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文明開拓のすゝめ  作者: パル
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2話『黒龍』

ゴブリン達が居た道を進みながら歩は自分の手を見る。

何か刻印や指輪等付けられてないかと思い何度も確認するがそれらしきものは見当たらない。


「道具や印によるものじゃなくて…スキルってやつだよな…全然疲れないのもよくある異世界に来た時の恩恵ってやつか?」


あの後、何度も試し分かったことはいくつかあった。

1つ、この力は射程と範囲は結構融通が効く。

2つ、必ず指先を向ける動作と消滅させる意思と狙う必要がある。

3つ、消滅した箇所は何処かに保管されてる様子はない為本当に消滅してる可能性がある。

4つ、使った分の疲労がある。


「言うところの魔力…MP?消費して使ってるって意味か…はたまたデメリットとしての疲労か…」


恐らくかなり強いこの力、そして高くなった身体能力…暗い洞窟が続くせいで確認できないが異世界転移…地球とは違う世界に来てる事は容易に想像出来る。

だが


「こういうのって神様が現れて魔王なり倒してくれって頼まれてから貰うもんじゃないのか?確かにそれらしき声は聞いたが…」


目を閉じてた時に聞こえた声、断定できないが歩を転移させたとされる神の声が聞こえたがあまりにも丸投げ過ぎる。


「こっちでも人生甘くないって事か…ん?」


歩いている途中、また鉄扉を発見した。

今度は鍵穴の代わりに南京錠が付けられていた、南京錠があるくらいの技術があるのを確認しつつ南京錠に触れてみる。

するとまたバチッと音がして南京錠は壊れてしまった。


「うおっ!?…も、脆くなってるのか?」


恐る恐る鉄扉の取っ手を握り引くが…ガチャン…と音が響くだけだった、どうやら中からも鍵がされてるらしい。

鍵穴が無いのに何故?と思いながら取っ手の部分に指先を向ける。


「『消滅』」


鉄扉の1部が抉られるように穴が空いて鉄扉は抵抗なく開く。

ゆっくりと開け中に入る、中は机と棚があり…


「あ…」


机の下には人間の骨が転がっていた。


「…人間…しかも骨…か…」


ここにある人骨は見た限りかなり古い、埃が積もってるのも確認出来そして人間が居るなら出入口が何処かにあるのも分かった。

ただこの場所には人間がいる可能性がかなり低いのも分かった。


「ハードモード過ぎないか…?いくらなんでも」


異世界交流をするのはかなり勇気がいる、多少時間を空けてから異世界人とは出会いたいと思ってたが多少以上の時間を要するとは思わなかった。


「……皆俺が消えて心配してるだろうな…母さん父さんはともかく兄貴は何とも思わないだろうけど」


色々な事が起きて忘れそうになっていた家族の事、部屋の中という事もあってぽつぽつと不安や元の世界の事。





涙が出そうになった瞬間、突然部屋の奥から物音がした。

心臓が飛び出そうなのを抑えながらスマホを持ってる手で奥の方へライトを向ける。


「だ、誰だ!」


歩に気がついたのかゆっくりと立ち上がる人影は目を開ける、黄色に淡く光るその瞳は真っ直ぐに歩を見ており無機質で感情を感じられない目をしていた。


『…生命確認…項目クリア…起動を開始…破損35箇所…初めましてマスター…お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか』


機械音声のような声が謎の人影の存在感を増させる。

そしてライトに照らされた姿を見た瞬間、歩は狼狽えた。



人影はボロボロの給仕服…?のような服を着ており紫色の髪に紫色の目をしている美少女なのだがその片目は前髪て隠れてるが無くなっており右腕も肘から先が無くなっている。

それよりも気になったのは…


「…ろ、ロボット…?」


無くなっている片手の肘からコードが出ており、所々剥がれた体の表面からは鉄の体が見えている。

目の前にいる少女は鉄の体を持つ機械だった。


『お名前を、マスター』


答えない歩を不思議そうに見て首を傾げる動作をする、少しぎこちなく軋む音が彼女が無機質な存在なのを強調する。


「あ、えっと…冨谷歩です…?」

『トミタニアユム、様ですね、私は生産ナンバー1324841…家庭用機械人形『アミーラ』です、アユム様』

「ど…どうも…」


お辞儀をし、微笑む彼女をどうすればいいのか分からず狼狽えてると提案するようにある方の片手を上げる。


『喉が乾いているのでしたら紅茶をご用意しますがよろしいでしょうか?』

「……いや、いいよ…えっと…アミーラ?」


この部屋に紅茶どころか食器や蛇口も見当たらない。


「アミーラ、君はその…ここが何処だか知ってる?」

『申し訳ありません、起動前までのデータは削除されてる為お答えする事が不可能です。』

「…となると何も知らない…か」


ここが何処なのか、何故ここに居るたのか。

それすらも聞き出すのは難しそうだった。

このアミーラというロボット…機械人形が何者なのか分からないがここに置いていく訳にもいかない。


「今俺はこの洞窟から出る方法を探してるんだけど、ついてくる?」

『はい、私達機械人形はマスターの守る為に作られた存在…道具のようにお使い下さい』

「いや…それはちょっと…」


よく分からないが、この洞窟を出る新しい仲間が加入した。



─────────────────



『アユム様の好物はなんでしょうか?』

「…肉じゃが」

『早朝の起床時間や就寝時間のご希望はありますか?』

「…朝はゆっくりがいいかな」


歩き始めて30分、トコトコと後ろをついてくるアミーラと洞窟の道を進むアユムはげんなりしていた。

必要な事だと言い様々な事をアミーラが聞いてくるのだ、最初は久しぶりの会話なので楽しく話せたが…Q&Aに答えてる気分になる。


「(昔近所に住んでた女の子を思い出すな…あの頃は子供だったから気づかなかったがこんな感じに色々聞いてきてたし…俺の事好いてくれてたのだろうか)」


そう思うとアミーラに親近感を湧くが、会話のキャッチボールが上手くいかないのが致命的である。

なのでこの質問コーナーをぶった斬るように話題を切り出す。


「アミーラはさ、何か好きな事とかないの?」

『好きな事ですか?マスターの身支度などを行う事、マスターの命令に従う事が私達機械人形の使命でもあります』

「……うーん」


返しに困ってしまった。

そしてふとアミーラの破損部分に目が行き痛々しい箇所を見る。


「…異世界だと思ってたけど、もしかしたら近未来的な場所かもしれない…そしたらアミーラ治してもらえるかも」


そう呟き視線を前に向けてるとアミーラがふと足を止めた、彼女が何も言わずに止まった事に驚きながらもアユムはアミーラを見る。


「どうかした?」

『アユム様、前方に生命反応を確認しました…これ以上進むのは危険かもしれません』

「生命反応…?ゴブリンか?」

『分かりません、ですが反応は1つです』

「……生命反応か」


あの時見たゴブリンは複数で固まっていた、ファンタジーの世界でよく聞くゴブリンは集団で動いてる事が殆どだ。

違うとなれば別の何かが居るに違いない。


「進もう、引き返しても仕方ない」

『はい』


戻っても同じ場所に戻るだけ、ならば進むしかない。

意を決して進んでいく。



─────────────────


しばらく進むと、大きな広場のような場所に辿り着いた。

電池が切れかけのスマホのライトでは照らしきれない程の広さに不安がのしかかる。


「…………」


だがそれも直ぐに解決した。

しばらく歩くと電気をつけるように壁や天井が淡く…だがどんどん強く光り輝き広場のような広大な場所を照らしてくれたからだ。



そしてそれと同時に異様な音が聞こえ始める。

何かが羽ばたく音…それも虫や鳥でもない強く力のある羽ばたきだった。


天井が遠くに見える空を勢いよく見上げるとそこには大きな生き物が羽ばたいていた、それは現実で見たことも無いがアユムにとってはよく知る存在。



「…『ドラゴン』…?」


黒く硬そうな外殻と全長18mはあるのではないかと言うほどの巨体が空を飛んでいた、そんな生き物が飛び回れる程広い空間はまるでその生き物…ドラゴンの為の場所のようで…


「……歓迎はしてくれないみたい…」


素人目でも分かる敵意の目…背後を見るとさっきまであった元来た道は無くアミーラが立っているだけだった。

ゆっくりと降りてくるドラゴン、そして何故かアユムの頭は冷静になっている。

危機的状況だが強力なスキルがある…


「けど効かなかった場合は…」


一瞬過ぎる考えを振り払う、その場合アユムに待ち受けてるのは『死』だけだから。



ゆっくりと腕を上げ手をピストルの形にする、ドラゴンは地面に降り立ち威嚇するようにその口を開ける。


『グオオオオオオオオオォ!!!』

「ッ!」


ドラゴンVS転移者との火蓋が切られた。

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