334話『夏もあげぽよ』
荒れ狂う風とその風によって船体へと叩きつけられる波は高く打ち上がり雨のように体を濡らしていく、何処を見ても広がる海の上で揺れている大きな帆船の先頭で海に落ちないようロープに掴まっている1人の初老の白髪の女性が睨みながら空を見上げる。
「まったく…運がないね、こんな時に限って急に天候が悪くなるとは…」
「キャプテン大変だ!」
見上げた空は雲が多く夜なせいで暗く時起き顔を見せる月が視界を確保してくれる、女性が見上げていると後ろから髭を蓄えた男が風の音に負けないくらいの大声を出し女性もまたそれ以上の大声で返す。
「なんだい!」
「ここから北東方面にまた『奴ら』です!」
「チッ…懲りない奴らだねぇ」
「どうします!撤退しますか!」
「馬鹿言うんじゃないよあほンだら!!アイツらを拠点に招待する気かい!?発散したいなら自分の右手にでもキスしな!」
「冗談きついですよキャプテン!」
腰から望遠鏡を取り北東を見ると波に揺れて向かってくる船が複数見え女性はニヤリと笑う。
「ハッ!あいつらが出しゃばってくるんだ、間違いない…ただ無理やり通るにはまだ時期じゃない…かと言って逃げる訳にもいかない…なら答えはひとつだよ!」
そう言って女性は腕に巻き付けていた真っ黒のバンダナを頭に巻き付けサーベルを腰から抜いて振り向き甲板の上で女性の指示を待っている男達に向けサーベルを掲げる。
「剣を抜きな男共!家に帰る前のひと仕事だ、奴らにその剣ぶち込んでやりな!!!」
「「「「おぉーーーーー!!!」」」」
男達は声を上げて武器を掲げる、帆を広げ風に乗って動き始める船は真っ直ぐ向かってくる船へと向かって進み始める。
一定のリズムの音が聞こえ目を開ける、目の前には簡素な机と椅子と棚があり窓の隙間から入ってくる光と遠くから聞こえる子鳥のさえずりから朝なのだと分かる。
まだ眠い頭の中少女…サヨは体を伸ばして目を覚まさせていると一定のリズムで扉がノックされる。
『サヨ、起きてますか?』
「あ、は、はい起きてます!」
『なら良かった、食堂にもう皆集まっていますからね』
「分かりました!今向かいます!」
扉からシスターであるリードの声が聞こえハッとなったサヨは急いで起き上がる、司祭になった今でもリードが経営している孤児院の一室を借りて寝泊まりしており町にいる時は食事も孤児院の子供達と共に一緒に食べている。
寝巻きから急いで着替えて部屋を出ようとしたところでピタッと立ち止まり慌てて窓際に向かう、窓の扉を開けると外の光が眩しく目を細め目が慣れると両手を合わせて目を閉じる…ガバラマドの者として祈りは欠かさず行わければならない事であり危うく忘れて行く所であった。
祈りの時間は決まっているものだがサヨは通常よりも長く祈りを続けていた、それは主神に対する祈りだけではなく別の為でもあった。
「…今日も1日頑張るから見守っててね、お母さん…お父さん」
それは今は亡き両親に対するものでその時だけサヨはいつものしっかりとした雰囲気ではなく年相応の様子であった…暫くして両手を下ろしサヨは近くに立てかけていた杖を手に部屋の扉を開けて出る頃にはいつものちゃんとした司祭のサヨに戻っているのであった。
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ビバもパリも踊りそうな炎天下の中でも生きる為に今日も動き続ける町エレファムル、時期で言えば7月の中盤で夏が始まって間もない頃であるため道路整備をしている者達や露店の商人達は暑そうにしている。
現代のようなクーラーや冷感シートのようなものは無く窓を開けて水をよく飲み塩分を補給しつつ体温調節をしなければいけないのでかなり大変である、そんな中で何故かその暑さを微塵にも感じていない者が存在していた…それは…
「いやー…外の暑さが嘘のようですね〜マミリさん」
娯楽はそこまで多くない町で時間を潰すならこことまで言われている場所…クリラスラ商会エレファムル支店、その店の中にある事務所の椅子に座りながらアユムは目の前を見ると机を挟んで座っている支店の店長であるクリラスラ・マミリが頷く。
「そうだろう、我がクリラスラ商会が誇る工場で制作された試作品がここまでとは私も思いもしなかったよ」
「まさか冷やすんじゃなくて熱を奪うなんてマミリさんもよく考えますよほんと」
外は汗を流してしまう程の暑さだが店の中は汗どころか熱がこもっている様子もない、そしてアユムとマミリも汗ひとつかいておらずどういう事なのかと言うと部屋の中に置かれている鉄製の箱にその答えがありアユムが話を続けるとマミリは頷く。
「エレファムルの夏はとても暑いと聞いてな、それを聞き何か出来ないかと試行錯誤していたが数ヶ月前にゴーストが北西にある廃墟で出たという噂を聞きピンと来たわけだ…冷やすのではなく熱を奪えば涼しくなるのではと」
そう言ってマミリは鉄製の箱を見る、扇風機をつけたりクーラーで部屋を涼しくしたりなど色々とアユムも思いつくがゴースト…幽霊が場を冷やすというのを参考に場の熱を奪うという事を思いついたマミリはすぐに上に打診して作ってもらったらしい。
確かに建物全体を涼しくするなら窓を全て開け熱を逃がしてからクーラーを付けて数時間かけての作業になるだろう、ただマミリが考案した装置はものの数十分で建物全体の熱を奪い少しひんやりとする状態にしてしまった…ファンタジー特有のとんでも装置だが支店で使用している事から安全性も確立させた試作品なのだと分かりアユムは感心しているとマミリは少し困った表情をする。
「想定以上の出来だが本来は即座に熱を奪う筈だったんだ」
「え?そうなんですか?」
「あぁ…だがそれだと生物の熱も奪うらしく……何人か死にかけたらしい」
「……………まずいっすねそれ…ただまぁこの短時間でこの成果なら革新的だと思いますよ」
「本来の性能では無いが調整し半月の連続使用の耐久力も確認出来だ試作品だ、ひとまずこの店に設置したが好評のようだ…うちの従業員から」
「獣人系の人達大変そうですもんね…」
しっかりと点検も済ませた物だが試作品のため1日だけ店を休みにして稼働させている、店は休みだが従業員達は品出しなど仕事はしており……毛が凄まじい獣人の従業員達が生き生きと仕事をしていた。
人に近い獣人ならともかく獣の割合が多い獣人に暑さは生死に関わり熱を奪う装置が設置されたこの店は天国らしい、獣人の従業員が涙を流しながらマミリに感謝していたのを思い出しながらアユムは需要は凄まじいだろうと思っていた。
「これ1台だけですか?」
「いや、あと数台貰っている…試作品だからあまりむやみやたらに設置するのはいかがなものかと思うが…ひとまずは酒場には決まってる」
「人が多い場所に置くのが丁度よさそうですも…」
「アユム様!」
熱気と活気のあるギルドの酒場ならこの装置はとても喜ばれるだろう、そうマミリと話していると突然部屋の扉が勢いよく開きアユムはそう言えばとクリラスラ商会の店に来た理由を思い出す。
店に来た理由はいくつかありこの装置を見せてくれるというのが1つと別の理由がひとつ…そして…
「どうですか?私このようなのを着たことがありませんから…」
「似合ってる似合ってる、ね?マミリさん」
「えぇ流石はヒストル様…その高貴な存在感が滲み出てるかのようです」
「そ、そうでしょうか…」
扉を開けて入って来たのはヒストルであり…その姿はなんと水着であった。
大人しいヒストルに合わせてか派手な装飾もなく色も白色と目立った所は無いが整った容姿と母親譲りの長くサラサラとした髪もあってか地味ではなく何処かお嬢様感が滲み出て…そもそも王女ではあるが滲み出ている。
「ちょっとヒストル、急に走り出したら危ないでしょ?」
「す、すみません…」
勢いよく入って来たヒストルだが次に入って来たスズランに怒られしゅんとしていると続々と女性陣が部屋の中に入ってくる。
「なんかこれよ、少し肌出すぎじゃねぇか?吸血鬼なら死ぬぞこれ」
「布が水を吸うと重くなるから可能な限り布面積は少ない方が良いらしいわよ、昔私の教育係が言ってた」
「へー」
「…お前らなんでここに来た?」
『そんなのもう決まってるでしょ!第三者目線からの評価聞きに来たの!』
そう言って何故かヒスイも水着の状態で1団に加わっていた…そう、クリラスラ商会の店に来た2つ目の理由である水着が入荷されたという話を聞き来たのである。
エレファムルの近くには大河が流れておりそこでは夏になると暑さから泳ぎに行く町の住人は少なくない、そこに目をつけたマミリが海岸沿い方面へと展開していた商品の1部をエレファムルに持ってきたらしい…ちなみに大河には町の外のため水中モンスターがおり討伐の依頼を出さなければ泳ぐ事も出来ないが今はリザードマンのリャッツ達がアルバイトで水中モンスターを倒してるらしく安全らしい。
何がともあれその水着というものに興味を持った女性陣と水着を知っているヒスイが店に行きたがり待ってる間に装置の話を聞いていたのだが…目の前に突然集まった女性陣にアユムがたじろいでいるとアミーラが腕を組みながらアユムを見る。
「ではアユム、1人ずつ感想を」
「1人ずつ!?」
「ヒストルさんだけだと不公平だと私は思いますが」
「そういうもんなの…?」
『そういうもんなの!』
そう言われアユムはどうしたものかと仲間達を見る、アミーラ、リサ、サヨ、ヒストル、スズラン、そしてダガリオ。
「なんでお前も並んでるの?」
「ん?駄目なのか?」
「え?」
「ん?」
「…いや…もういい…」
いつもはツッコミの癖にこういう時だけボケに回るダガリオにキレそうになりながらアユムは頭を悩ませる、こういったものにどう返せばいいのかまったく思い浮かばないのである…そもそも最後の男に関しては感想言う必要が無いだろうという言葉を叩きつけたいくらいである。
「あー…えー…皆凄く似合ってるよ…」
『なーんか棒読みじゃなーい?』
「感情がこもってないですよアユム」
「(どうすればいいんだ…!)」
個別の感想を述べるとそれもそれで問題が起きそうなため無難な回答をしたがお気に召さなかったらしい、身内だからとかそういうのを抜きにしても女性陣の水着姿は各々のイメージと合う水着と色で似合っているというのは嘘ではない…しかし下手な発言は危険だと判断したアユムはこの場を乗り切る方法を考えているとそれを見ていたリサがため息をつく。
「はぁ…ぶっちゃけどうでも良くね…?この水着?がどうこうとか別に興味ねーんだけど」
「アユムさんも困ってますから、ね?ほらそれにほらテリシャさん待たせてますから」
「ん?そうかやっと来たのか彼女は」
あまり乗り気じゃ無かったリサの言葉を皮切りに全員の視線が入口に集まり道を開けると…廊下からキッチンワゴンと呼ばれる台を押しながら1人の女性が部屋に入ってくる。
「ふぅん、紳士淑女の諸君!お待たせした」
「遅いぞテリシャ」
「少し魔道具の調子が悪くてね…やはり魔術協会は信用出来ないね」
そう言いながら部屋の中に入って来たのは美食ギルドのギルドマスターであるテリシャであった、いつものように髪色と全く合ってない付け髭を付けており外の熱気にやられたのか額に汗が流れている…キッチンワゴンの上には小皿とスプーンに四角い謎の金属で作られた箱が置かれておりその箱の中身が今日ここに来た理由でもある。
「そ、そう言えば他の美食ギルドの人はどうしたんですか?」
「奴らはこの魔道具の魔力を補充するのに魔力をほぼ吸われ倒れてしまったのだ、情けない」
「あ?これか?私らを呼んだ理由ってのは」
話がテリシャの方へと流れるのを見てアユムはその波に乗って危機を脱する…アユム達がクリラスラ商会の店に来た最後の理由である箱へと視線が集まりテリシャはニヤリと笑って箱の上部を開ける…すると隙間から煙が溢れるように流れていき完全に開かれるとその中には真っ白な光景が広がっていた。
「これは…?」
「ふぅん…今日君達を呼んだのは他でもないのだよ、これは我が美食ギルドとクリラスラ商会のマミリとの共同で展開する予定の…『アイスクリーム』というものだ」
「あいす…」
「くりーむ…?」
『えぇ!?アイス!?』
箱の中には1つのボウルが置かれておりその中にはキンキンに冷やされた真っ白なアイスクリームが入っていた、リサとサヨが首を傾げているとその後ろにいたヒスイが目を輝かせながら声を上げる。
『この時期にアイス作れるもんなの!?』
「ふふふ、この箱は魔術協会が開発した魔道具で魔力さえあれば常に冷えた状態を作り出せる…これさえあれば氷なども作れる訳である」
「確か昔アユムが作ろうとして断念していましたね」
「砂糖がなぁ…代用しても良かったんだけど」
作ろうと思えば意外とアイスは簡単に作れるものである、だが砂糖が貴重品であるが故に手に入りずらく作れなかったのだが…と考えているとテリシャが少し複雑そうな顔をしながら小皿にアイスを取り分けし始める。
「ふむ…もう少し面白い反応を頂けると思ったのだがな、砂糖は貴重が故に貴族や金持ち程度しか親しまれていない、その上冷やし続ける事を考えれば尚更なんだが」
「あー…いやーははは…」
アユムやヒスイはともかくアミーラは知識としてアユムから聞いているため反応が薄く、リサやサヨはそもそも見た事も無いだろう…そしてスズランとヒストルは貴族であったが故に食べる機会はそう多くはなくてもゼロではなくダガリオは何となく知ってても不思議ではないとアユムは思っていた。
小皿に取り分けたアイスにスプーンを乗せてテリシャは全員に配る、アイスはいわゆるバニラで香りは付いてるものの特別何か混ぜられてる様子はない…全員に渡ったのを見てテリシャは手を叩きにこやかに笑う。
「では何がともあれ実食といこうではないか」
「それじゃあ遠慮なく…」
これを食べさせる為だけに呼んだのか?色々聞きたい事はあるが約1年ぶりのアイス、実のところアユムも早く食べたいという気持ちでいっぱいでありスプーンで1口分すくい上げて口へと運ぶ。
「ん!」
「これは…」
『おいしーーー!!!』
口の中に入った瞬間に冷たい感触と甘い味と香りが口の中に広がり舌の上でみるみるうちに溶けていってしまう、記憶の中にある現代のアイス…には少し劣るがそれでも暑い中での甘いものとして充分なほどの味であり思わずアユムもアイスの味を噛み締めているとテリシャが満足気に笑う。
「この反応!我が美食ギルドとして大満足である!」
「めちゃくちゃ美味しいですテリシャさん、これ果実とか入れるともっと美味しくなりますよ!」
「ふむ?確かにそうだが…費用が増えてしまうからそれは無しだ」
「費用?」
「…テリシャそろそろ」
「そうだな、ここからは商売の話をしよう」
この世界のアイスというのがどれほど進歩してるかは分からないが簡単なのはナッツや果実を混ぜるなどのアレンジでそれを提案したつもりだがテリシャとマミリが突然真剣な顔になりアユムの方を見てくる。
「英雄アユム、以前氷での甘味を作っていただろう?」
「え?あぁかき氷の事ですか?」
氷の甘味というと追悼の日にアユムが出店で出したかき氷屋であろう、その事を答えるとテリシャは頷く。
「そう、それを見て私はぴきーんときたのだよ」
「ぴきーんですか」
「兼ねてより帝国から流通していたアイスクリームをこの町で作れないものかとね」
「この町にアイスクリーム…ですか」
「この町は南部に位置するせいかとにかく暑い、そこで我が美食ギルドとクリラスラ商会が手を組みこの暑さを乗り越える物をこの町で出していこうと考えているのだよ」
「あー…だから…」
熱を奪う装置や水着とアイスクリーム…全て暑い夏にはとても助かるものばかりであり町の流行の先駆けにもなっているクリラスラ商会エレファムル支店と美食ギルドが発信させていけばこの町の暑さというのはかなり楽になるだろう、それは町の発展にもいい事であり是非アユムとしても頑張って欲しいといったところ…ではある。
「…あの、なんで俺にそれを?」
ではあるのだが何故それをアユム達に言うのか?一大プロジェクトであるならアユムが関わるところなど無いと思われるがテリシャとマミリはお互いを1度見て再度アユムを見る。
「そこでなんだがアユムくん、君に1つお願いがあってね」
「お願い…ですか」
「我が美食ギルドがクリラスラ商会と協力して出す予定のこのアイスクリームなんだが…1つ問題がある」
「問題?」
「……冷却問題なんだよ英雄アユム」
「…そうだよなぁ…」
この世界の文明レベルはハッキリ言ってしまえば現代から程遠い位置である、冷蔵庫どころか氷を長期保存する方法も多くはなく氷だけでも高価な物に扱われる事もあるだろう。
ファンタジーな世界であるから魔法で保存したり魔法で作り出す事は出来るだろうが…
「この魔術協会から借りている魔道具だが…この量を作るのに我が美食ギルド総力の魔力を使ってやっとの量、ハッキリ言ってしまえば商売にすらならない」
「こちらとしても魔法での保存や魔道具による維持も費用が馬鹿にならない、今の状態では売りに出すにしても金貨が何枚になるか」
「……それで、俺に何を?」
「……『溶けない氷』を提供して欲しい」
そう言われアユムはようやく呼ばれた理由に納得する、魔法で作り出すものはそう長くは持たない…そして魔道具はそうそうある物でもなく今目の前にあるものもレンタルしているものでかなり高い使用料がかかっているのだろう。
それら2つを解決するのは簡単ではなく…解決出来る者が今ここにいる。
「…確かに溶けない氷は作れはします…ただ…」
「分かってる、君としてはそう簡単には作りたくはないのだろう?」
「…まぁ」
この2人にはそれなりに良くしてもらっており仕事うんぬん抜きにしても手を貸してあげたい気持ちはあるものの、溶けない氷というのはそれだけで価値があるというのはアユム自身よく分かっているからこそ即決出来ずにいた。
どうしたものか…そう考えているとテリシャが椅子から突然立ち上がり両手を机に置いて前のめりになりながらアユムを真っ直ぐ見つめる。
「英雄アユム、私はこの件に真剣に取り組んでいる…今の状態ではこの美味なるものを知らないまま育つ子供もいる…それでは駄目だ、美味なるものは等しく平等であり誰の手にも届かなければならない」
「テリシャさん…」
「君の力が必要なのだ英雄アユム…頼む」
そう言ってテリシャは頭を下げる…その姿にアユムは視線を横にズラしてヒスイを見るがヒスイは目が合ったと同時に美味しそうにアイスを食べ始める、自分で考えろという事だろうか。
テリシャの目はとても真っ直ぐであり何処か信念…いや執念にも思える、そんな目をしていた。
「……分かりました、ですけど使用と使う人は考えてもらいますよ」
「ッ!すまない英雄アユム!感謝する!」
「そろそろその英雄アユムやめません?」
顔を上げたテリシャはとても嬉しそうに顔を明るくして隣に座っているマミリの肩を掴んで揺らす。
溶けない氷を提供する事で回るはずだった経済がーとか色々と考えたが2人なら上手くやってくれるだろうとアユムは信用する事にした…溶けない氷の初めての利用を頭の中から消しながら。
ちょっとした日常、仲間達と笑いながら日々を過ごしていく平和な1日にアユムは笑っていると部屋の扉が開かれクリラスラ商会の店員が入ってくる。
「あの、すみません表にポメさんっていう方がアユムさんをお呼びです」
「………また何か仕事かな」
ちょっとした日常、そんなものはねぇよと言わんばかりに今日もまた新たな厄介な仕事が舞い込んで来る。




