元の世界に残してきた家族や友人の事もある、だが今はそれよりも隣で横になっているアミーラの事が優先される。


『ふむ…庇ってた物か……これは…』


光の球体はしばらく浮遊してアミーラに近づくとピタッと動きを止める。

しばらく動かないと思っていたら何事も無かったかのようにアミーラの破損箇所を眺めるように近づく。


『我は破壊なら得意だが再生は無理だ』

「そ、そんな…」

『だが例外もある、だがお主にとってそれはそんなに大事か?ただのガラクタだぞ?』

「それは…」


確かにアミーラはこの球体から見れば赤の他人だ。

だが


「アミーラは俺の命の恩人です」

『…ふむ』


諦めた自分を身を挺して助けてくれた、次は自分が助ける番だ、と。

アユムの目を見て光の球体はしばらく黙っていたが納得したように上下する。


『ならば良かろう…そろそろ時間も無くなる頃だ、詳しい説明はまた今度だ』


そう言うと光の球体…ダジはアユムの頭の上まで移動すると先程までとは比べ物にならないくらい輝きが増していく。


『今からやるのはそなたの魂に刻まれたスキルをこの人形に入れ込む、貴様のスキルは僅かにしか残らず身体能力も元に戻るがまぁ構わんだろ!』

「え?!ま、まってそれは聞いてな…」


聞く耳を持たないダジはどんどん輝きが増していく。


『そして最後に!その人形が死ねばスキル所持者であるお前も死ぬ!それを覚えておくように!』

「だからそれも聞いてな…!!!!」


そして光はアユムの意識を刈り取り、最後に見えたのはどんどん姿形が変わっていくアミーラの姿だった。


――――――――――――――――――――――――


住処の主であるドラゴンは目の前にいる侵入者の排除しようとしていた、この場所に来る筈がない人間…どこから来たか知らないが排除するのみ、そう思っていた。


だが謎の攻撃がドラゴンの足を消し攻撃を消し…久しぶりの強敵の出現に興奮していた…が、いざ戦ってみると人間は動かなくなり…呆気なく勝利した。


あまりの呆気ない事に物足りなさを感じながらもトドメを刺すために倒れている人間に近づく、途中人間への攻撃が1度当たらなかったが興味がなくなった今では関係ない。






それは突然起きた、目の前には『人間1人だけ』だった筈がいつの間にかもう1人…いや、もう一体存在していた。




その存在はあまりにも強大な力と迫力があり思わずドラゴンは身構えてしまう、黒の軍服にそれまた黒のコートを身に纏うその姿に…『懐かしさ』を感じていた。


『…敵対対象確認、戦略機械人形プロトタイプ起動』


その存在は口を開き何かを呟くとその周囲に『砲』が出現する、三角の形に尖った先には筒が伸びており10cmの発射口が見える。

その数は6門、全てがドラゴンに向いている。


『安全装置解除、対象を殲滅します』


まずい、そうドラゴンが思った瞬間には6門の砲から破壊の砲撃が始まっていた。




――――――――――――――――――――――――


冷たい風が頬を撫で目が覚める、ゆっくりと目を開けると眩しい夕日が見える。

どうやらここは外らしい。


「ここは…」

「おはようございます、アユム様」


上半身を起こし周囲を見てると背後から声がかけられた、その声に聞き覚えがあり驚きながらも背後を見ると…そこには厨二病をくすぐられる黒い軍服と黒コートを着てるアミーラが立っていた。


「あ、アミーラ!腕…がある!それに目も…」

「はい、アユム様のおかげで新たな体を手に入れる事が出来ました…ありがとうございます」

「良かった…良かった…!」


五体満足の姿を確認出来て安堵したせいかアユムの目から涙が零れる。

その落ちかける涙をアミーラが何処からか取り出したハンカチで拭き取り微笑む。


「……アミーラ少しその…変わった?」

「おや、分かりましたか?」


ひらりと一回転してアミーラはニコッと笑う、洞窟で出会った時はこんなに軽やかに動き笑ってはいなかった。


「どうやらこの『戦略機械人形プロトタイプ』の体ですと限りなく人に近い肉体らしいです、ですがタイプが変わっても私はアユム様の家庭用機械人形には変わりはありません」

「そ、そうなんだ…ところで外に出れたって事は…」

「はい、ドラゴンは私が倒しました…そしたら私とアユム様はこの草原に…しかもどうやら人が住む場所の近くに飛ばされたようです」


そう言ってアミーラが指を向けた方に目を向ける…確かに大きな町が目に入る。

どうやら倒したらテレポートされるものだったようだ。


「そろそろ夜になります、行きましょう?アユム様」

「…そうだね、アミーラ」


差し出される手を小っ恥ずかしくなりながら取り、少し駆け足で町の外壁まで向かう。


「(まだこの世界について何も知らない、元の世界の事もしばらく何も分からない…果たして俺は帰れるのだろうか…)」


不安が無い訳ないが、それでもこの状況を冷静になれるくらいには強烈な体験をした…今後も多少の事では取り乱さないだろう。

だから今は


「この世界を楽しむ…か」


遠くに見える外壁を目指しアミーラとアユムは歩き続ける、人との出会いを求めて。



――――――――――――――――――――――――





暗い空間、その中央に横たわる物体は所々体の一部が無くなっており見るに堪えない姿をしていた。

黒い鱗を持つドラゴンの亡骸は動く気配はない、このまま朽ちるのを待つだけ…



そうなるはずだった、ドラゴンの亡骸から金属音が響きその肉体は少しずつ戻っていく。

その過程で何個も鉄のネジや部品が肉体に混ざっていき、ドラゴンの胸元付近で赤く輝く機械が動き始め…ドラゴンは立ち上がる。



そして何事もなかったかのようにドラゴンの肉体は元通りになり、ドラゴンの退屈な時間が続く。





――――――――――――――――――――――――



月明かりが届かない、壁に取り付けられた松明が地面や壁を照らす、そしてどうやら地下であるらしいこの場所に階段から何人かの足音がする。


「おら!歩け!この魔族の手先め!」


ジャラジャラと手錠が前を歩かされている男の手から聞こえる、そして手錠をされた男は辛そうに悲鳴を上げる。


「俺は無実だー!」


冨谷歩18歳、就活生。

初めての逮捕経験を積む。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ