4-10 アルからのサプライズ
3年生になってひと月ほど過ぎた。
朝の教室のざわめきの中で、いつも通りに僕はアルを待っている、アルは時間にとても……いいかげんだ。 遅刻ギリギリの日も有れば、早くから来て「遅い!」と口をとがらせている日もある。
今日は、余裕のある時間なのに急ぎ足で教室に入って来て、真っすぐに姉上に向かって来て、姉上の手を取る。
「ねえ ザベス 君があのピンクウサギに”フレーミイ王子になれなれしい”と言って、突飛ばしたって噂があるんだけど? この手はそんなことしないよね?」
「おはようございます アルフレッド殿下」
僕は、ことさら丁寧に朝の挨拶をしながら困惑顔の姉上の手から アルの手をどける。
「あ! おはよう ビイ ザベス」
アルが肩を竦めてから 挨拶を返す
「おはようございます アルフレッド殿下。ええと ピンクウサギの事でしたら、わたくし個人的にあの方とお会いしたこともないけれど?」
「だよね? よくよく言っておいたよ」
アルは満足げに頷いているけれど、僕には看過できないな。
「で、アル その噂はどこから?」
「ああ ボクの護衛が耳にしたんだけど、ザベスがフレーミイ王子をめぐってピンクウサギと揉めてるって噂があるらしいよ?」
「わたくしが?」
「うん、護衛が言うにはさ、そんな人を虐めるような女性は僕の周りにはおけないけれど、ザベスがそんな事をしているのは見たこと無いってから変だなって――」
そこで予鈴がなり、その話は打ち切られた。
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「その噂は、ぼくも聞いたことあるよ。もちろん否定しといたけど」
昼食を取りながらフィルに噂の事を聞くと、あっさり肯定された。
「一体だれが流しているのかしらね?」
「その噂で誰が得をするのかって考えると…」
エウとユウは探偵気取りで
「ピンクウサギか ピンクウサギの保護者ヤナギ男爵の支持者かフレーミイ王子自身?」
「若しくは身分を超えた恋 に酔っている学生かな?」
フィルとアルはノリノリだ。
僕は楽しそうな彼らに水を差さない程度の小さい溜息をついた。
ヤナギ男爵とピンクウサギを取り込んで王家とつながりを持とうという者が居るのなら少し厄介かな? それとも『王子を取り合う令嬢の争いを見たのよ』って自慢げに話したい生徒の仕業かな?
後者のそんな大して悪意も無い小さな声の方が集まると厄介かもしれないな、以前、噂にひどい目にあいかけた僕は、噂に関してはちょっと過敏になっているのかもしれないけれど――
「あ!そうそう 忘れるところだった! 近々、ボク主催の茶話会を開こうと思うんだけど皆、 参加してくれるよね?」
アルの突然の提案に僕の思考が遮られた。
「「「「茶話会?」」」」
その場にいた全員の声が揃った。
「うん お別れ会を兼ねた茶話会」
「「「「お別れ?」」」」
「あ、言ってなかったね。ルバート王国の学校制度は8歳から12歳までの年少学校と、13歳から15歳の年中学校、16歳から18歳の年長学校あとは専門学校があるんだけどね 年長学校へ行くためには年中学校の卒業試験に合格しないとならないんだよね。だからきりがいいところ、ルバートの4の月の進級に併せて帰国するんだ」
アルの説明を聞きながら、全員が驚いて口を開けている。姉上、ほら!今こそ扇をポケットからだしてその口を隠して!エウとユウも!口元を隠す!!
冷静にそんなことを思うのは、驚きすぎて一周回っているからかもしれない。アルは楽しそうに驚く僕らを見回す。
「だから あと二か月かなあ……四の月にはルバートにいないとね」
その日のうちに、ルバード第三王子主催の茶話会が開催されるという知らせが全校にもたらされた。




