3-37 父上とルディが僕の寝室に夢見の事を確認しに来たって話
食事が終わると、また当然の様にエディが僕を抱いて部屋に帰って、ベッドに戻した。
もう!どうなってるの?
僕はすっかり元気で、誰も居ない時には、一人で歩いてトイレにだって行ったし、居室の机で書き物だってしたのに!
ぷんすか!ベッドの上で憤慨していると、今度は父上とルディがやって来た。
「ビイ、少しだけいいかな?君が見た夢の話をもう一度教えて欲しいんだ」
「夢見帳を取ってきていいですか?」
「私が、」
「僕が行くよ」
僕はルディが言うのを制して、さっさとベッドから下り、居室の机の引き出しから夢見帳を持ってくる
『王立学園の講堂での卒業パーティ。黒いドレスのエリザベスとフレーミイ王子が対峙している。
王子がエリックに命じて 嗤うエリザベスを打ち据えようとする。 (全て 無音)』
父上とルディが僕の夢見帳を確認して 頷きあっている。
「不思議な夢、音が何もしない夢だったんです。言葉も物音もしない。
それから なぜか姉う、エリザベスが黒いドレスだったり、エリックが帯刀していたり?
ありえない事が沢山起きていました」
書ききれていない部分を僕は補足する
「ビイは ”守れましたか?”って言っていたけど?」
「あ 僕、打たれそうになったエリザベスの前に飛び降りて、エリックに胸を突かれたんです」
「飛び降りた?」
父上の眉根が寄る、少し怒っている?
「ええ たとえ夢のエリザベスでも、こんなの予知にはしたくないって思って」
「なるほど……」
僕達のやり取りを見ていたルディが夢見帳を閉じる
「おそらく、夢のエリザベス様は王子の関心を引こうとわざわざ、黒いドレスを着たのでしょうね
私や アリス クレアでもいい、夢のエリザベス様のお側に居れば そのようなドレスを着せるようなことは決してさせなかったでしょうに……」
ルディにとっても 夢のエリザベスと姉上はどうしても重なるのだろう辛そうな顔をしている。
無関心よりも、憎悪でもいいから王子に興味を持ってほしかったのかな。可哀そうなエリザベス。
ルディがサイドテーブルにいつもの紙を乗せて少し考えてから、僕の夢見を書き込んだ。
父上もそれを確認して ルディと頷きあう。
「これが『運命の支配者』が考えるクライマックス、なのかもしれない」
「僕は、エリザベスを守れなかったのでしょうか?」
「ビイ、大丈夫、君の想いは届いているよ」
無音の、ありえない事ばかりの夢見を僕は理解できないでいる。
不安が顔に出ていたのか、父上が僕の頭をポンポンと撫でる。
いつもなら、それですっかり安心出来るのに、今日の僕の心の中のモヤモヤは、ちっとも消えてくれなかった。
*****
その翌日、家族そろって食事をとっている時に父上からショッキングな知らせがあった。
「グリーン公爵令嬢がフレーミイ王子の婚約者候補から外れたよ」
何気ない話の様に父上がパンをちぎりながら言う。
「まだ婚約者候補だったからね、グリーン公爵家の方からの辞退の申し出が承諾されたらしい。
御令嬢は在学中ずっと王立学園の温室で薬草の研究をされていて、植物の豊富な南部の王立学園で教員補助員をしながらその研究を続けたいと以前から希望されていてね、王家もフレーミイ王子もそれを応援することになったらしい」
「まあ 王立学園の温室がずいぶん立派になったと思ったらグリーン公爵令嬢の研究の為だったのね」
母上は何やら腑に落ちた、という顔で頷く
「グリーン公爵家といえば自然科学や薬草学に造詣が深い家系だから 研究を続けるのがキャサリン様ご希望ならそれもいいのでしょうね」
僕は頷きながら、フィルから聞いた卒業パーティの話を思い出す。
「そうですわね 王家に、フレーミイ王子に嫁ぐことが幸せとは限りませんものね」
姉上は自分を納得させるかのように言う
「君たちにも夢中になれるモノが見つかるといいなあ」
「それから 夢中になれるような素敵なお相手もね」
「そうですね」
「そうですわね」
父上と母上の言葉に僕は相槌をうって 微笑んだけれど、母上の言葉に僕の胸はまたちりりと痛んで、同じように相槌をうった姉上がどんな顔をしているのかを見る事が出来なかった。
ありがとうございます。3章終了です。シュウマンさんの話を挟んで最終章に入ります。本日はアト一話投稿予定です。




