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文明開拓のすゝめ  作者: パル
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おまけコーナー・1ページ目『連絡手段』

恐らく今年最後の更新です、よいお年を。

王都での仕事から帰還して数日、久しぶりの自由な一日を目前に自室でアユムはふとある事に気づく。


「そう言えばダジ様との連絡手段ねぇな…」


この世界に来てから半年、アユムの事をこの世界に連れて来た張本人であり破壊の神であるダジ…会う手段はアユムが寝た時意識が飛びダジのいる謁見の間と言われるほぼアユムの記憶から引っ張って来た物で溢れる場所でしかなくダジの意思でしか会いに行けない。

今まではさほど困ってはいなかったがもし、これから会う必要がある時わざわざ意識を飛ばさないといけない上にダジの意向でしか会えないのはかなり面倒である。


「だけど普通は会えないのが当たり前なんだろうなぁ…神様だし…」


かなり会えるので勘違いしそうになるが相手は神様である、アユムがいた世界では分からないがこの世界でも神と謁見すること自体が難しいようで司祭候補生であるサヨも主神とは話した事もないらしい。


「簡単に会うことなんて考えずか…けどいざという時の手段はあった方がいいし…あっ」


うんうん唸っているとある物を思い出し物入れになっている箱のある場所まで向かい蓋を開ける、中にはアユムがこの世界に来た時に来ていたスーツやカバンが入っており虫や湿気対策を施しており懐かしく思いつつもカバンを開け目的の物を取り出す。


「異世界に来たんなら期待しない方が無理な話だ」


それはスマートフォン、スマホである。

前文明の異物があると言えどオーバーテクノロジーであるこの板…神と連絡を取るとなればこれが思い浮かばない筈も無くアユムは意気揚々と電源を入れようとするが…


「…まぁつかないよね」


分かっていた事ではあるがスマホはうんともすんとも言わない、残量が既に0になっておりただの機械の板になってしまっていた…これでは使い物にならない。


「分解してもらって…いや分からんだろうな…雷の魔法…爆発が関の山か…」


ただの機械の板でも人類の技術の結晶、この世界のドワーフ辺りに分解してもらい使えるようにしてもらおうと考えたがそもそもスマホを知らない相手に渡したところでこれが何なのか理解されず、アユムも詳しく説明できない以上ロストテクノロジーを相手してるようなものである。

安直に雷の魔法で充電を考えたがどの程度の威力が適切なのか、そもそも直電でいいのか、試す訳にも行かず某電池パック爆発映像のように爆発する未来しか見えず断念する。


「やめだやめ、こんな事に貴重な休み使えん」


どう転がっても面倒な事にしかならないのは目に見えている為、アユムは適当に枕元に放り投げベットに横になる。

1日の休めばまたヒストルとスズランの経験の為に依頼を受ける、休むことも仕事のうちである以上さっさと寝息を立てて夢の世界に意識を飛ばしてしまう…暗がりの中で時折アユムの寝息が聞こえる部屋だったが突然だんまりを決め込んでいたスマホの画面が明るく輝く。



━━━━━━━━━━━━━



閉めた窓の隙間から僅かに差し込む朝日が部屋の中を照らす、その光が時間が経つにつれてアユムの顔に当たり眩しさで目覚める…が今日に限ってはそうはならなかった。

耳元で『ピロンッ!』と音がずっと聞こえアユムは寝ぼけながら体を起こし慣れた手つきで枕元を探りスマホを手に取る、そしてボーッとした頭でマナーモードにし枕元に戻して横になり二度寝をしようとして…勢いよく起き上がる。


「い、今携帯!?」


焦り過ぎて自身でも何を言ってるか分からないが枕元に投げたスマホを手に取り電源ボタンを押してみる。

するとパッと画面が明るくなり現在時刻が現れ見慣れた画面が目の前に広がる、恐る恐る指先で上へと動かすとロック画面になりいつものように解除するとホームが写される。


「マジかよ…すっげぇ!」

『もーうるさいな~』


1人で騒いでいると壁に立てかけていた薙刀からヒスイが現れ文句ありげな顔で浮遊してくるがアユムはそれを気にせず手に持つスマホをヒスイの前に出す。


「これ見てくれヒスイ!携帯!」

『え?えぇ~!?なんで!?あ、そうかアユムが来た時に持ってたやつ?』

「そうなんだけどとっくの昔に電池が無くなってたんだ、けど今こうしてついてんだよ!」

『んー、残量は100だし…ん?アユムなんか通知来てるよ』

「え?」


ヒスイに言われよく見ると確かに通知が来ていた、スワイプしてよく見ると見慣れ…ない通知バーがありどうやらメッセージアプリのようだがマークが見た事無いものであり267件も通知が溜まっていた。


「これ某グループチャットじゃないよな…」

『すっごい溜まっているけど何か悪質なサイト開いた?』

「いやいやいや、そんなえっっっなサイト開いて毎日請求メールが来るような事そんなないよ」

『あるんじゃん』

「だとしても異世界にまで請求してくる訳ないだろ…ってスタ爆されてる!!!誰だ悪質だぞ!!!」


溜まっていた通知を押して開くとフリー素材臭い兎のキャラクターがうずくまって泣いているスタンプと怒っているスタンプが交互に流れておりいわゆるスタ爆と呼ばれるスタンプ連打である、こんな事をするのはグループチャットでメッセージを消せる機能があるのにそれを知らず見られたくない写真などを上に押し上げる高校生くらいしかいないと思っていたアユムは苦笑いを浮かべながらスワイプしていくと最初のメッセージに辿り着きそれに目を通す。


「『元気してますか、貴方の主神です…ご飯はちゃんと食べてますか?私は元気です』…お母さんか!」

『仕送りしてくれそう』

「えー…『さて本題ですが悩める使徒であるアユムの為にすまーとふぉんを使えるようにしておきました、連絡を取りたい時は連絡ください…Ps.お米送っときました食べてください ダジより』…お母さんか!しかも米ねぇし!」


どうやらアユムの嘆きを聞き気を利かせたアユムの主神である破壊神ダジがスマホを使えるようにしてくれていたらしい、送って来たメッセージの時刻がアユムが起きるちょっと前からして反応が無かったからスタ爆をしていたらしい…メッセージが田舎のお母さんなのは何かに影響されたのだと自分の中で納得しておく。

影響されやすい神である。


「と、とにかくこれでダジ様と連絡がとれるのか…」

『試しに何か送ってみたら?』

「そうだな…『ダジ様、アユムです…スマートフォンありがとうございます!何かあれば連絡いたします。』…送信と」

『固くない?』

「こんなもんだろ?変に言えばダジ様俺の上司だし…ってもう返信来た」


使徒と呼ばれてるが破壊神ダジの指示によって前文明の異物を破壊するため派遣されてるようなもので、仕事で例えるならアユムとダジは上司と部下の関係である。

そんな話をしている通知がすぐ来たようで軽快な音が鳴りアユムはすぐチャットを開く。


「えー…『うむ!』………『ところでこれいつでも連絡していいんですかね』……『うむ!』……打つのに飽きちゃったのかな????」

『多分……打ち慣れてないんじゃない?』

「あ~」


返事が短くなって飽きて来たのだと思っていた矢先にヒスイの言葉にアユムは納得する、全知全能の神様ではないが一応神であるダジ…だがアユムの脳内では?を浮かべながら人差し指でトントンしてる姿が容易に想像できてしまい頭を抱える。


「これむしろ電話した方が楽か?」

『電話出来るの?』

「やってみるか…お?繋がりそう」


打ち込むのが難しいのなら電話、早速かけてみると繋がりそうで待つが10秒と経っても繋がる気配がない。

諦めず根気よくまっていると繋がったようで通話時間の数字が表示され…ふと悪い考えが浮かびニヤリと笑う。


「『我じゃ!』」

「えー俺の神様こんな感じだったっけ……コホン、オレオレ」

「『?誰?』」

「オレだよオレ」

『…オレオレ詐欺してる…』


一瞬ダジの喋り方に戸惑いつつもスマホ初心者ならばと思いついたオレオレ詐欺、普通引っかからないと思うが世の中にはどうしても引っかかってしまう人がいるが試しにとダジに仕掛けてみると案の定困惑しており早々にネタバラシするか悩んで続行を決める。


「あのー、人轢いちゃってさ、治療費が必要でさ」

「『うむ?』」

「金貨50枚必要なんだけど口座に入れといてくれない?」

『流石に引っかからないでしょ…』

「『金貨50枚!?』」

『…引っかかりそう』


思ったより反応が良いダジに困惑するヒスイだがアユムも違う意味で困惑していた。


「え?払えるよね?神様でしょ?」

「『いやその…それがの…』」

「いつからのじゃ口調になってんだ…さては何か見たな…?」


何やら言いづらいのかもごもごするダジ、それよりも口調の変化にアユムはまた何かに影響されてるんだろなぁ…と思っていると小声でボソボソと電話越しに聞こえてくる。


「『その…今銅貨45枚しかないんじゃ…』」

「逆にその銅貨どっから出て来た?」

「『うぅ…アユムから数日に一枚ずつくすねた銅貨なんじゃ…これだけは許してくれ…』」

「お前何してんの!?え?たまに銅貨ねぇなって思ってたけど盗んでたのかよ!!?」


数ヶ月前から何故か財布から銅貨が消えてる事があったが犯人は身近にいたようだ、しかも数日に一枚となると気づきにくいことこの上ないのも中々にいやらしい。

銅貨と言えどお金はお金、盗んでた事に頭を抱えつつもふとある事を思い出す。


「もしかしてだけど銀貨もくすねた?」

「『銀貨?銀貨は知らん!ほんとじゃ!我は知らん!』」

「けど現状怪しいし…なぁヒスイ」

『…ソダネ…』

「……」

『……』

「…ところでダジ様はなんで銅貨くすねたの?」

「『そ、それは…あの小娘と賭け事をする為に必要だったから…』」

「ヒスイ?」

『ご、ごめんね!』

「この2神は…」


度々銀貨も消えていたのだが犯人は身内でなんなら神である、アユムをATMか何かだと思っているのか信仰してる神達に財布を軽くされていた事にも呆れていると電話越しに涙声で喚いている声が聞こえてくる。


「『頼む!アユムにだけは伝えないでくれ~!なんでもするから~!』」

「あ~、ダジ様俺です…アユムです…」

「『…………』」

「…………」

「『ごめんなさい…』」

「偉いねぇ…謝れる神様で…」


本当に神様なのか疑いたくなるほど情けない、いつからこうなってしまったのか…アユム自身に責任がある気がしてあえて聞くのは止めておきため息をついているとある事に気づく。


「あれ?もう充電が無いぞ」

『電話してるからじゃない?』

「それにしたって早すぎるだろ…ダジ様これ携帯充電はどうすれば?」

「『ん?アユムが魔力を流せば充電とやらが出来るぞ』」

「あら簡単、便利だねぇ…そんじゃ……!?」


あまりにも便利な充電方法に感動しつつ魔力を流すと…体の半分がゴッソリ削られたような感覚が走り思わず倒れ肩で息をする。


「な、ん…滅茶苦茶魔力持ってかれたんだけど!?」

『何%溜まったの?』

「えー…3%…!?ダジ様ちょっとダジ様!」

「『それ動かすのにどれほど苦労したと思ってるんだ、それほど複雑になると使う量も凄まじいに決まってるじゃろ』」

『それはそう』

「そ…そんな…」

「『それじゃ我は『キサラギさん』の続き見なくちゃならんのでな、じゃ』」

「やっぱりそれの影響か…ッ!」


変な口調はアニメに影響されてたらしい、燃費が最悪なスマホを残しダジは電話を切ってしまい残量が5%しかないのを見てアユムはそっと木箱に戻しため息をつく。


「…忘れよう」

『だね』

「あとそれはそれとして銀貨返せ」

『…はい…』


結局盗まれた銅貨と銀貨はお供え物と言うよりも贈呈品として渡すことになった、よくよく考えるとアユムは今まで2神に何も渡してない事に気づきそれもそれとしてどうかという話になった末である。

結果として連絡手段もゴミになりお金も減りアユムの貴重な休みも魔力消費がデカいせいで没になった…


散々なアユムのとある何ともない一日のお話。

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