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文明開拓のすゝめ  作者: パル
171/394

171話『衝突』



胸元の傷が痛み少し顔をしかめるがアユムは気合を入れカルロス王達の方を向く、アユム達→黒服の男達数人→王城兵士…今いる位置と敵の数を確認しアユムは薙刀を振るう。

その動きにいち早く察知した剣を持った数人がアユムに向かって来るが間に合わず床から氷の刃が生え男達を牽制する。


「ロベリアさん走れるか!」

「スズラン!任せて…これくらい私だって…!」


薙刀を振るい兵士方面の敵に向け振り下ろす、その瞬間同じように地面が凍っていき氷の塊が地面から発生し黒服の男達を吹き飛ばす。

するとカルロス王の方向へ向かう道ができスズランはヒストルを抱きかかえ走り出す、様子を伺っていた周囲の男達も仲間がやられた事で武器を構え間を通ろうとするスズランとヒストルへ矛先を向ける。


「ヒスイ!」

『がってん!』


すぐにその場から走りアユムの背後からヒスイが飛び出し左側、アユムは右側の敵の前に立ち塞がる。

その手に持つ薙刀を振るい接近を許さず、隙を突いて向かおうとした敵は王城兵士が前に出る事で無事ヒストルとスズランはカルロス王側へと到着する。


「ヒストル!」

「あ…ぁ…お母様…?」


到着したと同時にヘレッタが駆けスズランからヒストルを受け取り強く、抱き締める。

突然抱き締められ何が何なのか分からないのかヒストルは混乱しているとカルロスも近づきヘレッタをも包み込むように抱く。


「…無事で良かった…ヒストル」

「お父様…」

「はッ、俺が助けるつもりだったんだがな」

「…アユムが居なければ間に合わなかったでしょうが」

「いいんだよ、結果生きてたんだ…良かった」

「それは同意見です」

「マグナ…お兄様…リボルお兄様…」


頭の理解が追い付かない、だがヒストルは暖かさと優しさに触れた瞬間…目から止めどなく涙が溢れ視界が歪み嗚咽が止まらない。

痛み恐怖不安…全てがどうでも良くなるほどヒストルは親に包まれ2人へ泣きつく、それを見守ったアユムはさて…と振り向きシャムを睨む。

シャムは腕にポーションをかけられながらそれはもう立派なリンゴのように全身が真っ赤になっており震えながらもアユムを睨み返す。


「き、貴様…な…何故…」

「さぁ…何でだろうな?」


と強気で返す、アユムは刺されて死んだ…そう連絡が行ってる筈だろう。

だがアユムは生きていた、刺された時に生死にかかわる部分を氷でガードする事で死を偽装し今こうして立っている…そしてアユムを生かしたのはアユムではなくヒスイである。


『大丈夫アユム?ごめんね…』

「(大丈夫だヒスイ、あの時言われても多分俺は分からないだろうしロベ…スズランを助けられなかった)」


言わば結果論であるがアユムの死の偽造は良い方向へ運ばれていた、元々スズランを怪しんでいたヒスイによってあの部屋に1人いたスズランの行動に反応でき一度様子を見ることが出来ていた。

あの場でヒスイが止めてもあの後に入って来た男達によって二人とも殺されていただろう、その上スズランのスキルによってアユムが劣勢になるのは明白…ならば被害を最小限にし地面に転がった時にアユムの脳内で話して隙を伺うのが賢明だというヒスイの判断でアユムとスズランは結果的に救われた。


「(頼りになるなヒスイ)」

『私達がいないとなーんにも出来ないんだから』

「(それはそう)…さて…」


脳内の話を終えアユムは一歩、前へ踏み出す。

それに反応しシャムの前を剣持ちが数人…短剣を持った黒服の男達が硬めシャムまでが遠くなる。


「邪魔をしよって…!殺れ!殺るんだ!」


喚き散らすシャムの声に男達がじりじりとアユムに向け距離を詰め武器を構える。

相手は見た限りでは手練れ、それくらいは分かるようになったアユムだが分からない方が良かったかもしれないと思う程劣勢過ぎる…重要な臓器を守ったとは言え刺された事に変わりなくアユムはズキズキ痛む傷を庇いつつ冷気を漂わせ…


「構え!」


後ろから声が聞こえた瞬間アユムの左右に誰かが並び見ると武器を構えた王城兵士達がアユムと肩を並べ立っていた。


「おいおいあんた1人にカッコいい思いさせると思ったか?」

「英雄様、僅かながらですが我々にも戦わせてください」

「あんた達…」


見回りの時に会った兵士達がアユムを横目に見ながらニヤッと笑う、その手は震えているが今この場では何よりも頼りになる存在である。


「しかし相手はケッケイ家の騎士もいます、苦戦するでしょうね…」

「ケッケイ家の騎士…?」

「あ、おいスズランさん危ないから下がって!」

「黙ってて」


黒服の男達とアユムと兵士達で睨み合いになっているところにスズランがアユムの傍に来ており、安全な後方に向かわせようとしていると相手側からどよめきが聞こえる。


「スズラン様…」

「や、やはりスズラン様だ…!何故この場に…」

「…知らなかったのか?」


剣を持っている数人から動揺が見られ、彼らがケッケイ家の騎士なのだとアユムは把握する。

何が起きているのか分からないが何故か騎士達はスズランがここにいる事を知らなかったようだ。


「…多分、シャムがバレないようにしてたんだと思う…少しでも何かが起きないように」

「何か…?」

「……私はケッケイ・スズラン!今お父様がいない今私にケッケイ家の権限があるようなもの…我が騎士よ剣を置きなさい!」


遠くまで響く程のスズランの声に騎士達は同じ騎士と目を見て数秒動きがない状態になった後…1人が前に出る。


「スズラン様、生きておられており嬉しく思います…ですが私達はケッケイ・シュール様にこの命を預けた身…貴方様と言えども従えません…あの方の無念を仇を取る為…」

「…そう…」

「そうだ!お前達の主を殺した王家を始末するまで戦う事を止めるのは出来ない!さぁ!戦え!」


もう後戻りは出来ないような、そんな覚悟が決まっている目をしている騎士達の目を見てスズランは下を向きシャムは叫ぶ。

スズランは何も言わず…アユムの腕を掴む。


「…お父様の幻影を追いかけてる彼らを…解放してあげて」

「…分かった」


疑問を抱きアユムによって目の前を覆っていた影を晴らしてもらったスズラン…だが彼らは既にどっぷりと浸かってしまっている、それを見て目を閉じスズランはアユムに全てを託す。


「…後は戦うだけ…だが…足りない…早く来てくれ」


スズランを下がらせ、アユムは目に前にいる敵を見てそう零す…そして長い沈黙が流れ誰かの腰に付いていたナイフが地面に落ち音が響き渡る。


「全員始末せよ!」

「「「「うおぉぉぉぉお!!!!」」」」


騎士の一人の合図に黒服の男達が静かに向かって来る、そして兵士達は声を上げ武器を構え向かえうつ…王城内部謁見の間にて防衛戦が開始する。





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