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文明開拓のすゝめ  作者: パル
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11話『スキップ』

お互い睨み合いのまま1分程度の時間が流れる、どっちが動くか見極めていたのが裏目になり膠着状態になってしまう。

だが時間が長引けば長引く程アユムにとっては好都合だった。


「(頼むアミーラ…気づいてくれ…!)」


いくら待っても戻ってこないアユムを不思議に思い探しに来る、そして落とした剣を見つけて異常を察しダガリオと一緒に捜索して見つけてくれる…という理想の考えを思いつくが難しいと自分で否定する。


「(せめて探しに移動してくれる事を祈って…この女の子をどうにかする!そして焚き火か何かで居場所を伝えられりゃ…)」


いつでも戦えるように構えてると…少女にある異変が起きる。

突然足がおぼつかなくなり、パタリと地面にたおれてしまう。

油断を誘う罠かと思い指を構えたが…いくら待っても何かが起きる気配は無い。


「……?」


慎重に近くの落ちているナイフを取り、ゆっくりと倒れている少女へ近づく…すると僅かに寝息が聞こえ始め顔を覗くと目を閉じて眠ってしまっていた。

あまりの突然な事に拍子抜けしたが、手の持つナイフを少女に向ける。


「…なんで寝たか知らないが起きたらまた狙われるかもしれない、今度は俺以外も狙われる」


まさにアユムが襲われたように、アミーラもダガリオも狙われる可能性がある。

明らかに攻撃してきた存在が目の前で寝てる状況が何故起きてるのか分からないが、殺らなければ次は自分が殺られる。

そう思いナイフを振り上げた…その時少女の顔を見てしまった。


「…なんで泣いてんだよ…クソっ…」


眠っている少女は閉じた目から涙を流していた、悪い夢を見ているのか何なのかはアユムには分からない。

だが躊躇してしまった、そしてそれを皮切りにナイフを持っている手が震えてしまう。


「……無理だ…俺には…殺せない…」


早くなる鼓動に冷や汗が頬を流れる、手からナイフがこぼれ落ち膝をつく。

モンスター達と戦っていた時はまだ自分に納得させる事が出来た、だが目の前にいる少女はあまりにも人間と似すぎていた…吸血鬼…であろう少女を殺す事が出来ない。

ここで無理に殺した瞬間、自分の中で何かが壊れてしまうだろうと思ったからだった。


「…………」


ひとまずは、ひとまずは何か出来ることをしよう。

そう思いアユムは立ち上がり準備を始める。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


少女が目覚めた時に感じたのは手足が縛られている感覚だった、あまり強く縛ってないせいか強く引っ張れば千切る事は出来そうな程に脆い縄で縛られている。


「………」


目線を周囲に向けると1本だけ生えた木を背に座らされており、見通しが良い盛り上がっている高台にいるのだと予想がつく。

そして目の前にはこちらに背を向け必死に何かをしている男の背中…少女は回ってきた思考を巡らせ自分が襲った男だと言うことに気づく。


「………おい」

「ふぁぃ?!」


突然話しかけたからか、男は少しその場で跳ねて驚いた後ゆっくりとこちらを振り向く。


「………起きたようだな」

「あぁ、私に見えないようせこせこ何かやってりゃ目覚めちまうよ…こっち見んな変態」

「何考えてるか分からないが多分違う」


苦い顔をする男は何かをこちら側に見せるよう手に取る、木の棒と木材があり少し焦げてるのか黒くなっている点がある。


「私を火炙りにでもするつもりだったのか?」

「…違う、焚き火をしようとしてただけだ」

「ハッ、どうかな……何で殺さなかった」


眠ってしまった少女は明らかに無防備だった、だが目の前の男は少女を殺さなかった…疑問に思い問い掛けると男は言いにくそうに目を背ける。


「…俺は殺す為にここまで来た訳じゃないから…」

「けど私はお前を襲った、そして傷つけた…それでも私を縛るだけにしてるのは何でなんだ?」

「…それは……お前殺されたいのか?」

「誰も死にたがりなんて言ってねぇよ…私は確認したかっただけだ」

「確認?」


少女は力を入れると植物で簡単に作られた紐は引きちぎられ、地面に落ちる。

男は驚いた顔をしているが手に持っていた木の棒を放り投げて立ち上がる。

その手は震えて怯えてるのが分かるが、少女には今は少しでも『人手』が欲しい。


「…まず、あんたを急に襲った事は謝る」

「………」

「そして頼みを聞いて欲しい」

「…頼み?」

「あぁ」


少女は深呼吸し、ゆっくりと口を開く。




「…手を貸して欲しい…家の家宝に魂を乗っ取られた私の父さんを助けたいんだ…」



━━━━━━━━━━━━━━━━━



ひとまずお互いに手頃の場所に座る、焚き火でアミーラ達に居場所を伝える為持ってきた木々を椅子にアユムは少女を見る。


「俺はアユム、エレファムルの開拓者だ」

「…かいたくしゃ?えれふぁむる?」

「あー、ここから5日くらい進んだ所にある町だ…知らないのか?」

「家からあんま出なかったからよ、集落の近くに何があるかなんて知らねぇんだ…」

「ふむ……えっと…名前は?」

「……リサ、誇り高き血を受け継ぐ吸血鬼カルソンの娘…って言っても分からねぇか」

「吸血鬼…」


アユムの予想通り少女…リサは吸血鬼らしい、だがリサを見てひとつ疑問が残る。

吸血鬼と言えばある牙…それが無いのだ、人間と同じような形な為分かりずらい…と見ているとリサは手で口元を隠す。


「悪かったな…出来損ないで」

「…気を悪くしたのならすまん…」

「いやいい、もう慣れた…私は吸血鬼には見えないだろうな」

「…ふたつ質問いいか?」

「あんだよ」

「まず、なんで俺を襲ったのか…そんでどうやってあの場所からここまで連れてきたのか」


リサは襲ってきた時に『血』を寄越せと言ってきた、今はアユムが殺しに来ないから敵とは思われてない…ただアユムがひよっただけだが普通に話せている。

あの時のリサは理性が僅かにしか無いように見えた。


「…だいぶ人間の血を飲んでなかったから頭が回ってなかったんだ、今はこうして話してるが…お前の血は中々美味かったぞ」

「お粗末さま……次だ、どうやって俺を…何処だここ?ここまで連れてきた」


一瞬しか分からなかったが景色が瞬間的に変わってこのよく分からない高台に来ていた、明らかに何かの作用が働いてたのは間違いない。


「…私のスキルだ、名前は『スキップ』」

「スキップ…?どいうのなんだ?」

「私もよく分からない、だけど成人の儀を仕切ってたババアは特別なものだとか言ってたな…」


スキップと聞いて思い当たるのは、飛び上がるように移動する移動法か。

もしくはテレビのリモコンにも備わっているスキップ機能…


「そのスキルは短距離の瞬間移動か?」

「…よく分かったなお前…制御出来ねぇけどその通りだよ、あの時は無我夢中で使ったから…デタラメの方向に飛んだけど…」


原理や法則は分からないがアユムの想像とはそこまでかけ離れてないのかもしれない。

飛んでる最中で壁や地中に飛んだ際はどうなるのか、連続での使用は?様々な疑問が出てくるが…ある程度聞けたので本題に入る。


「リサ、この頼みに至ったまでの話の前に聞きたい…君のお父さんが家宝に魂乗っ取られたんだったよね?」

「あぁ、間違いない…あんな事父さんがする訳ない…」

「…その家宝ってどんな形?」


家宝に魂を乗っ取られたという話は突拍子もないが、事実だとしたら何かしらの方法で助ける場合を模索しなければならない。

もし剣や槍とかの場合、ダジから授けられたスキル『消滅』…神の力を行使するこのスキルなら魂やらのものを切り離しす事が出来るかもしれない。


「そうだな…私も始めて見たのは父さんが手に持った時だから…こう、変な形の剣の持つところと横に伸びてるような形で…」


そう言ってリサは当時の事を思い出してるのか、手を出してその形を思い出しながら同じ握り方を真似する。






「…え?」


リサは父親がその家宝とやらを持った時と同じポーズをしている。

そして何故その構え方を知っているのか分からないが、アユムはひとつの予想に辿り着く。


「銃…?!」


リサが構えたポーズは拳銃の発砲時の衝撃を抑えるものと酷似しており、そして何故この世界に銃があるのか…何故家宝とされてるのか。

とんでもない事に巻き込まれたかもしれない、アユムは嫌な予感を感じていた。

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