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文明開拓のすゝめ  作者: パル
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133話『介入』


破壊神ダジ、その名を聞いてケッケイは驚愕の表情を表に出す。


「馬鹿な、何故神がこの地に立てている…まさか歩くんは化身だったのか!?」

「『正確には我はアユムの体を借りてるに過ぎない、我の忠実な使徒をよくこうもボロボロにしてくれたな人間…いや紛い物よ』」

「くっ!だが神が介入出来るはずが…」

「『確かにお前の言う通り我々はこの世界文明に干渉するのはほんの僅かしか出来ない…だが例外がある』」


アユム…の体を使いダジは右手を上げその指をケッケイへと向ける。


「『貴様が異物であり我の取りこぼしたものの1つを知ってるからだ』」

「そんなものが…通るものか…!」

「『通るとも、我は神だ』」

「…どうやら私の計画を達成するのは貴方を倒さなければならないようだ…ッ!」


空が赤く光った瞬間、ケッケイは右手を振るう…振るった時地面が抉れるようにめくれ上がり瓦礫共にダジへ拒絶の攻撃が放たれる。

ダジは右手の指を広げ…


「『消滅』」


飛んできた瓦礫、拒絶の衝撃波含め全てを消滅させる。

まるで最初からそこに無かったかのように消えたのを見てケッケイは歯を食いしばる。


「…これが破壊神の力か。計り知れない…」

「『人間如きに測れるとでも思っていたのか?だとしたら滑稽だな』」

「言っておけ…!」


左手を振るい骨の槍を出現させダジへ音速の速さで投げ…またしてもダジは指を向けニヤリと笑う。


「『消滅』」

「ッ!」


投擲した筈の槍は消え、そして危険を察知したケッケイが顔を横へズラすと…頬が僅かに消滅し傷口から鮮血が飛び散る。


「『貴様はあの人間の少女の力を自身へと流す事により紛い物の力を得た、だがそれはあくまでも借り物に過ぎない…アユムレベルの我の力で傷を付ける程度簡単だ…欠伸が出てしまうぞ』」

「…困ったね、これは困った…」


そう言いながらケッケイは傷口を手で覆い…横へズラすと傷口はいつの間にか無くなっておりそれを見たダジは目を細める。


「『…貴様かなり馴染んでいるな、さてはこれが初めてではないな?』」

「…はは、そうさ…この10年私は儀式の準備と同時に神の力に耐えうるように少しずつ神化させた子達の力を自身に流し込んだ…!」


手で顔を抑えるケッケイの声は何処か狂気的で嬉しそうにどんどん大きくなっていく。


「あの本に書かれていた成功者の共通点は召喚された者達!つまり私達とは元々の土台が違う…ならば私はそれらと同じ足場を作れば問題はあるまい!」

「『…その過程でどれ程の命を失ってもか?』」

「これは救済の為の犠牲だ!私は今世界を救う為に多くの犠牲の上に立っている…!」

「『救済?笑わせるな、貴様は自ら奴隷になる為に尻尾を振っている畜生に過ぎない』」

「何が分かる…お前達神が何もしないからこうなっているんだぞ!」

「『…………』」

「…お喋りは終わりだ破壊神、私は私達は自分達の手でこの世界を救う!」

「『ッ!』」


その場から一息でダジとの距離を詰めケッケイはその拳をダジへと振るう、拳を受け止め…ようとしてダジは攻撃を避け蹴りを繰り出すが右手で防がれそうになる。

その瞬間指を向け…ケッケイは後方に大きく飛ぶことで消滅の攻撃を避け更にダジとの距離を詰める。


「破壊神、降臨する体を間違えたようだな…」

「『……』」

「歩くんはもう戦える程の体をしてない、それに君自体はあまり歩くんを傷つけたくないようだが今の状況と矛盾してないか?何を狙っている…?」

「『…さぁな』」


防戦一方、ケッケイは消滅のスキルに警戒してるだけで良いがダジは今にも消えてしまいそうなアユムの体を庇いながらの戦闘で反撃のタイミングが無い。


「『……………(一瞬、一瞬の隙さえあれば…)』」



──────────



目を開けると小鳥が飛び立っている姿、風に揺れる木の葉っぱ…そして遊ぶ子供達。

シインは身体を起こしぼーっとしていると誰かが目の前に現れる。


「またこんなところにいて!もう!」

「こんなに天気良いからいいでしょ…?」

「良くない!みんなが待ってるよ、ほら行こ?」

「うーん…」


手を引っ張られ、起き上がりシインは少女に引っ張られ皆が居る場所へと向かう。


「シイン!」

「早く来いよ!」

「置いて行っちまうぞ!」

「待って…!」


皆が並んで立っている、急いで向かわなければ…


「…………」

「…?どうしたのシイン?」

「…おかしい」


視線を向けると、孤児院の一部が黒く焦げており…ある方向を見れば壁に杭が打ち付けられており…子供達の中にあの時死んでしまった男の子もいた。


「おかしい…おかしい…!」

「し、シイン…?」

「ッ!」


ハッとなり門を見ると…門の外は暗闇になっておりその先にはチャンマルに救われた時と同じように光が差し込んでいた。


「…そうだ、私ケッケイ様と…皆と…」

「……し、シイン!?」


シインは突然走り出し門へ向かう、そして門を開けようとするが鍵がかかっており開く気配が無い。


「開いて…!開いて…!皆が…皆が…!」

「…無駄だよシイン」

「………」


ゆっくりと振り向き、シインは後ろを見ると少女と子供達が神妙な顔で立っていた。


「もういいのシイン、もうシインは無理しなくていい」

「何…を…」

「シインが頑張ってたの見てたから…私達皆ね」

「……」

「シインが私を助けようとしてくれてたのも、ケッケイ様に利用されて祈りを頑張ってたのも…勇者の人達と頑張って旅したのも…シインは十分頑張ったよ」

「お疲れシイン」

「お疲れ様」

「だ、だけど戻らないと皆…が…」

「分かってる」


ふと、もうこのまま昔の皆と一緒にいてもいいのではないかとシインは思ってしまい顔を下げ…脳裏にユリ達のアユムのチャンマルの顔が思い浮かび頭を振る。


「……私…本当はもう楽になりたかった」

「…うん」

「私だけが皆を犠牲にして幸せになっていいのかって…思って…」

「…うん」

「だけど私まだ、お礼言えてない」

「…うん」


シインは優しく待ってくれている少女を子供達を見て顔を上げる。


「私を外に連れて行ってくれたユリ様に、私の代わりに色々してくれたサリアさんに、私の相談に乗ってくれたアユムさんに…」


1人1人見て、シインは自分が恵まれていた事を知りそして少女を見る。


「…私ね、お友達出来たの…獣人の子でね…私その子と色々な事したいって初めて思ったの」

「…うん」

「だから私、行くよ…お礼言うために…自分の為に」

「…そっか」


少女は周囲の子供達を見て、子供達は笑う。


「やっぱりダメだったかぁ」

「俺は信じてたぞシインなら大丈夫だってな」

「ちょっと前と言ってること違くない?」

「じゃあもう引き留めておく訳にはいかないね」

「そうそう」


そう言った瞬間、シインの背後から何かが壊れた音が聞こえ振り向くと鍵が外れたのか門がゆっくりと開き…シインを黒いモヤが覆う。


「ッ!?」

「落ち付いて、途中までは僕達が連れて行くよ」


シインの腕を子供の一人が掴み引っ張るとシインの体はゆっくりと光に向かって行く。


「今までの子達がシインの体を欲しがってる、けど安心して…お部屋出ても私達がいるから大丈夫」

「…私があの椅子に座らせられてたのって…」

「シイン私達がケッケイ様の魔法でちゃんと見えてなかったもんね」

「声も聞こえてなかったよな」

「ほらおしゃべりしてる暇ないよ」


ゆっくりと光が近くなり、黒いモヤがどんどん離れていき子供達もそれと同時に1人1人離れていく。


「光を辿って行けば出れるよ」

「皆…私…」

「行ってらっしゃいシイン」


強く背中を押され、シインは光を目指し飛んでいく…振り向くと黒いモヤの中に子供達と少女の姿があり手を振っていた。


「負けるなシイン!」

「またなー!」

「頑張れ!」

「皆…また、会いに来るから!絶対!私…!」


そう言いながらシインは光に包まれ意識が薄らぎ…黒い空間から消えていく。


「…さようなら、シイン」

「最後くらい、カッコいい所見せないとな」

「…うん」


そう言い少女達の体は黒いモヤになり…僅かな輝きを見せる。













目が覚めたシインは全身の激痛で悶え耐える、祈りの力を使い全身の怪我を最低限治し顔を上げると近くにチャンマル…少し離れたところにユリとサリアも倒れており息をしている事を確認して安堵する。

だが重症なのは変わりない。


「待ってて、今治して…」


治療しようと魔力を集めていると…激しく戦っている音が聞こえ視線を向けるとアユムとケッケイが戦っているのが見える。


「アユムさん…なんであの体で動けるの…?」


アユムの体はシインから見ても素人から見てももう動けない体だ、だが現に今動いて戦っている。

空を見上げると不気味な穴とそこから巨大な手が見え空は赤い目が所狭しと見えシインは戦慄する。


「…どうにかしないと…だけど…」


今ユリ達を起こしてもどうする?今のケッケイに一瞬で敗れたユリ達を治療してもどうなる?魔力は無限には無い…かと言って今のシインに何が出来る?


「考えろ…考えろ…!」


何をするのが最優先か、状況を理解して最適な方法を…






その時、シインの手が僅かに輝きだし全身に温かい感覚が流れる。

その感覚はまるで…


「皆…」


全てを理解してシインは涙を流す、この流れてくる力…それは孤児院の皆の魔力でありシインの中で何かが鼓動をし始める。


「…確か…やってみるしかない!」


シインはその場を立ちあがりあるものを手に取る。



──────────



槍を拳を蹴りを避けつつダジはケッケイにジリジリと追い込まれていた、アユムの体から血が溢れ着地した瞬間体の何処からか骨が折れる嫌な音が響く。


「どうした破壊神、歩くんを解放しなければ共倒れだぞ!」

「『うちのアユムはそんなヤワな鍛え方はしてないもんでね』」


口で余裕そうにするがアユムの体が限界なのは間違いない、あまりにも負傷が酷ければサヨの蘇生が出来なくなる。

だがここでダジがアユムから抜けるのは出来ない。

そしてケッケイは右手を当てる瞬間を狙っていた、破壊神と言えど拒絶の攻撃は耐えきれない筈である…この目の前の敵を倒せばケッケイの勝ちは確実、タイミングを逃さないように慎重に丁寧に見極め…



そしてついにその瞬間が訪れる。

アユムの流した血を踏んでしまいダジは足を滑らせ足を取られてしまった。


「ぐ…!」

「貰った!堕ちろ破壊神!」


その右手に力を込め拒絶の力が集まり、その右手をダジへと叩き込む…この戦いに決着をつける為に。















当たった筈の拳は、何故か拒絶を起こさない。

それどころかまるで包み込むように謎の温かい光がダジとケッケイの拳に広がり…ケッケイは視線を横へ向けるとそこには


「シイン…!」

「はぁ…はぁ…私…はもう拒絶…しない…皆の力を借りて…『認める』!」


最後の力を振り絞るようにシインはその左手を向けており、そして右手に持つそれをダジへと投げる。


「アユムさん!」

「『よくやった…!』」


勢いよく飛び上がり空中でキャッチしたダジはそれを抱き締めるように握る。


「『これ以上は…介入できない…後は頼んだぞ…小娘』」


空中で受け止め…そのまま地面に落ちた瞬間、最上階を覆ってしまう程の冷気と雪が広がりケッケイとシインは腕で顔を守り肌を刺すような寒さに襲われる。


「…な、何…?」











その冷気によって白い雪が舞い散りその影を映す。



「…全身痛ぇ」

『我慢する、男の子でしょ?』

「俺は男女で物事を決めない平等主義でな…」

『はいはい』


そんな会話が聞こえ、薙刀が振られたシルエットが見えた瞬間白い冷気と雪は吹き飛びその姿を現す。


「…ファイナルラウンドだ」


その体は白い甲冑によって包まれ腰に刀を手には薙刀を持ち、流れる血は凍って止血され面頬から白い息が出る。

全身を冷気に包まれたアユム、その限界な体に鞭打って最後の力を振り絞る。

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