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文明開拓のすゝめ  作者: パル
168/394

168話『何も無いもの』

短いです。


深々と切られた腕を庇いながらロイは剣を抜き素早い剣捌きで黒服の男を切り飛ばし、黒服の男は声を出すことなく絶命する。


「ろ、ロイ大丈夫か!!!」

「騒ぐんじゃねぇレオン…こんくらい日常茶飯事だった、問題は無いが…問題は別にある」

「…あぁ」


遠くから聞こえてくる戦っているのであろう音が聞こえ、ここ以外にもあの黒服の男と同じ敵が現れたのだと分かりレオンは息を吞む。


「ど、どうする」

「まず俺達の使命を思い出せ…一刻も早く王の元に向かわなければならない」

「走れるか?」

「なんとかな…行くぞ」


傷口を布で覆って止血をするだけの処置を施しロイとレオンは廊下を駆け王の寝室へと向かう。

向かっている最中に別の廊下の先で戦っている兵士の姿があり善戦しているが何処からともなく黒服の男達が現れ物量に押され命を落としていく…その際使用人が何人かいたが特に手出しされずその場に放置されているのを見て走りながらレオンは疑問に思う。


「…なんであいつら兵士だけ殺してるんだ?」

「恐らくだが俺達を全員始末して王城を占拠するつもりなんだろう、あの動き素人じゃねぇ…ただの使用人共じゃ太刀打ちできないだろうな」

「……」


敵の目的が不透明だが明らかな敵意と行動からある程度は絞れた、絞れたからこそレオン達は一層足を動かす。

わざわざ兵士を殺しているのは抵抗を減らす為、兵士と騎士の反抗力を削ぐには彼らの守る対象である王を狙うのが早いだろう…人質になればレオン達は抵抗が出来なくなる。


「……カーメル」


王を守る為…急いでいたレオンだがそれと同時に不安要素があった、それは今夜の見回りがカーメルであったこと…見えないところにいる彼女の身の安全が分からない今レオンは気が気でないが王を守る事と天秤にかけてしまいカーメルを探す事が出来ないでいた。


「…!おいあれを見ろ!」

「……!!!カーメル!」


広い廊下を駆け曲がり角を曲がった瞬間目の前に広がったのは廊下に転がっている兵士と黒服の者達の死体、そしてその死体の先に戦っているカーメルと見回りの相方の騎士の姿があり互いに背を預け5人に囲まれ防戦を強いられていた。

それを見たロイとレオンは考えるよりも前に剣を抜き飛び出した瞬間、間に入るように1人の黒服が飛び出してくる。


「退け!」


剣を振りかざし切りつけようとするが黒服の男は腰の剣を抜くとレオンの剣を受け止め受け流しレオンンの顔を膝で蹴り飛ばす。


「ぐあッ!」

「レオン!」


よろけたレオンに剣を向けた黒服の男に割って入るように片手で剣を抜き数度剣と剣がぶつかりお互いに数歩下がる。


「…荒々しい剣だが実戦向きだ、さては最前線に飛ばされた騎士だろう?」

「あぁご名答…俺からも言わせてもらうぜ、あんたの剣は重過ぎる…何者だ」


あの一瞬でロイの力量を見極めたのか黒服の男は剣を向けながらも敬意を示しているように、軽くお辞儀をする。

そしてロイの言葉に黒服の男は黙り…


「…私はケッケイ家に仕える騎士にしてケッケイ・シュール様の剣、貴様らに断罪を下す者だ」

「ケッケイ家の騎士……!どういう事だ、ケッケイ・シュールに関わる全て処刑された筈だ!」

「ふふふ…我が主を殺した者達を始末するまでは死なんよ、お嬢様の為にも」

「お嬢様…まさか」

「…話過ぎたか、まぁいい全員始末するのだからな」

「っ!」


剣を構えたケッケイ家の騎士は話し終えた瞬間に走り出しロイへ鋭い一撃を繰り出す。

咄嗟にガードするが片手であるせいでしっかりと耐えきることが出来ず押され始めてしまう。


「ロイ!」

「レオン先へ行け!王を守れ!」

「…なるほど、良いだろうたかがひよっこ一匹通してやろう」

「……クソ!」


まるで取るに足らないと言わんばかりにケッケイ家の騎士は視線をロイへ向け、レオンは歯を食いしばってその横を走り抜ける。

そう、レオンは騎士だ…王を守らなければならない






走り出した時、レオンは戦っているカーメルの姿が視界に入ってしまった。

カーメルともう1人の騎士は既にボロボロだ、今助けに入らなければ限界を迎えるだろう。

ロイもそうだ、片手を負傷してしまっているロイがあの元騎士に勝てる見込みは少ないだろう…レオンは今二つの選択肢を強いられていた。


仲間を見捨て使命を全うする…か

王を助けず仲間を助けるか


脳裏によぎるのはロニとアユムの後ろ姿、あのくらい強ければ…スキルがあれば全て上手くいっただろう…と。


「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…!」


どちらかを選ばなければならない


仲間か使命か


大切な人達か仕える者か


「はぁ…!はぁ…!」


息が荒れる、家族達の失望のため息が…はるか高みにいる団長が…剣術でも勝てないアユムのあの顔が脳内にフラッシュバックする。

誰よりも強くなって家族も騎士団もアユムでさえも見返す為に努力した事が今意味ない事に絶望してしまう。



どちらも選ぶことが出来ない、そんな思考停止とも言える状態に陥ってしまったレオンを追い詰めるように時間は無情にも進んでいく。

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