3-36 姉上と父上にフィルから聞いたことを話したって話
フィルとリックが帰り、静かになった部屋で僕は眠ってしまったようだ。
「ビイ? ビイ?」
呼ばれたような気がして目を開けたら、姉上が僕を覗き込んでいた。
僕は起き上がりながら、”あの時"の事を思い出した。
「姉上、呼ばれても隠れ場所には行きませんよ 謹慎はこりごりです」
「あら、残念! でもわたくしたち大きくなったから あそこには入れないわよ」
「それは良かった!」
二人でクスクスと笑って、それから僕は真面目な顔になる。
「ピンクウサギが卒業式でまた事件を起こしたんだって、聞きたい?」
「フィルの情報?」
「もう、みんなが見ている前で起きたことらしいよ」
「聞きたいわ」
姉上が僕の隣に座り直す。と、そこへまたノックの音がして、父上が入って来た。
「おや、ザベスも居たんだね。ビイを庭に誘い出すつもりかな?」
父上も”あの時”の事を思い出したらしい、と姉上と顔を見合わせてまた笑う。
そんな僕達を見て 父上は何があったのかわからない、と肩を竦める。
「お父様も ピンクウサギが卒業式で起こした事件お聞きになりませんこと?」
「ほう ぜひ聞きたいね」
リックとフィルが使っていた椅子に二人が座る。
姉上はさっきまで僕の横に座っていたから、そこが軽くなって、姉上の温もりが行ってしまって
ちょっと寂しい。
「えーと ファーストダンスをフレーミイ王子とグリーン公爵令嬢が踊り終わったら ピンクウサギが
……(中略)…… しかも、ピンクウサギと王子が講堂の廊下で身を寄せ合っていたのを何人もの生徒が目撃している、らしいんです」
「まあ!キャサリン様がお気の毒ですわ」
「王子はもうグリーン公爵令嬢よりも、そのピンクウサギの方が大事って事なのかな?」
父上が難しい顏をして呟いている。
「フィルが言うには、この事件で王子の評判はがた落ち、らしいですよ」
「まあ そうなるだろうねえ?
でも、”身分を超えた愛”だっけ?を応援していた生徒達も居たんだろう?」
「身分はどうあれ、 お相手が居る殿方に言い寄る方はわたくしは好きになれませんわ」
そこにまた ノックの音がして今度はエディだ
「ビイ様 お夕食はこちらで? それとも食堂で?」
「僕はすっかり元気なんだから食堂へ行くよ!」
「じゃあ ザベス、僕達も食堂へ行こうか?」
「はい お父様」
「では ビイ様」
エディが上掛けをどけてくれる、今日のエディは過保護すぎるでしょ!
「よっと!」
エディの声と共に、僕の身体が突然持ち上がって、エディにお姫様抱っこされている。
「ちょ!エディ 何するの!!」
「ビイ様 もう大きいんだから暴れると危ないから、大人しくして下さい」
エディは下ろしてくれそうもないから、せめて負担を少なくしようとエディの首に腕を回す。
姉上が僕を見上げて、少し眉を寄せる。
「ビイ 寒くないかしら?」
「大丈夫です」
むしろ、暑いです!姉上の前でエディにお姫様抱っこされるなんて!!
「エディ、すまないね 僕ではもうビイを抱いて運ぶのは無理だからね」
「お任せください!鍛えてますから」
僕にとっては思いがけない状態だけれど、父上と姉上にとっては想定内だったらしい。
僕だけが、恥ずかしがって、顔が赤くなっているのが自分でも分かって、それがまた 恥ずかしい……
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「やっぱり 家族そろっての食事は美味しいわあ」
母上は上機嫌だ
「ビイも元気になったし、これからは毎日家族で食事がとれるね」
「父上?」
「お父様?」
姉上も僕も期待を込めた目で父上に問う
「もう 領地でのトラブルは片が付いたからね。明日にはその報告をして、また城の仕事に追われることにするよ」
姉上と僕は、嬉しさのあまり立ち上がりそうになるけれど、ルディの小さな咳払いが聞こえて 慌てて
お尻を椅子にくっつけた。
thanks 明日は2話投稿予定です




