閑話 シュウマン ネイビー伯爵令息の場合 2/4
夢見帳を書いて 僕はベッドに戻る。
入ってきたメイドには 一日起こさないように言って、一日中ベッドから出なかった。
ユメに会ったからか僕は本当に、クタクタに疲れていて直ぐに眠れた。
僕の夢の世界は真っ暗じゃなくて ほんの少しだけ明るさがあった。
昨日ユメがドアを開けてくれたからだろうか?
足元は見えないけれど 目の前で自分の手を振れば 振っているのが分かる程度には明るいのだ。
だから今日の僕は、いつもより早く動けて白いドアを見つけることが出来た。
ドアをノックしようかとちょっと考えていたら 向うから バン!と大きく開いた。
僕の鼻先をドアがかすめた。
「あああ ビイ!驚いた!」
「こっちこそ びっくりしたよノックしてよ?」
「え? 外に出るのにノックする?」
あははは……僕は声を出して笑ってしまった
「ドアがあったら ぼくはどこかに入るドアだと思うのに ユメは
出るドアだと思うんだね?」
あははは……キョトンとしていたユメも笑い出した
笑いながら、ユメはドアをいっぱいに開いて、ドアが閉まらないようにそのドアに寄りかかった。
ドアの向こうは眩しくて何も見ることは出来ないけれど 僕の夢の中には光が広がった。
明るい中でドアに寄りかかって座るユメは僕よりも少し年上のように見えた。
「夢の中の友達なんて、面白いね。多分あたしたち 同じ時に寝てないとダメなんだよ」
そうか ユメは僕の友達なんだ。そう思うと僕の世界がまた少し明るくなった気がする。
「それに 会いたいって思わないとね」
友達、なんだから会いたいって思ってくれるよね?
僕の探るような視線の先で ユメがウンウンと頷いたのが分かって嬉しくなる。
「ねえ 言葉が通じるってことはシュウ君は日本人なの?髪も黒いし?」
「違うよ クレッシェンド王国 国民だよ」
「そんな国 知らないわよ?」
「にほん って国だって聞いたこと無いよ?」
「そんなはず 無いわよ! シュウ君はまだ小さいから知らないのよ」
「分かった。ルディに聞いてみる。父上にも聞いてみる。父上は何でも知っているんだからね」
「あたしも 調べてみる!」
「でも 明日は一日中寝てるのは無理かもしれない」
「そうか そうだよね…… あ クレッシェンド王国って事は、シュウ君、外国人かぁ、
あれ?そうか 瞳の色も黒じゃないのかな?」
ユメが僕の目を覗き込もうと前かがみになって、背中がドアから離れた。
そのはずみにドアが揺れて、ユメがドアの向こうに引き込まれて行き……
僕は目が覚めた。けれど、そのまま 眠ってしまった。
ユメに会った後の眠りは 疲れすぎているのか真っ暗な、夢の世界に行くことすらない眠りだ。
”ユメにあう。少し明るい世界でドアが見つけやすい。ユメにとっては外に出るドア。僕にとってはどこかに入るドア。ユメはにほんじん”
次に喉が渇いて目が覚めた時に、思い出しながら 夢見帳を書いた。
***
にほん、については父に聞いたけれど、父もそして、ルディも知らなかった。
僕の夢は 明るくなった。
でも 探してもドアは見つからなくてユメには会えなくて とうとう僕は七歳になった。
ユメに会えるかもしれない事や 夢の世界を見る事が楽しみでちゃんと眠れるようになった。
ユメには会えなくても 両親やルディが夢に出てきたり、夢の中で野原や山を歩いていることもある。
それを夢見帳に書くと 両親もルディも満足げに笑う。
僕は夕焼けの中で池のほとりに居た。
池の中を覗き込んだら 僕の顔がはっきりと映っていた。
それから もう一つの顔が並んで映っていて あれ?って横を見たら ユメが居た。
なんだか、ユメ、大きくなっている気がするけど、僕ばかり小さいままなのは悔しい気がして
言わなかった。
「ひっさしぶり!」
「そうだね 今日はドアじゃないの?」
「うん 気が付いたら池があって 覗き込んだら 横にシュウが居た」
ユメも同じような感じらしい
「今日は いいこと教えてあげる」
「何?」
「クレッシェンド王国って見つけたよ」




