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文明開拓のすゝめ  作者: パル
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130話『未完成の』

サリアが薙刀を振るい更に温度が下がったのが肌で分かりユリは急いでその場を離れるとよそ見をしているうちに向かって来ていたシインを牽制するように氷の槍が地面から生え、シインは止まり様子を見るようにジッとサリアを見る。


「…サリア無事?」

「はい、ポーションを服用してヒスイに止血をしてもらいました」

「…ヒスイ、何でサリアがアユムの薙刀を?」

『私のだけど…まぁほらサリアが吹き飛ばされた時偶然私がいる場所まで来てね』

「……手短に何があったか知りたい」


ふわふわ浮きながらサリアの周囲を飛んでいるヒスイを横目に、ジリジリとユリはシインとの距離を詰めていく。


『まず私は今アユムと契約が切られてる状態、今アユムの体には私の力が微塵も残ってない』

「…大丈夫なの?」

『アユムは元々破壊神の使徒だから大丈夫だけど、私はそこまで無事じゃないのよね〜…信仰してくれてるアユムとの繋がりが今サリアの持ってる剣しかないから』

「私の剣が…?」

『そ、その剣はアユムの魔力が入ってるからそれで今延命してるとこ…だから早いうちにアユムと再契約したい』

「…分かった、ただ気になるのは何でアユムが倒されたのか…そこが知りたい」


何故アユムとヒスイの繋がりが無くなってるのか、その理由も倒されたのに関係してると考えユリはヒスイを見ると…ヒスイは険しい顔をしてシインを見ていた。


『…最初はちょっとだけ違和感があった、けど言う必要もないと思って言わなかったけど今ハッキリと分かる』


氷の薙刀を握り息が荒くなり今度はケッケイを睨む。


『貴方何処で知ったの?』

「はて?なんの事か分からないな?何を知ってるかなど詳しく言ってもらわなければ」

『………ユリ、サリア気をつけて…シインは今ただの人間じゃない』

「ただの人間じゃない…?確かに今シインは妙な力を使うが…」

「…どういう事?」


心臓が痛むのか、胸に手を置いて握っているヒスイは口を開く。


『純粋な血324人、雑種の血を148人、山羊の角の粉、聖者の心臓10、子牛20、子豚20、妖精の鱗粉100、ドラゴンの鱗14…そして穢れた血が30』

「…?」

『これは『神を作り出す材料』…!アユムが倒されたのも私との契約が切れて相手が神だったから…!』

「素晴らしい!この事を知ってる者が他にもいるとは!」


まるで久々に再開した親友を見つけたように、笑顔になるケッケイはその場から動かずシインを見て拍手する。


「その通り、私が20の時秘蔵にあった文献で見つけた皆を救うたった一つの手段!そうだな…今のシインへ名を付けるとするならば」


空を見上げまるで崇めるように両手を上げてケッケイはうっとりとしながら口を開く。


「『拒絶の神』とでも言おうか」


シインが右手を上げた瞬間、まるでケッケイを守るように薄く淡い赤色のバリアのようなものが出現し左手に骨の槍を出現させユリ達へ向け突っ込んでくる。


「…!『降ろしの義、草薙の剣!』」

『『氷牢!』』


向かってくるシインを牽制するようにユリは剣を構え前に出てヒスイは指先を上に向けるように勢いよく動かすと、地面から壁がシインを囲うようにせり上がり捕まえようとするがすぐさま上空へ飛ばれ避けられてしまう。


「…攻撃していいの?」

『今はサリアの持ってる氷剣で仮契約してるだけだからどうなるか分からないけど、何もしないよりはマシでしょ!』

「…それは確かに」

『あとごめんねサリア、サリアの魔力勝手に使ってる!』

「構わない、何かでも役に立てるのなら本望だ…逆に私はこの槍を扱う事が出来ないのがもどかしいが…」

「…来るよ!」


ユリの言葉に反応してサリアとヒスイは武器を構える、上空から迫ってくるシインはその骨の槍を構え一気にサリアへと突き出してくる。


『氷壁!』


その動きを見てヒスイは氷の壁を出し槍を氷で受け止め、その壁に足場を作り出す。

その足場を踏みサリアは上に上がり氷剣を上から叩き切るように飛び上がり振り下ろす、それに合わせユリは背後に回り剣を振る。


「『…拒絶』」


軽く、そして妙に耳に残るシインの言葉にサリアとユリは嫌な予感がし即座に防御体勢をとる…その瞬間サリアとユリは突然弾かれたようにその場から吹き飛びシインから離れた場所でどうにか着地する。


「…厄介」

「これが神の力…?」

『いや、こんなもんじゃないよ…多分まだ未完成なんだ』

「…未完成?」

『材料を集めただけで簡単に作り出せるはずないでしょ?私達だって私を含めて数百いて4人しか結局成功してない…』

「…失敗した人はどうなったの?」

『…漏れなく全員死んだわ』

「未完成ならもしかしたらシインは…!」

「…慌てないでサリア、どちらにせよ私達はやるしかない」


チラッとユリはとある方向を見る、そこにはどうにか回復してきたのかチャンマルが肩で息をしながら立ち上がろうとしていた。


「…一瞬、一瞬で良いから時間作れる?サリア、ヒスイ」

「お任せくださいユリ様」

『ま、どう転がってもアユムの所に行くにも手伝わない手はないけどね』

「…行くよ!」


合図を聞きサリアとヒスイはその場からシインへ向かって氷剣、薙刀を構え振るう。

シインは氷剣を槍で、薙刀を右手でガードしようとする…氷剣は止められヒスイは薙刀を止め右手に当たる寸前で止まる。

反射の条件がユリの魔力の攻撃と使徒の攻撃…この通りならばヒスイ自身の攻撃は問題ない筈だが万が一がある為念には念をとヒスイは攻撃を止める。


「ふ…ッ!」


短く息を吐きサリアは剣を振るい、槍の間合いの更に中に入り近距離戦へと持ち込む。

槍の刃が当たらないよう出来る限り接近し剣を振るうがシインが右手を出しぶつかった瞬間強い反発が発生し氷剣は弾かれ遠くへ飛んで行ってしまう、武器が無くなりサリアへ槍を向けようとシインが槍を引いた瞬間…サリアはその右手を振るう。


「…!!!」


その右手には氷剣が握られており、シインが視線を向けた先には飛ばされた筈の氷剣が刺さっているのがハッキリと見える。


『残念!あれはフェイクでした!』


サリアの氷剣は槍を弾き無くなった屋根の外の飛んでいく、そしてその氷剣からヒスイが飛び出し両手を前に出し魔力を込める。


『『大吹雪!』』


その両手から激しい風が舞い上がりそれに混じり雪が吹き荒れシインの体を冷やしていく、その場から動こうとするが足が動かずシインは下を見ると足が薄い氷で覆われており一瞬上手く動かせない。


「ユリ様!」

「…ありがと…!」


突然、シインの体が背中から捕まえられ後ろを振り向くといつの間にかユリがおりシインを羽交い絞めにしていた。

右手と左手が動かせない…シインは即座に全身に魔力を込めた瞬間、シインの頭を誰かが捕まえる。


「…このチャンス逃さないでね…!」

「分かってるッス…!」


それは立つのもやっとだった筈のチャンマルであり、シインは頭から妙に落ち着くような安心するような感覚があり一瞬動きが止まる。


「シインちゃん…目を覚ましてッス!」


それはチャンマルの魔力であり…シインは自分に流れてくる魔力を感じながらゆっくりと目を閉じる。

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