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文明開拓のすゝめ  作者: パル
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106話『謎の二人』

建物の上にいるのはトレンチコートの人物が1人と全身を黒の服で覆い頭も目の部分が僅かに開いてる黒服が1人、向かって来ているアユム達に気づき何か話しているのかお互いの顔を見合っている。


「一瞬だったからちゃんと見れなかったがあのモヤ出てる奴が殺しした奴だよな!」

「あぁ、もう1人は…協力者か?」

「…どっちにしても見逃す訳にはいかない」


身を屈ませ一気に上空へ飛んだユリは両手を前に出し何かを引き抜くように手を構える。


「『降ろしの儀、草薙剣』」


右手を振るうと眩い光と共に1本の剣が握られており…大きく剣を振るう。

その瞬間目に見える斬撃が飛んでいき道中ある屋根や壁を切り抜けながら謎の2人組のへと飛んでいく。

トレンチコートの人物は前に出てその右手を前に出し、横へ振るうと飛んでいた斬撃は空中で不可解な形で乱れ霧散してしまう。


「…簡単に対処されると私が弱く見えるから困る」

「んな事言ってる場合か!」


地面に着地したユリに合流して更に2人組へ距離を詰める、それに対してトレンチコートの人物は後方へ向かうようもう1人にジェスチャーしその場を離れようとする。


「逃がさねぇぜ!」


スキルとその身体能力でいつの間にか距離を詰めていたリサが太股に隠し持っていた短剣をホルダーから取り外し黒服へふりかざす。


「……」

「あぁ?!」


短剣が当たる寸前の所、黒服が両手を合わせた瞬間リサは『空へ飛んで』行った。

飛んでというよりもまるで上に重力があるように体が引っ張られるように上空へ向かって行くリサは驚愕しながらもスキルを使い地面方向へ飛び建物の壁に短剣を突き刺しどうにか留まる。


「クッソ!変な事しやがって!」

「リサ!」

「…スカート捲れてるから見ないようにね」

「そんな事言ってる場合じゃないよなぁ!?」


ようやく到着したユリとアユム、ユリはその身体能力で一気に飛び建物の上に向かったがアユムはそんな身体能力は無いが為階段状に氷を発生させ壁を登る。

ヒスイが近くにいないのもあり燃費が悪いが贅沢は言ってられない。


「…貴方を捕らえさせてもらう」

「…………」


リサと黒服がひと悶着している間にユリが剣を構えトレンチコートの人物と対峙する、どっちに加勢するか悩んでいたアユムだったがひとつ気がかりがあった。


「(異物の反応が無い…?)」


一瞬だが感じた異物の反応、それが今では全く感じず今までにない事に焦ってしまう。

同じ頭痛、間違いはないとは言い切れないが一瞬でも反応があるのなら調べる必要がある…その為今のアユムではユリの足を引っ張ってしまう事を考慮しトレンチコートの相手をユリへ任せ小競り合いをしているリサの方へ向かう。

黒服は短剣で耐えているリサに蹴りを繰り出すが片手で空に落ちないよう短剣を刺した建物の壁に張り付き、もう片方の手の短剣で近づいてこないよう牽制していた。


「『氷刀』」


あまり無駄遣いできない以上、慣れた薙刀は大き過ぎる。

その為薙刀の代わりに刀を作り出し黒服の背後から切りかかる、だが静かに近づいた訳ではないので足音で気付かれ距離を取られてしまう。


「あ、お…おいアユム!来ないで!見るな!」

「見てない見てない!」


原理は分からないがリサの体は上に、服などは下に引っ張られているのかスカートがとんでもない事になっているが緊急事態な為アユムは何もしてないで乗り切る。


「耐えてくれよリサ、すぐ終わらせる!」

「く、くそぉ…」


動けないリサには頼れない今、アユムだけで黒服を相手するしかない。

氷刀を構え黒服に向かって一気に駆け刀を振るうが軽い身のこなしで一振り一振りを丁寧に避けられてしまう、サリアと鍛錬でアユムもかなり腕が上がった筈だが現状の実力では厳しいようだった。


「………」

「なっ!?」


避けながら黒服は左手を構え…腕を振ると突然突風のような風が発生しアユムの服を肌を切り刻む。

鮮血が飛び散り両手で顔をガードするがあまり効果がない事に気づきアユムは全身に冷気を纏う、冷気の壁が風を通さず更に傷口が凍って簡単な止血にも成功する。


「今のは…魔法か…?それでも無詠唱で…」


昔にモルから聞いた詠唱はイメージを固める為のものでイメージがしっかり出来ているなら詠唱は必要ない…という話を思い出し相手がかなりの魔法使いである事に気づく。

また視界の端ではアユム達以上に激しい戦いが起きており眩い光と衝突音が響く。


「『降ろしの儀、ヤマタノオロチ』」


空中で自身の周囲に蛇のような体にドラゴンの頭を持つ8つの頭と尾を持つ大蛇を出現させ、トレンチコートの人物へ向け一斉に攻撃させる。

襲い掛かってくるヤマタノオロチに対しトレンチコートの人物は右手で何かを掴むように空を掴んだ瞬間、ヤマタノオロチの8つの頭が一箇所に集まり…トレンチコートの人物が手を握るように閉じた瞬間8つの首が千切れるようにバラバラになり空中で消える。


「…空間に大きな手を出現させる技か、その空間を操る技か…どっちかかな」

「………」

「…図星?貴方もあっちも小出しして様子見てるけど…私達相手に全力出さないのは愚策だよ」


ユリの持つ剣が神々しく光始めまるで大地を揺らすが如く周囲が揺れ始める、その異常さ異変にトレンチコートの人物は危機感を感じたのか一歩下がる…攻めようとした瞬間ユリは何処からか声が聞こえ始め兵士達が行動を始めたという事に気づく。


「…すぐにでも兵士も騎士団も来るよ、諦めた方がいい」

「………」


トレンチコートの人物は慌てる事もなく、ゆっくりと城内を向き…そして左手を左に大きく伸ばす。

突然の行動に攻撃を警戒したユリだが特に何かが起きる様子はない、疑問に思い左手の方向に目を動かすと黒服が空中に浮いており突然浮いた黒服を見て警戒しているアユムの姿があった。

そして黒服はトレンチコートの人物を見て…頷いて両手を広げる、右手と左手に緑と茶の光が集まるように凝縮する。


「あれは…まずい!リサ!」

「ば…ッ!こっち見んな!」


焦った表情でリサの方へ向かうアユムを見てユリは一瞬考え…黒服の方へと向かう、現状一番危険と思われる黒服とトレンチコートの人物を比較しての判断だったが判断が遅かった。

両手をゆっくりと合わせた瞬間、ユリは走っていた筈がいつの間にか地面に倒れていた。


「な……」


視線を向けるとリサは今度は風に吹き飛ばされているように横に、今度はアユムが上に向かって飛んでいきそうになっており建物の同じく壁がある場所に自身の右手を凍らせ張り付いていた。


「なんなんだよこれ!!!」

「分からねぇよ!」


どうにか耐えているがかなりギリギリのようだ、ユリ自体も謎の圧が上からありまるで重力が何十倍もかかっているようであった。

目を動かすとユリ達から離れている二人の姿があり逃げているのは明白だった。


「逃がすか…!『消滅』!」


左腕を構えトレンチコートの人物に向け消滅のスキルを行使する、だが消滅の攻撃が当たる前にトレンチコートの人物と黒服はまるで霧のように黒いモヤが発生し…風に流れたモヤの向こうには既に二人の姿は見当たらなくなっていた。

そして三人を襲っていた謎の現象も無くなり建物の上に着地したアユムは舌打ちをする。


「逃げられたか…」

「…そうだね」

「…おいアユムお前見たか」

「しつこいな…まぁ見t」


怪我人を出したが結局アユム達は捕まえることが出来ず取り逃がしてしまった、謎の二人組が何者なのか…何故一瞬でも異物の反応があったのか…アユムは痛む頬を氷で冷やしながら考えるのであった。

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