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338話『ギョッ!と海のいきもの』


いつもなら静かな海に出航した船を待つ者釣りをする者と穏やかな場所である筈の港、だがそんな港は阿鼻叫喚の場所へと変貌してしまっていた。


「下がれ!下がれー!ここはもう駄目だ!」

「束刺槍の準備はまだなのか!」

「上がってきたぞ!戦える奴は前に出ろ!」


逃げ惑う漁師達、そして武器を手に海から上がってくるものへと武器を振るう冒険者と開拓者達だが続々と海からその姿を表すのは人の形をした『魚』であった。

魚でもない人でもない、だが人の手足をして魚のような尾と鱗にギョロっとした目を持つ言わば魚人のような姿をしていた…その手には鋭い刃を持った剣のような苔に覆われた棒を持っておりその一撃一撃は重く盾で受け止めた冒険者の1人が天高く吹き飛ばされる程だった。


「馬鹿野郎!海のモンスター相手は避けるのが基本だと言っただろうが!まだ海中じゃないだけマシだと思え!」

「なんだって港まで来たんだこいつら!いつもはももっと離れた場所だろうに…」

「……それもこれもあいつが関係してるんだろうな」


海のモンスターとの戦い方を心得ている冒険者と開拓者が魚人と戦いながら視線を海の方へと向ける、港からそう離れてない場所で何本も触手が海中から飛び出しており港に止めていた小型の船を巻きとって締め壊しているのが目に入る…幸いにも人が乗ってかったのもあって人的被害はまだ出てないがそれがここにいる事が問題であった。


「『クラーケン』…討伐に行った奴らを何人も葬った化け物め、とうとうここまで来やがったか…ッ!」

「俺のダチもやられたんだ、ここでぶっ殺してやる!」

「おい待て!そっちも重要だがあっち見ろ」


武器を手にクラーケンを討伐するべく海へと向かっていこうとした冒険者を止めた開拓者はある方向を見る、そこには逃がした筈の漁師達が仕事道具である銛や網等を準備しており…その目は怯えと覚悟を決めていた。


「俺達がクラーケン討伐出来てねぇから漁師共が討伐に乗り出そうとしていた話は知ってるな?今それが現実になりそうになってるのが問題だろうが」

「つっても止めようがねぇだろう、あいつら漁師も生活がかかってるんだ…むしろここまで相手が来てくれるなら好都合だろ」

「相手が海の生物だろうが戦いの素人にゃ変わりねぇ…何人も死ぬ事になるぞ!」


海には多くのモンスターが生息しているのもあって漁師達はモンスター相手に怯むような生活は送ってない…が…それでも戦いに関しては素人も同然であり冒険者達の目から見ても戦おうとしている漁師達は無謀だった、しかしもう既にクラーケンは目と鼻の先におり実際に港が襲われてる以上犠牲うんぬん言っている時はもうとっくに過ぎている。

もうやるしかないのか、周囲にいる魚人とクラーケンを早急に倒さなければならない状況で冒険者と開拓者は己の無力さに歯を食いしばったその瞬間……



空から何かが勢いよく落下して魚人の体に深々と突き刺さる、そして魚人が悲鳴を上げる暇もなくその突き刺さったもの……透明だが白い煙を空気中に漂わせ光に反射するそれは冒険者と開拓者の目には『氷』だと分かる、この夏真っ盛りの時期にありえない代物であるが実際に氷の氷柱なのだと分かる。

そして魚人が口を開いた瞬間には突き刺さったその氷を中心に魚人の体が白く覆われていき……あっという間にものを言えぬ氷刻体へとなってしまった。


「なっ…なんだこれは…」

「お、おい見ろ!」


何が起きたのか分からず混乱していると空から同じ氷の氷柱が魚人へと降り注ぐ…戦っていた冒険者や開拓者には1本も当たっておらず自然現象では無いのは確かだ。

そして開拓者の声に釣られ振り向いた瞬間、2人の間を3人の影が通り過ぎていき陸へ上がって来たばかりの魚人へと向かっていく。


「ダガリオ!リサ!」

「あぁ!」

「おうよ!」


その3人の影…1人は短剣を両手に持った小柄な少女で異常な速度で魚人へと近づきその命を刈り取る、1人はロングソードを手に持った青年で軽々と持ち上げ5匹の魚人に狙われるもロングソードと薄い膜のようなもので自身を守り、1人は槍のような奇妙な形の武器を振るい振った瞬間冷たい風が吹き荒れ魚人の体を凍らせてしまう。


「気をつけろアユム!こいつら秋刀魚だ!」

「なるほど秋刀魚ってモンスター……秋刀魚!?え!!?これ秋刀魚なの!?!?!」

「?あぁ、鋭い武器を持つ厄介なモンスターだ!海中に引きづりこまれないよう注意するんだ!」

「まってじゃあこいつら食えるの!?なぁ!こいつら食えるのか!?」

「こんな時に何を言ってるんだ君は…秋刀魚だぞ」

「あ、その感じ食えないよな?だよな明らかに魚人…」

「もう少し時期が後になれば脂がのってて美味いらしいぞ」

「秋刀魚だぁぁぁぁぁあ!!!!」

「うるせぇ!さっさと戦え!」


奇妙な武器を持つ青年…アユムは秋刀魚を倒しつつ叫びロングソードを持つ青年……ダガリオは何を言ってるんだという表情をしてそれを聞いてたリサが怒る、急に現れ魚人達を薙ぎ倒すように抑え込んでいる若者達に開拓者と冒険者は呆気にとられていると後方からワッ!と歓声が上がり振り向くとそこには漁業協会の会長であるシーナが馬に乗って漁師達の前に来ていた。


「貴方達何をしているのですか!ここは危険です下がりなさい!」

「し、しかしシーナ会長、奴が現れたんだ!クラーケンが!ここで奴を…」

「いい加減にしなさい!貴方達が行ったところで無駄死にするだけです!すぐに避難を!」

「もう冒険者や開拓者には任せられないんだ!俺達で先祖達のように俺達の家を……」

「そっち抜けたぞ!」

「ッ!」

「なっ!しまった!」


漁師達の方へと意識が向いていた隙を突かれ1匹の手負いの魚人が冒険者を吹き飛ばし漁師達の方へと向かっていく、氷の氷柱を免れた運がいい魚人だが傷によって死ぬ寸前…生き物としての本能か死にかけとは思えない速度で漁師達の元へと向かっていき……その途中で魚人の体に無数の光が突き刺さる。


「ま、間に合いました…」

「アユム達の元へ向かいます、皆さん警戒を怠らず」

「えぇ!」

「は、はい!」


話していたシーナ達の横に新たな馬が止まり馬に乗っていた4人の少女達…アミーラ達が馬から降りてアユム達の方へと向かっていく。


「なんだあの子達は…危険だぞ!戻れ!」

「いえ…彼女達は心配ありません」

「な…何を言ってるんですか会長!?」

「彼女達はクラーケンを討伐する為に呼んだ冒険者と開拓者です」

「!?……あ、あんな若い子達が…」

「つまり…あれが会長が言っていた集いし英智って奴らなのか?」

「…残念ながら違います、ですが…今は彼らに任せるしかありません」

「……なるほど、つまり今んとこアイツらが俺達の希望って訳か」


漁師達はアユム達がクラーケンを討伐しに来た者達だと知ると驚愕する、そしてその話を聞いていた冒険者と開拓者の男はアユム達を見る…魚人は殆ど抑え込む事に成功しており何匹かは海に必死に逃げているのがいた。

強力な力を持つ魚人をも退けてみせたアユム達を見てもしかしたら…と開拓者と冒険者の男は頷きその場を駆け出す。








「……ところでダガリオ」

「なんだ?」

「あそこにいるクラーケン……どう倒せばいいと思う?」

「何も考えてなかったのか…?僕は分からないぞ」

「いや急いでたから…こ、この中にクラーケンの倒し方わかる人〜」

「そうですね、こうぼーんと倒せばいいのではないでしょうか」

「アミーラお前こういう時に限ってアバウトだよな…」

「今から一本釣りでもするか?昔川でガキんちょ達とやった事があるぞ私」

「川釣りとはスケール違う!無し!」

「少なくとも敵は海の中にいる、まずアユムが潜水し体内に入り内側から凍らせるのはどうだ?」

「……それふざけてる?それとも真面目?お前難しいボケするな?次はグーだぞ?」

「クラーケンってなんですか…?」

「ガバラマドさん!?教育不足ですよ!?」

「勇者冒険伝第4巻11章の『海の恐怖』によれば巨人の如く掴みあげ振り回したとあります!つまりアユム様も同じようにすれば!」

「俺と勇者一緒にするな!そんなの出来るの勇者だけだからヒストル!!!」

「海をクラーケンもろとも凍らせる?」

「おぉ…急に真面目だな…なんかスズランが1番安定してると安心するな…」

「なに、私もふざければいいわけ?」

「いやいやいやいややめてくれ?って言っても海全部を凍らせるほどの魔力は無いしな…」

『はいはい!名案!』

「却下」

『なんでよーーーー!!!』

「……困ったな」


現在進行形でクラーケンは港の船を荒らしに荒らしている、幸いなのは中型から大型船は漁に出ているのか見当たらず人が溺れていると言った被害は出ていないこと…だが運が良かっただけで本来なら交易や待機で居てもおかしくはなく時間をかけ過ぎたらそれこそ戻ってくる船も出てくる。

上級試験でもある事を考えれば早急な討伐が求められるが…相手は海中の中から触手だけを外に出している状態、手を出そうにも海の中に入るのは難しく触手だけを攻撃しても効果があるのか不透明……仲間達と案を出し合うがこれと言って名案が浮かんでこない。

万事休すか、そう思っていた矢先に誰かが走ってくる足音が聞こえ振り向くと2人の男がアユム達の後ろで立ち止まる。


「よぉ、クラーケンを討伐するって?」

「貴方達は……?………!?……………?だ、誰!?」

「俺達の事は置いとけ!セイレーンの冒険者と開拓者だと分かりゃそれでいい」

「今あんたらはクラーケンの倒し方を知りたい、だろ?」

「!?知ってるんですか?」

「クラーケンの討伐はした事はねぇがこれでもこの町は長ぇ、討伐した話は聞いた事がある…だが実際に討伐したのがその方法かは確かめようがない…後は分かるな?」

「……一か八かですか」

「やるかい?やるなら手を貸すぜ」


海の男のようなムキムキの男達が来たのにビビったがどうやらこの町の者らしい、クラーケンの討伐方法を知っている…だがそれが確実かは保証できない。


「……やりましょう、教えてください」

「よしきた!決断が早い奴は好きだぜ!そうと決まれば人手がいるな…サオウお前は他の奴らに束刺槍を準備させろ」

「おう!」


アユム達よりこの町に生きる者の方が可能性はある、そう判断しアユムは頷くと冒険者の男が開拓者の男に指示を飛ばし開拓者の男はその場を離れて何かを準備している他の者達の元へと向かう。


「あの、それで俺達は何を?」

「まぁ落ち着け…クラーケンはその巨大な触手で船を掴み締める事で破壊する、海のど真ん中で船を失えば死も同然だ…話ではある冒険者がクラーケンに遭遇した時に奴の触手をまず攻撃した」

「触手を?まぁ唯一見えてる部分ですから分かりますが…」

「ま、そこは誰しもが思い浮かぶ事だな?だが1本2本攻撃したところで奴にはあまり効果があるようには見えなかった…が…話はここからだ」

「んだよ勿体ぶんなよ」


今も尚クラーケンは暴れ回ってるのもあっていつ矛先が港側に向くか分かったもんではない、時間が惜しいが冒険者の男はしっかり溜めてからニヤリと笑う。


「……普通は触手を攻撃してる間に船が壊される、それがクラーケンの目撃と討伐報告の少なさの原因だ…だがその冒険者は一気にクラーケンの触手を攻撃し『奴が顔を出した』」

「奴?…クラーケンの事ですか?」

「その通り、海中にいて顔を出さねぇクラーケンは海上が見えてる訳じゃねぇってことだ…今ここで奴の触手を攻撃すりゃやっこさんはなんだなんだと顔を出すって訳よ」

「うーん…どう思うダガリオ」

「色々と思うところはあるが…もしそれが本当ならば本体を叩くチャンスになる」

「だよな…分かりました、それやって見ましょう」

「よし、んじゃ…丁度準備が終わったようだな」

「束刺槍の準備が出来たぞ!」


本体を攻撃出来ればクラーケンを倒せる、上手くいけばだがやる分には可能性は高い…そうこう話してる間に準備をしていた方が手を振りながら何か大きなのを押してくる。


「これは?」

「これは『束刺槍』ってやつで主にモンスターに向けてぶち込む…まぁ槍だな」

「この後ろに付いている金属は何でしょう…?」

「っと、あまり触らない方がいい爆発するぞ」

「ば、爆発!?す、スズラン〜!」

「はいはい…好奇心に負けて触ったのよね」

「はははは!冗談だが嘘じゃない、これは槍を魔力の爆発力を出力に吹っ飛ばず代物で水深40mまでは確実にぶち抜けるってもんよ」

「40m!?そりゃまた凄いものが…」

「まぁその分重いわ狙いにくいわ燃費悪いわで使い勝手は良くないがな」


いわゆる大砲の火薬を魔力に、弾を槍にをした物だ…槍には頑丈そうなロープが付けられており外す事も可能そうなところを見る限り飛ばすだけと刺してロープで引っ張るといった用途で使い分けれるらしい。


「触手をボコボコにして出てきたところをこれでブスッ!と刺してやる訳だ」

「なるほど、で刺したらどうするんですか?」

「ん?」

「いやですから刺したあとですよ、何処か引っ掛けて固定するんですか?」


相手は推定数十メートルの大怪獣レベルの化物である、ロープ付きで突き刺した後は地面に固定されている杭か何かで縛り付けるのかと続々と並べられている束刺槍を見ていると…冒険者の男は太陽のような笑みを浮かべる。


「引っ張る」

「ん?」

「全力で引っ張るんだよ」

「……えぇぇぇえぇぇ!?人力!?最後は人力なの!?」

「ぶっ刺した後はロープ引っ張って一本釣りよ!海の男ならクラーケンの1匹2匹釣れなくてどうするってんだ!」

「の、脳筋が過ぎる…」


少し頭を使った作戦かと思いきや仕上げはお母さんよろしく仕上げは漁師さんである、どういう事だと頭が混乱し始めたアユムを他所に開拓者の男が束刺槍が全て配置されたのを確認して戻ってくる。


「ウオウ用意が出来たぞ」

「よーし…後は触手だが…遠くから魔法使うか?と言っても魔法使える奴が今そう多くは…」

「あれを攻撃すればいいんですね?」

「ん?」


クラーケンは港のすぐ側ではなく少し離れた場所にいる、接近戦や矢を当てるには難しく魔法を使うのが楽ではあるがこの町に今魔法使いは多くないらしく冒険者の男が顎に手を当ててると…アミーラがクラーケンに指を向けながら男に話しかける。


「あぁそうだが…あんたらもしかして魔法使い何人かいるのか?なら話が早いんだが…」

「いえ魔法を扱える人はいますが私は魔法は使えません」

「ん?じゃあ何を…」

「『遠距離から砲撃するのは出来ます』」

「あ」

「ん…」

「げっ…」

「も、もしかして…」

『あ〜』

「…?…!」

「嘘でしょ…!」

「な、なにどうしたんだ?お、おいなんで離れて…」

「『目標を確認、安全装置解除……目標を殲滅します』」


男達はアミーラが何をしようとしているのか分からず突っ立っているとアユム達が何かに気づき急いでその場から離れ始める、長年の冒険者開拓者の経験で嫌な予感がした男達は急いで離れようとしたその瞬間…アミーラの周囲に『砲』が出現し………煌めく。












とんでもない爆音と爆風によって耳がキーンとなりながら氷の壁から顔を出したアユムは平然な顔をしているアミーラを睨む。


「おいアミーラ!お前使うなら使うって言えよ!!!」

「言いませんでしたか?」

「遅いわ!!!見ろ!急な砲撃に皆腰抜かしてるぞ!」


視線を向けると冒険者と開拓者の2人、そして束刺槍を準備していた者達が訳が分からなくなって呆然としている姿がありそれを見たアミーラは少し考え…


「…てへ」

「てへっ?で許されると思ってやがる…」

「まぁその話は置いといて」

「置いとける話か!?」

「見てください『出てきましたよ』」

「ッ!」


そう言って海の方へ指を向けるアミーラ、視線をそちらへとむけると…海の上には砲撃によってボロボロになった無惨な触手…少し焼けて美味しそうになってるがその触手の下の海面が少しずつ揺れ始め『海を割る』

巨大な何かが現れようとしているのを見て呆然としていた男達がハッとなる。


「な、なんだが分からねぇがクラーケンが思惑通り…なのか!?思惑通り出てきやがったぜ!」

「思惑通りです、ぶい」

「束刺槍!用意!クラーケンを討伐するぞ!」


一瞬膝を折られた感じになってしまったが思惑通り…?クラーケンの本体が現れようとていた、アユム達も武器を手に持ちクラーケンとの戦いが幕を上げる。


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