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文明開拓のすゝめ  作者: パル
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18話『相談』


夜になり仕事終わりや夜になったから来たという客が賑わう酒場。

この町エレファムルで1番人がいる場所であろう明るい場所にどんよりと暗い雰囲気の男が座っていた。


「はい、これ最近入荷したオレンジのジュースです!」

「ありがとうございます…」


ポメラニアンの獣人の男が置いたジュースを飲み男はため息がこぼれる。


「元気無いですね?僕が相談に乗りますよ!」

「うーん……ちょっと話すのが難しいというかなんと言うか…」

「そうなんですか?僕に言い難いなら…ギルドマスターが適任ですね!」

「まぁそうかも…だけどそう都合よくこの場にいる訳…」

「いるわよ?」


いつの間にか隣に座っていたエレファムルのギルドマスター、セシリアに驚き男…アユムは椅子から転げ落ち地面に落ちる。


「イテテ…驚かさないでくださいよ」

「ごめんなさいね、水貰えるかしら?」

「はい!」


椅子を起こして水を貰い飲んでいるセシリアの隣に座る。


「それで?ちょっとしか聞こえなかったけど話があるんでしょ?」

「…少し困ってまして、最近入ったリサいるじゃないですか」

「あの子ね…まぁ何となく言いたい事は分かるかも」

「分かります?」

「えぇ、あの子はあまり誰かと行動するの得意じゃないように見えたわ」

「そうなんすよ…」


思い出すように遠い目をしながら目の前のコップを揺らしアユムは口を開く。


「2日前の事なんすけどね…」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


異物との戦いから1週間、装備やアミーラの魔石補給が終わりようやくアユム達はギルドの受付まで来ていた。


「すみませーん、下級Cのアユムなんですけど受けれる依頼あります?」

「はーい、少々お待ちを」


時刻は10時頃と言った所、本来は早朝から来たかったのだがリサが一向に起きずこの時間になってしまった。

当の本人は欠伸をして眠そうにしている。


「はい!これが下級Cくらいで受けられるのですね」


ボードに貼られてるのもあるが、貼られてるのは軒並み中級Bレベルの依頼ばかりで目の前に出される軽めのしか下級の仕事が無かった。


「えーっと…『掃除手伝い』『壁の修理』『ペットの散歩』『羽兎の角が欲しい』か」

「雑用ばかりじゃねーか」

「仕方ないだろ俺達はまだ下級だし」

「魔石が欲しいので羽兎の討伐ですかね」

「備蓄がいくらあっても足りないくらいだしなぁ…」


5つの中から羽兎の紙を選び、ギルド職員が受理する。


「では比較的近くなので夕方までには戻ってきてくださいね、流石に無いとは思いますが遅れた場合はギルドの冒険者か開拓者が向かいますので」

「はい、では」


手を振ってくる職員に手を振り返してアユム、アミーラ、リサは外に出る。


「んじゃ早速行くか、新しい槍の具合も確かめたいし」

「ですね」


アユムの手にはシンプルな槍が握られていた、町に戻りダガリオの助言を思い出して武器屋で購入した物で最近何となくで振り回したり突いたりして試していた。


「んじゃ行くか」

「おう」

「分かりました」


東門の方へ向かい2回目になる町の外に向かう。


☆★☆


「いたいた…名前通りの見た目だな…」

「あんなちっちぇ角手に入れて何すんだよ」

「漢方等に使えるらしいですよ」

「見えるのは3匹…丁度予定の三本と同じだ」


茂みから顔を出して覗くと3匹の羽が生えた兎がぴょんぴょん飛んでいる。

可愛らしい見た目だが本性がとんでもなく、大人でも襲われるぐらいの凶暴性と肉食で人間も範囲内である。

可愛い見た目に騙され毎年何人もの村の子供が襲われている事例があるらしい。


「よし、まずアミーラが弓で1匹…俺が槍で残りを追い込むからリサはその間に……あれ?」


作戦を考え伝えようと振り向くと、シーフの服装をした仲間が居ない。


「アミーラ、リサは?」

「あそこです」

「はぁ!」


声がした方を見ると短剣が突き刺さっている兎ともう片方の短剣でもう1匹を始末するリサの姿があった。

異変に気づいた1匹が飛んで逃げようとするが、素早くアミーラが弓で最後の1匹を射抜く。


「よし、これで後は取るだけだな」

「いやまてまて!」


早速角を取ろうとするリサに近づきながら待ったをかける。


「あんだよ」

「勝手に始めないでくれ、俺とアミーラとお前で動く予定だったんだぞ?」

「けどちゃんと角は手に入ったぞ」

「そりゃそうだが勝手に…」

「あーもう分かった分かった、大丈夫だよ私がいりゃんなもん必要無い」


そう言ってさっさと角を回収し、リサは耳を塞いで町に向かって歩き始める。


「?結果依頼は遂行したので良かったのでは?」

「いやまぁ確かに角を手に入れるって事が最優先だが…困ったなぁ…」


それから様々な依頼を受けるが、雑用や畑仕事の手伝いをリサはちゃちゃっとやり狩猟系になると颯爽と狩って直ぐに終わらす。

外から見たら順調だ、だが仲間内ではアユムだけ順調では無いと危惧しているが話す事をしようにもリサはめんどくさがり、アミーラは聞くが結果良ければ良いというスタンスであった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━


「なるほど、それで悩んでたのね」

「えぇ…確かに依頼は順調に進めてますしリサは町の人達と少しずつ上手く関係を築けてますが…」

「貴方達の連携が上手く出来ないのね」

「リサに合わせりゃいいと思ったんですけど、俺には少し荷が重くて」


リサは半分ではあるが吸血鬼である、その身体能力や動体視力等はアユムの2倍3倍以上である。

今は順調に進んでいるだが


「このまま、この状態だとまずいですよね」

「そうね…下級Aまでは行けても中級に上がる時に苦労すると思うわ」

「…1人の力で戦いはひっくり返らない、天才1人だけでは世界は変わらない」


リサ頼りの冒険は危険になるだろう、アユムはこの世界に来たばかりの新参者で戦いすら数回しかしてない。

リサと同等に動くには数年かかるだろう、だが今のままだといつかボロが出る。


「うーん、何処かの冒険者と開拓者のチームについて行けば刺激を受けて考えが変わるんじゃないかな?」

「他の…例えば中級とかの人達と一緒にって事ですか?」

「そう、下級じゃ受けられない依頼でも中級が居るなら受ける事も出来る」

「なるほど…」


アユム達より熟練者である人達の動きや作戦を聞けば、リサも協力して行う事の重要性に気づくかもしれない。

その上経験者達からの助言も貰えた場合今よりも何か得られる可能性もある。


「誰かいないの?中級の知り合い」

「居ないっすね…そもそも下級すらロクにいないから下級の知り合いも1人しかいないですよ」


この町エレファムルに下級の冒険者、開拓者は少ない。

理由としてはこの町が開拓最前線であり未知の土地が広がり危険度も不透明で初心者が入るにも屍が増えるだけである。

アユムが知る中でもアユム達とダガリオしか下級は居ないのではないだろうか。


「そうだ、確かセシリアさん元冒険者なんですよね?」

「そうだけど…」

「ならお願いしますよセシリアさん、俺達にコーチしてください」


ダガリオの言うには彼女は元上級Aの冒険者である、身近な熟練者でありいつも忙しいのか姿を見る機会が無いニックと違ってセシリアは酒場に居れば会えそうな程暇そうである。


「一応私ギルドマスターなのだけど…」

「そこを何とか…!」

「ごめんなさいね、私もう剣は握らないって誓ってるの」

「そんなー…」


無理だと分かっていたがアユムは何とかならないかと粘ったが無理だった。

へこたれているとセシリアは少し考える素振りをし、猫耳をぴょこぴょこさせる。


「私は無理だけど、確かそろそろ調査に行く中級の冒険者開拓者が居たはずだからそれについていってみたら?」

「え、いいんですか?」

「もちろん相手側の了承あればだけど、話は通しておくから3日後に受付に」

「ありがとうございます!よし、今から仲間に伝えてきます!」


立ち上がり銅貨をカウンターに置いてアユムは慌ただしく移動する。

その背中に手を振りながらセシリアは残った水を飲み干す。


「ギルドマスター、本当に良かったので?確か3日後と言えば例の…」

「いいの、彼等ならアユム君達守りながら戦えるし…それに」

「それに?」

「彼達が調査に向かう場所、少し嫌な予感がするの」


行軍の時に見たあの攻撃、セシリアの予感が当たればあれにどうにかしてもらい。

当たってなければそれでよし、どちらに転んでもアユム達は色々学べてセシリアの不安は解消される。


「騙すようだけど許してね」

「悪い人ですね…危険なのに」

「何度でも言うが良いわ、さて…ニックにこの事伝えないと」


忙しく動いているニックを探しにセシリアは酒場を出る。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「よし!出発!」

「寝みぃ…」

「リサさん寝癖が付いてますよ」

「んぅ…」


3日後、アユム達は準備を整えギルドへ向かっていた。

この3日間で相手側の了承が取れたという連絡があり、一通り準備をしてこの日を待っていた。


「つってもよぉ、私達まだ雑魚だろ?よく同行許してくれたな」

「セシリアさんが言うには優しい方達らしいですが…不安ですね」

「けど実力はお墨付きらしいし、町でも評判が良いらしいから大丈夫だと思うんだが」

「どーだか、どんな奴等かは会ってみねぇと分からねぇよ」


アユムが持ってきた話にリサは乗り気ではなかった、中級の中に下級が入って依頼を受けても階級が上がりにくいからである。

下級でも上級に付いて行って活躍しても審査は厳しい、実力が無い下級が上級に付いて行って階級が上がっても実力が伴ってないからである。

どうにか説得をして付いて来てもらっている状態だ。


「まぁ会ってヤバそうなら考えよう、そら見えてきた」


話しているうちにギルドの前まで来た3人は中に居るであろう中級の人達がどんな人なのか思いつつ扉を開ける。


「おはようござ…」

「ふざけるな!!!!!」


開けた瞬間、拳をカウンターに叩きつけ怒鳴っている人物の声が響く。

中にはセシリア、ニック、そして女性が1人に男性が2人いる。

カウンター奥にいるギルド職員があわあわしており状況が一向に読めない。


「おいモル…お前本気で言ってるのか?」

「あぁ!僕はいつだって本気だ!これ以上続けるなら君に魔法をぶつけてやる!」

「落ち着きなさいなモル、そろそろ新人が来る時間なのさ」

「もうカンミールとミルマには懲り懲りだ!解散だ!解散!」


灰色のローブに金目茶髪の男は周囲に火の玉を浮かばせ、同じく茶髪の男と桃色の髪の女性は困った表情をする。


「…で?」

「帰るぞ!」


関わっちゃ駄目な時だったようだ。

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