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文明開拓のすゝめ  作者: パル
175/394

175話『やってくれたな』

王城にある広い部屋、そこには複数の椅子が並び各々王国貴族である男女が座りとある事を話しあっていた…それは今後を左右する事であり話し合いは三日もかかり一つの結論に至る。


「それでは諸君、我々は今後来る時に備え全体的な戦力増強の方針を進めそれに伴い帝国との話は無しとする…それでよろしいですかなゲノム殿」


話すカルロスは集まっている集団とは別の場所に座っているゲノムを見るとゲノムは何も言わず頷き、カルロスは集まった貴族1人1人の目を見る。

ある者は忠誠心を示すように真っすぐ見返し、ある者は何か考えているように、ある者は我関せずと腕を組む…ケッケイやシャムの事を考え魔王復活の可能性がある今この王国を支える者達を纏め上げなければならない事に胃が痛くなりつつもカルロスは前を向く。


「これにて会議は終了でございます、皆様本日はお集まりいただきありがとうございます」


進行役が締め、貴族達はゾロゾロと部屋から出て行き部屋の中にはカルロスとゲノムだけが残る。


「…それではカルロス王、私もこれにて」

「ゲノム殿…本当にお戻りに…?」

「えぇ…私の戻るべき地でもありますので」


5日前、シャムを拘束し知っている事を全て吐かせたがシャムはある事を除いて何も知らなかった…言ってしまえばシャムは失敗しても問題ない捨て駒だったという事になる。

だがシャムは重要な事を言ってしまっていた…それは


「自ら聞かないとならない、何故皇帝陛下は私をあのような者達を使い暗殺しようとしたのか…ましてや帝国は戦争を起こすには…いやこの話は聞かなかったことにしてくれ」

「……」

「どちらにせよ私が内密に王国に来ているのは変わりないでしょう、早く戻るに越したことはない」

「…お気を付けて」

「そちらもご武運を…では」


皇帝によるゲノム暗殺指示、シャムが喋った内容は嘘であろうと真実であろうと確認を取らなければならない事だ…ゲノムは待機していたカクを連れ王城を後にする。

去って行くゲノムが乗った馬車を窓から見ながらカルロスは顎に手を置く。


「…何を考えている…フレーン」


何処か遠くを見ながらカルロスは黙り…その場を後にする、王として立ち止まり考える訳にはいかない。

前に進みながら先を見通さなければならない、王として…



──────────



いつもなら騒がしい騎士団鍛練場だがこの日だけは静まり返っていた、何故か?それは全員が見守っている中心にいる2人が関係していた。

1人は騎士団の下っ端であり新米である騎士レオン、その手に握る剣を構え目の前にいる相手を見ている。

もう1人は開拓最前線エレファムルの開拓者である男、アユム…氷で作られた刀ではなく背に装備した薙刀を掴み回しながら刃先をレオンへ向け構える。


「……」

「……」


互い何も喋らない、周囲も何も言わない。

ただただ静かな時が過ぎこのまま昼になるんではないかと思う程長い時間が過ぎ…お互いが何の示しもなく互いへ向け駆け出し剣を薙刀を振りかざしぶつかる。


「はッ!」

「ふん!」


当たった衝撃で武器が弾かれ、剣を振り下ろし薙刀を振り上げ再度ぶつかる。

ぶつかった瞬間アユムは前に出て突き刺すように持ち手を変え石突きをレオンへ向けアユムが引いたことで勢いで地面へ滑るように剣が向かってるのを地面に踏みつける。

剣を封じられたレオンは剣を手放し向かってくる石突きを手で掴み、更には引っ張りアユムの顔面を頭突きする。


「クソが…!」


ギリギリで避け、その腹に蹴りを食らわし薙刀を掴む力が緩んだのを確認してアユムは急いでその場から離れる。


「こんにゃろ…武器離してから頭突きまでノータイムかよ…」


前までのレオンとは違う、それを実感しながらアユムは薙刀を構え直しレオンも剣を拾い構え直す。

レオンの構えに隙が無くどう攻めたものかと考えていると突然レオンが動きアユムに向かって来る。


「(長期戦を嫌ったか…?どちらにせよ攻めるより幾分か楽か…)」


相手の動きに合わせ動けばいい、そう考えアユムは薙刀を構え向かって来るレオンに備える。

そしてレオンは剣を振るいアユムもそれに合わせガードする…ガードした瞬間アユムはある事に気づく、それはレオンは片手で剣を握っている事。


「こいつまさか…!」


嫌な予感がし下がろうとするが片手でも素早い斬撃を続けるレオンによって動くのも叶わず、レオンが使ってない拳を振りアユムの目の前に向け開く。

鍛練場の地面は土である、そしてレオンは落ちた剣を拾う機会がありその手に持っているのは目つぶし用の土だとアユムは断定する、今視界を失うと対応が出来なくなる…即座に視界を確保する為敢えて先に飛んでくるであろう土を警戒し目を閉じる。

視界が瞼によって狭まり開かれた手を見た瞬間アユムは驚愕する、その手には何も握られてないのである。


「しまッ…!」

「うおぉぉおおおお!!!」


懸念していた事がある意味現実になり直ぐに目を開くが一度目を閉じた事で視界情報が途切れ、両手で剣を握ったレオンは素早く一閃…その一撃の重さに驚きながらどうにかガードを続けるが一撃一撃にガードを崩されていき、アユムの手から薙刀が飛んでいき近くの地面へ突き刺さる。

そしてアユムの首元に冷たい刃先が当てられアユムは恐る恐る両手を上げる。


「…参った…俺の負けだ」

「おいおい…レオンの奴やりやがった」

「レオン!」

「…よし…ッ!」


アユムの参ったという声だけが鍛練場に広がり、その場にいた全員は動かずにいるとカーメルとロイがレオンの元に向かい…レオンは信じられないと言わんばかりの目で自身の手を見て実感したのか握りしめる。


「良いものを見させてもらった」

「すげーよレオン!お前は立派な騎士だ!」


周囲の騎士達もレオンの近くに集まり拍手を送り讃える、レオンの成長を目の前で見た騎士達はその若々しくも力強い戦いに感化され剣を握りたいのかうずうずしている者もいる。

そんな騎士達を眺めながら薙刀を回収していたアユムの隣にロニが来て横目でアユムを見る。


「これも君の思惑通りかな?アユム君」

「いや…強くなり過ぎじゃないですかねレオン…ほぼほぼ別人ですよ」


明らかに5日前までのレオンではないのは明白であり何かあったのだろう、と言うよりあったのだと内心納得する。

何があったのか分からない…何が彼を変えたのかも分からない、だがその変化は上手く行き一歩踏み出したのならアユムの行動も無駄ではなかったのだと何がともあれと頷いてると囲まれていたレオンが人混みを押しのけ何故かアユムの前までやってくる。

そして目の前まで来たレオンは静かに手を差し出してきてアユムは暫くその手を見て…握りる。


「…今度は」

「ん?」

「今度また来た時はお互い全力でやろう」

「……全力…か」


全力、それはアユムの今ある全てという訳でありヒスイとスキルを全て使ってのと言う意味になる。

ハッキリ言ってスキルを使ってしまえばレオンは相手にはならないとアユムは考えていた、それほどヒスイとダジからのスキルは強力であり異常なのだと…再確認しながらレオンの目を見る。

その目はアユムを見ていない、物理的には見てるのだがその目はアユムの更に向こうを見ているようでまるでレオンには未来が見えているようにもアユムは感じた。


「…分かった、その時までにはロニさんに勝てるぐらいにはなってるだろうな」

「う…そ、それはまぁ…近いうちに必ず…」


団長の名を出されて流石にロニの化物レべルの強さにすぐに追いつくとは考えてないらしく汗を流しながら目線が泳ぐ、それを見て苦笑していると突然レオンが固まり動かなくなる。

何がと思っているとふとさっきまでロニと話していた事を思い出し錆びたロボットのように後ろをゆっくり後ろを見ると笑顔のロニがすぐ近くまで来ていた。


「良い心がけだレオン、早速私が相手してあげよう」

「い、いえ団長!そんな恐れ多い…」

「気にしなくていいぞ、レオンの後はアユム君だ」

「ぇ…」

「君もその武器だけではなく剣術をもっと鍛えた方がいい、よし決まりだ!」

「ば、バトルジャンキー…」

「面倒だ!今から全員で私に向かって来い!」

「「「「えっっっっっっ」」」」


その後この事件は負傷者半数、戦意喪失半数という結果になり被害者達には『アユムやってくれたな事件』と言われ唯一難を逃れた老騎士スタはこのように語る。


「馬鹿者達が…」


と。

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