3-28 学園祭後夜祭でピンクウサギが起こした事件の話
今年の後夜祭も、去年同様アルのお陰でつつがなく挨拶が済んだ。
もっとも、グリーン公爵令嬢を伴いながらもフレーミイ王子は心ここにあらずと言った様子だったから、アルがいなくても声をかけられる様な事は無かったかもしれないけれどね。
挨拶が済むのを待っていてくれた エウ レウ フィル アルと一緒に軽食を楽しむことにする。
「ぼくの家では食べられない様なものが沢山あるからね」
「「フィル! お行儀が悪いですわよ」」
フィルがおどけて腕まくりをして双子に怒られているのを見て、いつもの通りと苦笑する。
「去年のアレ、無いなあ」
「アレとは、どのようなモノでしょうか?」
キョロキョロしながら歩くアルに姉上が問う
「ほら アレだよお 白くて食べると口の中でホワンって消えちゃう アレ」
「「お菓子ですか?」」
「そう、このぐらいの」
アルが親指と人差し指でマルを作って大きさを表そうとしたその時
「それは 婚約者候補に対して失礼ではありませんか?」
ビビアの声が響き 何事かとその場にいる者の視線が声の方に注がれる。
もう声の方には人垣ができ、何が起こっているのかはここからは分からない。……行くべきか?
「ねえ ビイ お菓子のテーブルってどっち?」
アルは そんな騒ぎは意に介さない、美味しかった「アレ」にしか興味はないらしい。
僕も姉上を危険にさらす気は無い。
「アル お菓子のあるテーブルあっちみたいだね。姉上も一緒に来てくれる?」
「でも ビビア様はだいじょうぶかしら?」
「リックが付いているし、それに ほら 好奇心の塊の双子もフィルもいないって事は後で話を聞けるって事でしょ?」
一緒に居たはずのエウユウもフィルも居ないのは 声の方に行ったのだろう。
「そうそうお菓子を優先させようよ!あの白いの何処かな?」
アルが子供の様に 僕と姉上の手を引っ張る
「それに騒ぎが起きている今、アルを一人にする訳にも騒ぎの方に連れて行く訳にもいかないでしょ?」
「まあ、それは、そうだけれど……」
姉上はまだビビアの事が気になるようだったけれど、隣国の王子に何かあってはいけないと言う正論の前に折れた。
デザートのテーブルは人垣とは反対にある。
僕達は、野次馬に加わりに行く生徒たちの流れに逆らいながら歩く。
「ははは みんな野次馬根性丸出し、貴族も平民も一緒だね?」
「せめて 情報収集って言ってくださいませ」
アルが楽しそうに笑うのを姉上が窘める
「えええ だって痴話ゲンカでしょ?」
「ちわげんかって……」
聞きなれない言葉に姉上が絶句するのが、可愛らしい……
「あ!あった! そう これこれ! 美味しいよネ」
どこからか『ルバードは自由という意味だそうですね』というクレアの声が聞こえたような気がした。
テーブルの周りにはそれなりに生徒の姿もあって「何よりも食い気優先」という人は 平民でも貴族でもいるんだなっと変な所で感心してしまう。
「あ!いたいた 探しちゃったよ」
「「ほら フィル やっぱりこちらだったわよ」」
お茶のテーブルにいる僕達の所にフィルと エウ ユウが来た
「で、どうなってたの?」
来る早々にアルが話を聞きたがる。
「ピンクウサギがさ」
「ピンクウサギって何かしら?」
「姉上 とりあえずフィルの話を聞こうよ」
フィルの第一声に姉上が疑問を挟むけれど僕が先を促す。
「ピンクウサギがさ、挨拶の順番飛び越して ”お兄さん 王子様だったの?”って大声だして
フレーミイ王子に抱き着いたんだって」
「ええ?」
「抱きついた?」
「ふうん?」
姉上 僕 アルが同時に言うのにフィルとエウユウがまとめて頷きで応え、お茶を飲み終わったエウが続きを話す。
「それでね キャサリン様が『公衆の面前で殿方に抱き着くとは淑女のすることでは無い』ってピンクウサギを叱ったんだって。」
ユウが続きを引き取る
「そしたらね、フレーミイ王子が『公爵令嬢ともあろう者がこんな些末な事に目くじらを立てるとは失望した』と言ってキャサリン様の方を咎めたんですって。だからビビア様が『婚約者候補に対して あまりに失礼ではありませんか?』って言った、という訳よ」
「いずれにしても咎められるのはそのピンクウサギであって キャサリン様ではないわ」
姉上もビビアと同じ意見の様だ。もちろん 僕達も。
アルはビイが大好きです。




