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文明開拓のすゝめ  作者: パル
120/395

120話『既視感』

逃げる国民達と品定めするように周囲を見ている黒い化物を見てダガリオは脳裏にムウのエレファムル襲撃の時を思い出し、奥歯を強く噛み締める。


「アミーラ、リサ行くぞ!」

「分かりました」

「おう!」

「…私達はあっち」

「はい!」


特に言葉を交わさずダガリオ達とユリ達は2方向へ走り出す、ダガリオ達は黒い化物へ…ユリ達は王城に向かい始める。

勇者であるユリが何故黒い化物へ向かい国民を守らないのか、それは王城にも1つ落ちたのを確認したのもあるがダガリオ達を信じての考える時間を作らずノータイムでの行動であった。


「ま、また来るぞ!」

「…ッ!」


空を見上げたユリの目に写ったのは無数の隕石、実際に隕石な訳がないがそう思ってしまう程の黒い塊が流星のようにユリがいる近くに落下し建物を破壊する。

そして黒い塊は激しく波打った瞬間形が出来始める、その姿は足があり手もあり姿だけは人間に近い…だがその頭は牛のような形をしておりミノタウルスに似た姿だと言えば分かりやすいだろう。

だがその姿も背骨が背中から飛び出したように剥き出しになっており猫背になっている。


「…サリア、予定変更…皆守るよ!」

「王城には団長がいます…任せて私達が出来ることを!」


右手が輝きユリの右手に剣が1つ、サリアは腰に装備していた氷剣を抜き国民を襲い始めてる化物に向かっていく。



━━━━━━━━━━━━━━━━



「気持ち悪い見た目しやがってよ…!」

「あんな生物は見た事ありませんね、ダガリオさんは」

「いや、僕も無いが…あの姿を変えるのを見てひとつ思い当たるものがある」

「…スライムですね」

「あぁ」


逃げる国民の間を通り過ぎながらダガリオは湿地帯で遭遇した巨大なスライムを思い出す、あのスライムも姿形を変えていた…があの時のスライムはちゃんと生物としての姿をしていたが目の前にいる黒い化物は生物として不完全な姿をしている。


「あぁ?んじゃ私達の攻撃また効かないって事か!?」

「…まだ分からないが今アユムもヒスイもいない、最悪騒ぎを聞いた王都の冒険者達に期待するしかないな」

「んな悠長な事言ってる場合じゃねぇだろ!来るぞ!」


品定めが済んだのか、黒い化物は逃げていく国民達に向かってその巨体を揺らして走り出す。

二階建ての家と同じくらいのサイズのトカゲが走って向かってくるのはかなりの脅威である、逃げ惑う人々の中に少女が人とぶつかって倒れてしまう…急いで起き上がろうとするが足をくじいたのか立ち上がれず周囲には誰も居ない後方から口を開き迫ってくる黒い化物と目が合い少女は思わず目を閉じてしまう。


が、いつまで経っても痛みも無く少女は目を開けると目の先に腹ばいで地面に倒れて蠢いている黒い化物がおり自分のいた場所が変わっている事に気づく


「あぶねぇな、大丈夫か?」

「あなたは…」

「んなのはいいんだよ、さっさと逃げろ!食われるぞ!」

「は、はい…!」


少女の肩に手を置いていたリサの大声で少女は痛む足を庇いながら離れていき、それを確認してリサは黒い化物を見る。

口を開けて勢いよく飛び込んだ為か口の中に何もいない事に困惑していて動かない。

そこに遅れてダガリオ達も到着し武器を構える。


「今ので逃げ遅れは終わりだな!」

「あぁ、リサ!アミーラの攻撃を当てやすくする為に僕達はこいつの移動を制限するぞ!」

「弾薬は限られていますから、確実に仕留める為にお願いします」

「任せなっと!」


腰の後ろに装備している短剣を改めて取り出しリサはスキルを駆使して黒い化物の後方へ移動し、後ろ足の片方のアキレス腱を切りその流れでもう片方のアキレス腱をも切り飛ばす。

化物は立ち上がろうとするが後ろ足が上手く動かず切られた事すら気づいてないのか頭を傾げる。


「あぁ?なんだよ大した事ねぇじゃねぇか」

「油断するな!何をするか分からないぞ!」


一気に駆けたダガリオは大きく跳躍し落下の勢いを殺さず化物の右前足を切り、返しの刃で更に切ること深い傷を負わす。

だが痛みで叫ぶ事も無く、また謎に足が動かなくなった程度にしか思ってないのか無理やり動こうとする。


「鈍感か?まるでアユムみてぇだな…」

「分かって無さで言うならアユム以上だ、やはりこいつは生物ではいない…のか?しかしそれにしては生物としての弱点や有効打が通りやす過ぎる…」

「…いや、見てください」


アミーラに言われリサとダガリオは視線を向けると切られた後ろ足がまるで肉が盛り上がるように傷が埋まっていきちょっとずつだが再生している。


「やるなら一気に終わらせた方が良いな、アミーラタイミングはそっちに任せる!」

「分かりました、ダガリオさんは…」

「君の護衛だな、リサ!無理だと判断したら戻って来い!」

「ハッ!私を誰だと思ってんだ!」


アミーラがタイミングを見計らっている間にリサは化物の周囲を飛び回り、体中を切りまくり少しずつ抵抗も動くのも制限していく…体の構造は不可思議だがリサは勘で筋肉を次々とそぎ落としていき立ち上がろうとしていた体が地面に落ちアミーラは両手を広げる。


「『対象を確認、これより対象を殲滅します』」

「リサ!」

「あいよ!」


ダガリオの声が聞こえたリサは黒い化物の体を足場に大きくバク宙しその場から離脱しダガリオの隣に着地する。

再生する体を持つが再生より早くリサによって全身が動かなくなった黒い化物に向けアミーラは6つの『砲』を向ける。

けたたましく響く爆発音、逃げていた者達も遠くもなく近くもない何処からともなく聞こえてくる音に気づきあの化物が何かしている音が聞こえてきたと怯える。




音がしなくなり、爆風で煙が周囲を漂い視界が悪くなるが強い風が一風…アミーラの砲撃は地面を抉り黒い化物を姿形残さず消し飛ばした…


「な…!」

「嘘だろ…」

「…困りましたね、こうも簡単に対処出来るものではないんですが」


筈だった、視界が晴れたその先に居たのは健在な黒い化物…だがその体には無数の触手がうねっており黒い化物から周囲一メートルは地面すら無傷であり…黒い化物が身を震わせた瞬間まるで体から這い出るように黒い塊が落下する。

その塊も何度も形が変形し…まるで百足のような体に頭は人のような形になる、黒い化物から更に生まれておりダガリオは歯ぎしりをしてしまう。


「まずいぞ…このままだと僕達だけじゃ対処できなくなるっ!」


ロングソードを握る手に力が入りダガリオは少しでも王都の国民が逃げれるようにリサと共に黒い化物に向かって行く。

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