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331話『破壊神と使徒』


まるで窮地を救いに来た主人公のように腕を組み仁王立ちしているダジは呆然としているアユムを見てやれやれと言わんばかりにため息をつく。


「まったく、それでも破壊神の使徒か?もう少しシャキッとしろ」

「…え?あ…あぁ…すみません…」

「久しぶりに見てみれば訳の分からないところに来たもんだ、油断をするなアユム」

「いやまぁごもっとも…ってそんな事より!ダジ様どうやってここに!?あと東雲さんは!?殺したんですか!?」


急に現れたと思ったら普通に説教を始めたため思わず話を聞いていたがハッとなりダジに詰め寄る、東雲の言う通りならここは東雲の精神の中であり何故ここにいるのかやら東雲が崩壊して消えた理由など一気に聞こうとするとダジはうるさそうに耳を抑えてアユムを見る。


「助けてやったのにお礼も無しとは見損なったぞアユム」

「えぇ?」

「ふぅ…我はお前の神だ、どんな場所だろうとお前が存在する限り辿って見つける事など造作ない」

「俺とアミーラが何となく居る方向が分かるみたいなもんですか?」

「まぁ似たようでそうでも無いがそういう事にしておこう、そしてさっきの者は殺した訳では無い…この場から消しただけでいずれ元に戻るだろう」

「そ、そうなんだ…良かった…」

「良かった…だと?貴様自分がどれほど危険だったか分かってるのか?」

「え?」

「あいつは貴様を『取り込もう』としてたんだぞ?」

「…えぇ?」


取り込もうとしていた、と言われどういう事か分からず目を点にしているとダジは頭を抱えてため息をつく。


「精神は例えるなら水のようなものだ、流れやすく染まりやすく混ざりやすい…他者の精神の中に入るというのはコップに入った2つの水を1つに入れるようなもの」

「………」

「お前は1つのお椀に入った2つの水をまったく同じ元通りに分けれると思うか?」

「無理…ですね」

「あのままお前があの男に取り込まれていればお前はお前でありお前では無くなってしまっていたところだ、そこを助けてやったというのに」

「……ありがとうございます」

「よろしい」


話の通りなら東雲はアユムの精神を取り込もうとしておりダジはそれを阻止してくれたらしい、精神という未知のこと故に精神が混ざる事というものに首を傾げつつもアユムは礼を言うとダジは満足気に頷く。

助けてもらったのならお礼を言うのが普通だろう、だが…


「………………」

「どうしたアユム、我の顔に何か付いてるか?」

「……ダジ様」

「ん?」

「………ずっと聞きたかったのですが…俺が『この世界に転移された理由』って何なんですか?」

「………」


今アユムの中にはふつふつと疑問が湧き上がってしまっている、東雲の話は最後まで聞けなかったがアユムがこの世界に転移させられた理由が謎なのはその通りでありもしも東雲の言う通り『アユムでなければならない』のなら一体何なのか?そして東雲の言葉を遮るように現れた事によってそれをアユムに聞かれたくなかったのではないのか?そんな一種の不安が芽生えてしまっていた。


「……ふむ、あの男に何か言われたのか?……お前がこの世界に転移させられた理由は言っただろう、抽選で選ばれたと」

「……東雲さんは俺でなければならないと言ってました、俺が来る事は決まってた…と」

「……」

「いやまぁ…そもそも抽選って話がぶっちゃけた話で言えば絶対何か隠してるだろっては思ってましたけど……どうなんですか、ダジ様」


ここまでアユムは元の世界に帰る為に異物の破壊をしてきた、抽選などという明らかな嘘を置いておいたが……東雲の言葉に不安を煽られたまま異物と戦っていけるのかと言われれば難しい。

せめてこの不安を取り除いて欲しい、じゃなければ………そんな思いでアユムはダジを見るとダジはいつもの喜怒哀楽がはっきりとした顔から何を考えているのか分からない無表情とも言える表情をしていた。


「や…り……つの…か…」

「え?」

「…何でもない」


一瞬何か呟いたがよく聞き取れず聞き返すがダジは息を吐きながら首を振りまっすぐアユムに見返す。


「はっきり言おう、アユム…お前をこの世界に転移させた理由だが…」

「…………」

「………まだ言えん!」

「…なるほど……………ん?」


一瞬ドン!と効果音が付きそうなほど堂々としていたため納得しかけたが改めて言葉を噛み砕き飲み込み暫く考え……アユムは顎に手を当てながら首を傾げる。


「……まだ言えん?」

「まだ言えん!」

「いやいやいやいや!!!答えになってませんよダジ様!?ここ、話してなんか神妙な会話に繋がる場面ではないのですか!?」

「言えないものは言えないって言ってるだろうが!」

「えぇーーーーー!?俺の不安取り除いてくれるんじゃないのぉ!?!まさか本当に抽選な訳ねぇよなこのダ神がよぉ!!!」

「誰がダ神じゃこの無能信者がぁ!」

「ふがっ!?鼻!はなやめ…やめろぉ!」

「ふぉふぉをひっはるなぁ!」


一気にシリアスに入ると身構えていたのに言えないの一点張りのダジ、本当に抽選な可能性が出始めたためアユムとダジは鼻に指を突っ込む頬を引っ張るの大乱闘が他人の精神の中で始まる。

それから体感10分ほど格闘し肩で息をしているダジはアユムに人差し指を突き出しながらキッと睨みつける。


「ぜぇ…そもそも………我の目にはあいつは…ふぅぅぅぅ……正気には見えなかったが…お前はぁ!……そんな奴の言うこと……信じるのかあ!」

「ぞ…ぞれはごもっども…」


大の字になって上を見上げるアユムは確かにとなる、東雲は何処からどう見ても正気を失っておりその目はアユムではなく何かを見ていた…そんな男の話を真に受けるのかと問われるとその通りではある。

だがしかしそれでもダジは言葉を濁……すというより喋るのを断固拒否してるのもあって疑わずにはいられない、どうしたものかと天を仰いでいるとダジはサッと手を振るとアユムの頭上から音が聞こえ見上げると地面から石製の門がそこには建っていた。


「これは?」

「…そこを通れば目覚める、それはいわゆる精神の出入口のようなものだ」

「……何も見えませんけど」

「現実の世界が見えるともでも思ったか?」


体を起こして門を見るが門の中は薄暗い空間が広がってるように見えるが奥側がよく分からず部屋のようにも外のようにも見える、何がともあれこの門を通れば目覚めるらしく門を見ていると…アユムの背後に誰かが…ダジが立つ。


「…今はまだお前に言えない事は実は沢山ある、お前が何故この世界に転移させられたのかもな」

「………」

「…文句1つ…いや、文句は言っていたな…我が使徒になり異物の破壊していくお前に…少し甘えてたのかもしれない」

「ダジ様…」


文句は散々言ってきた事は心の中で同意していると突然背中を叩かれる。


「…だがこれだけは言おう、お前を騙そうとしている訳ではない…私を信じて欲しい」

「………」

「いずれ話す時が来る…その時にお前がどう思うかは関わらず私はお前の味方であり続ける、それだけは分かってて欲しい」

「………」


言わば黙って信じろという事だが…アユムは暫く考え門の方へと1歩踏み出す。


「……俺が何の理由でこの世界に来たのかとか東雲さんの言ったことは…今はこの際どうだっていいと思ってます」

「……」

「…アミーラやダガリオにリサ、サヨにヒスイにヒストルやスズラン…ユリやサリアやシイン……カンミールさん達にセシリアさんとか…他にもいっぱいいますけどこの世界に来て出会えて良かったと思う人が沢山出来ました、出会えた事で救えた事も多いです」


門へ更に1歩近づく…大袈裟で自意識過剰だがアユムがこの世界に来た事で救われた者もいる、それを考えればこの世界に来た理由はアユムにとっては今は些細な事である。


「…俺はダジ様を恨んだりとかはしてませんし今は話せないって言うならそれでいいです」

「…アユム………それでこそ我が使徒だ、ゆけアユム!お前の使命を果たしに行け!」

「はいダジさ……ま…」


門の前に立ち振り向いた瞬間…アユムは突然硬直し動かなくなる、意気揚々と指を門の向こうへと向けていたダジだったがその反応に違和感を感じ首を傾げる。


「?どうしたアユム」

「……い、いや…なんでもありません!では!」


一瞬の硬直だったがアユムはすぐに前を向き息を整えて門の中へと飛び込んでいく、門の中へと消えていった数秒後にまるで落下してるかのようにアユムの悲鳴が遠ざかっていくのを聞いてダジはホッと一息ついて指を鳴らすと門が音を立てて崩れて消えていく。

誰もいなくなった白い空間、ダジは振り向くといつの間にか門が現れておりその向こうはいつもの物で溢れかえっている白い空間が広がっていた。


「…………」


門の方へと歩いていき門の中へ入る瞬間、ダジは振り向きアユムが入っていった門があった方を見てゆっくりと目を閉じる。


「歩…必ず……お前だけは…」


そう呟きダジはそのまま門の中へと入っていく、門を潜り終えた瞬間に門は崩れて消えていきそこには何も残らなかった。

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