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336話『港町セイレーン』

短めです。


ガタガタと揺れる荷物の音を聞きながら荷馬車の後ろから空を見上げつつアユムはぽつりと呟く。


「……なんでギルドが貸し出してくれるのってこれないんだよ、幌があった方がめちゃくちゃいいじゃん」


そう言いながら日光を遮ってくれてる幌を見上げる、ギルドが冒険者や開拓者に貸してくれる荷車は幌が無く雨風が防げず時期的に天候的によっては地獄と化す…前回の未開拓地への救出依頼にてずぶ濡れになったのを思い出しつつアユムが愚痴っていると隣に座っていたダガリオが呼んでいた本を閉じてため息をつく。


「はぁ…君は今更そんなことを言うのか」

「んだよ、真面目に俺はギルドから借りずに荷馬車を購入するのを検討してるんだぞ」

「やめておけ、君はなぜ僕達冒険者や開拓者が使う荷車が商人らが使う荷馬車と違うのか考えた事はないのか?」

「ない!」

「……少しは考えてくれ、確かに雨が降れば体温が奪われ太陽光も風も問題にはなる…だが君は今こうしてる間に外の状況は分かるか?」

「……あ」


そう言われ周囲を見るが幌がない後ろと前の部分しか外が見えず周囲の様子は完全には分からない、初歩的過ぎる事に顔を真っ赤にしてるとダガリオは本を鞄に入れながら幌を見る。


「僕達は未開拓地という危険な場所に行くんだ、視界が制限されるのは死のリスクが高まる」

「……はい…」

「……だが、物資が腐ったり濡れてカビが生えるのも問題なのは間違いない…今のように危険が少ない道を通ってる場合を想定して帰ったら検討してみるのもいいかもしれないな」

「へいへい…危険が少ないねぇ…」


そう言われまた外を見る…道は綺麗に整備されており激しく揺れないところから凹凸が少ない人の手がよく入った場所なのだと分かる、これも開拓者の仕事なのだと思いながら視線を中へ戻す。


「…上級試験か」

「不安か?」

「いや、皆が受けると決めてくれたんだ…不安なんてない」


そう言ってアユムは拳をダガリオへ向けダガリオもまた拳を上げてアユムとダガリオは拳をぶつける。

そう、今アユム達はエレファムルにはいない…視線を荷馬車の前方向へと向けると手網を握ってる一人の男…更にその奥には長い隊列を組んでる荷馬車の列が広がっていた。

アユム達は商隊の護衛を条件に相乗りさせてもらっている状況でとある場所へと向かっている、あの後アユムは仲間達の元に戻りセシリアからの提案を話し話し合った結果…上級試験を受ける事になった。

準備を終わらせ商隊に混ぜてもらい依頼の場所へと向かってる最中でアユムとダガリオは1番最後尾の荷馬車に乗せてもらっている。


「おい兄ちゃん達、見えてきたぞ」

「…やっとか」

「長かったな」


手網を握ってる商人の男が振り向きながらアユム達に声をかけアユムとダガリオは商品を倒さないよう間を縫って前へ向かい顔を覗かせると…商隊が向かっている目的地が見えてきていた。


「あれが港町『セイレーン』…か」


エレファムルを出発して15日程…少し下へと下った先にある海岸沿い、大型船から小型船まで様々な船が行き来しているのが見え見た事もない様々な形のものがある…そしてその船が停まる港、エレファムル以上に大きな町である港町セイレーンが広がっておりここがアユム達が上級になるための依頼の場所なのだとアユムは少し胃が痛くなりながらも覚悟を決めるのであった。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



商隊の荷馬車は次々と門番のチェックを終え町の中へと入っていきアユム達は集まって商隊のリーダーである商人の元に来ていた。


「ここまでご同行させて頂き、ありがとうございました」

「いやいいんだよ私達もここに来る予定だったからついでだ、それに君達のような優秀な冒険者と開拓者が護衛に付いてくれるなんてラッキーだったよ!ははははは!」

「良かったです…それでは俺達はこれで」

「あぁ、また会おう」


そう言ってアユムと男は握手をして男は商隊に戻っていく、そのままこの町で商売する予定なのかかなり張り切ってるのが分かる。


「いい人でしたねアユム様」

「だな、セシリアさんからの紹介とは言えど出発当日に俺達乗っけてくれるとは…」

「おい話してねーで私らもとっとと行くぞ、依頼主に会わねーといけねぇんだから」

「っと、確かにそうだ…皆いるかー?」

「全員いますよ」

「よし…じゃあ入るか俺達も」


商隊の荷馬車が全て町へと入ったのを見てアユム達も入口へと向かう、港町セイレーンは海に面していない方は無いが陸に面してる方はエレファムルのように防壁を建てており入口が複数存在しアユム達はその中の1つに来ている。

門番にギルドカードを見せ荷物チェックを軽く済ませ通行の許可を貰ったアユム達はそのまま歩いて門を潜り町の中へと入っていく。








まず感じたのは鼻につく潮の香り、そして立ち並ぶ建物に隠されても覆いきれない程の広大な海が遠くに見え大勢の人で賑わっているのが目に入った。

通りを歩いて町中を進んでいると流石は港町か大きく新鮮な魚がズラリと並んでいる光景が目に入りアユム達は思わず視線を奪われてしまう。


「おー、すげー」

「おい見ろよあれ魚か?魚にしてはでかくねぇか?」

「僕達が食べてるのは川魚だ、あれは海で取れるもので川魚より数倍も大きいんだ」

「へぇー」

「魚……アユムが言っていたサシミがここなら食べれるかもしれませんね」

『アニサキスが怖いよぉ…』

「新鮮な魚なんてエレファムルじゃ食べれなかったからなぁ」


エレファムル近くにある大河で魚は捕れるがどの世界でも生食にするのは少し怖い、しっかりと焼かないとだが立派なマグロのような似た魚を目にした瞬間久しぶりに食べたくなり寄生虫をどうにか除去出来ないか考えていると…


「…ん?サヨ、どうかしたか?」

「…………え?」

「なんか遠く見てたけどなんか見つけたのか?」

「な、なんでもありません!ほらあの、あのトゲトゲなのを見てたんです!」

『なにあれ……ウニ?』

「あれもこの町では食べるのか…?僕も知らない未知なるものが沢山だ…」

「みんな見るのは後にして、今回上級試験だってこと忘れてはないでしょうね」

「そうでしたね!行きましょうアユムさん!」

「あ、あぁ」


視界の端にサヨが見え、そのサヨが海の方をジッと見ていたためどうしたのかと聞くが何故かはぐらかされてしまった。

少し気になったが今回の依頼主がいる場所へと向かうため移動し始めたため聞くタイミングを逃してしまう、何か考え事があったのだろうという事にしてひとまずは目の前の上級試験に集中する。

依頼主の場所は手紙に同封されていた地図に書いてありアユム達はその地図に従ってあっちこっち歩き回りとある建物の前に辿り着く。


「ここらしいわ」

「ここは…『漁業協会』?」


港町セイレーンの海から少し近い場所にある大きな建物、その建物には看板がありその看板には大きな字で『漁業協会』…そう書かれていた。


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