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3-27 学園祭でアルが、そこにいる皆に発泡水を奢った話

「おーい リック、 アルが果実水を奢る約束だったんだけど 発泡水は違うっていうんだよどう思う?」


僕はリックに声をかけたのに、一緒に居た生徒たちが面白がって奢るべきだ とかいや奢らなくていいとか ちょっと騒ぎになった。

アルはその騒ぎをとても面白そうに見ていたけれど、騒ぎが大きくなってきたからか手を上げて

叫んだ。


「ここに居る人、全員に発泡水を奢っちゃう!」


それを聞いて その場に居た生徒たちがどよめく。


「おおおお!!!」

「やった!」

「お前 おごらなくてもいいって言ってただろ?」

「発泡水 初めて!」

「で あれ誰なんだ?」


アルはもちろん気が付いていないけれど、これで一緒に発泡水を飲んだ僕達って全員すごく近い関係になっちゃうじゃないの?リックに目で問うと


「流石にそこまでは言わないよ。 茶会とか参加できなくなるだろ? でも みんな喜んでるぜ。

 今ここに居る奴ら、運が良かったな」


発泡水のグラスが、回ってきた


「アルフレッド殿下に乾杯!」


ビビア嬢の響く声が聞こえて全員がグラスを上げた。


この時になって、それまで自分たちが「奢れ」と言っていたのが アルフレッド王子だとやっと気が付いた生徒達は今更ながら慌てたり 騒いだり アルにお礼を言いに来たりとまた大騒ぎになったけれどアルはとても楽しそうだ。


ひとしきり騒いで 僕とアルは武の一族と別れた。




「ねえ 思い出のダンスホールへ行かない?」


アルにからかうように誘われて 講堂の方へ足を向けると今年も音楽が聞こえてくる。

去年と同じように窓からのぞいてみると 見えるかと思っていたフレーミイ王子とグリーン公爵令嬢の姿は無く、フレデリック王子とグリーン公爵令嬢が踊っていた。


もちろん このお二人のダンスも非の打ちどころはないんだけれど、僕はフレーミイ王子とグリーン公爵令嬢のきちんとした、息の揃ったダンスが好きだったから、見られなくて ちょっと残念。


窓から離れると 横に居たはずのアルが居ない。


「アル?」


キョロキョロしていると 講堂の裏の方から現れた


「先客あり でした。 残念。なあ 中で踊らない? ビイ上手になったし ボクせっかくだからグリーン公爵令嬢とも踊りたいなあ」

「はいはい ちょっとだけだよ」


うん?アルはなんで 今グリーン公爵令嬢が中に居るって知っているんだ?


僕とアルが会場に入ると、何故か悲鳴が上がる。今日は僕はアルとは踊りませんからね。


アルがグリーン公爵令嬢と踊っている。

フレーミイ王子と踊っている時の様な正確さは無いけれど、アルの癖のないダンスは緩やかでグリーン公爵令嬢もリラックスしているように見える。


あれ?姉上の声がする。

見回すと姉上が踊っている。相手は…… 父上だ!

父上のステップはちょっといい加減で、難しいステップなんて踏まないで勝手に簡単なステップに変えてしまう。

だけど、それが父上らしくてイイんだよなぁ。今の父上は、娘との時間を楽しんでいる父親にしか見えない。

実際、そうなんだけどさ……


僕と目があった父上が曲の終わりに僕の所に姉上を連れて来て、次の曲を姉上と踊る。

最近、クレアやエディが厳しいから姉上とこんなに接近すると…ドキドキする。

大きなターンの後でクイっと姉上を抱き寄せる。


あれ? 僕大きくなった? 姉上の顔がいつもよりも下にある気がする…

おっと動揺して姉上の足を踏みそうになるけれど 姉上が上手に避けてくれた。


「ビイ 聞いたわよ。アルと武の一族と楽しんでいたんですって?」

「アル、とても楽しそうだったよ」


「ビイとアルが兄弟の様だったというのも聞いたわ」

「ああ 髪色が同じで同じ服ですからね あ もしかして羨ましいですか?」


今度はキチンと上手にターンする


「そんなことはないわよ ビイとわたくしは本当の姉弟ですもの」

「ホントウノ、キョウダイ…」


あれ?嬉しいはずの言葉なのに胸がキリリと痛いのはなんでだろう?



姉上から視線を外すと、フレーミイ王子とグリーン公爵令嬢が踊っているのが目に入る。


お二人は身を寄せ合っているのに、正確なステップは相変わらずなのに、決してステップを踏み間違えたりはしないのに、なんだか違和感がある。


以前の、二人で同じ方向を目指して正確にステップを踏む端正なダンスじゃない。ただの正確なダンスでしかない。


僕にとってフレーミイ王子の事なんてどうでもいいはずなのに、寂しい気持ちになるのはなぜなんだろう。 



thanks 評価、ブクマありがとうございます。

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