3-26 二年生の学園祭もアルと過ごしているって話
今年の学園祭は、思いがけないゲストに学園内が湧いた。
第一王子のフレデリック王子が、なんと婚約者を伴って学園祭にいらっしゃったのだ。
婚約者のエリーゼ・オレンジ公爵令嬢は南部の王立学園の卒業生だから、この機会にご自分の母校を見せたいと連れていらしたらしい。
お忍び、という事だけれど金髪碧眼でフレーミイ王子によく似た男性が、オレンジの髪の、一目で上等なものだと判るドレスを着た女性を伴っているのだから”第一王子と婚約者”だとすぐに分かってしまう。
護衛は見えるところにはいないけれど、すれ違う学生たちはペコリと頭を下げてすれ違っていく、それに軽く手を振って応えるお二人はとても仲が良さそうに見える。
そして その兄と共に学園祭を回っているフレーミイ王子の傍らにはグリーン公爵令嬢の姿が有る。キャサリン様はあと半年で卒業だから公爵家としては関係を周囲に知らしめたい、という思惑もあるのかな?
こちらのお二人も、僕から見たらお似合いなんだけどな。
「ねえ フレデリック殿下とエリーゼ様も フレーミイ殿下とキャサリン様もお似合いだよね?」
外から見えないように 窓枠に張り付くようにして外を見ている僕は 同じように隣の窓に張り付いているアルに声をかける。
「ああ ボクはこの前フレデリック殿下とエリーゼ嬢のお茶会に招待されたけれど お二人とも聡明で優しいから お似合いだと思うな」
今年の学園祭も僕とアルは三階談話室の窓から学園の前庭を眺めている。
でも王族を上から見下ろしているなんて、あまりヨロシクないのは判るから、外から見えないよう注意している。
今年は姉上も一緒に回りたいと言っていたけれど クレアに渋い顔をされて諦めたらしい。姉上ももう、15歳だから軽々しく男子生徒と歩いているのは”はしたない”んだってさ。
「リリという娘の話は聞いている?」
窓枠からそっと離れたアルが僕に”こっちこいよ”と手招きする
「リリ?」
僕も 窓枠から注意深く離れてアルのそばに行く
「今年入った、ピンクブロンドの一年生」
ああ アルは流石に一緒に寄り道でカフェに行ってなかったな
「ふうん?」
アルの方に顔を向けて先を促す
「気にならない?」
「全く 興味ないなあ」
「なんでも平民出身で面白いらしいよ?」
「アル ケンカ売ってる? まあ その辺に潜んでる護衛さんが怖いから買わないけどさ」
「ん? なんでそうなるの?」
「そうか アルは知らないんだっけ?
アルは、僕が養子で、伯爵家でどんな風に暮らしてるか興味持ってたでしょ?
僕の生家の男爵家って貴族名鑑では分からないだろうけど、けっこう貧しかったからさ
王都の平民よりもよっぽど平民の暮らし知ってると思うよ」
「あ 悪かった」
アルが頭こそ下げないけれど 悪い事をしたと言う顔をしている。
「いいよ。 あの頃だって僕は楽しかったし幸せだったから」
アルが珍しく心配げな顔をまだ僕に向けているのがなんだか可笑しくて笑ってしまう
「大丈夫だよ。今も幸せだしね
色々あったからさ、過剰反応しちゃったかもね こっちこそ ごめん。
僕はクレッシェンドの貴族なんだからイチイチ反応しちゃ駄目だよね。平常心!平常心!!」
僕は少しふざけて見せてから きっぱりと言う
「まあ とにかくそんなこんなでリリって子には近づきたくない」
「うん わかった。
それにしてもクレッシェンドの貴族は大変だね、いつでも”おすまし”だもんなあ」
とりあえず アルが納得したようでほっとする。あれ?もしかして これも『運命の支配者』の仕業なのか?アルを使って 僕や姉上とリリの接点を作る?とか?
「ビイ なあ 機嫌直して! もうリリの話はしないからさ」
僕が考え込んだのをまだ怒っていると思ったのかアルが僕の機嫌を取って来る
「じゃあさ 今日の果実水はみんなアルの奢り!」
「うん 分かった。任せて! ボクこれでも王族だからねお金持ちなんだ」
「やった! 行こう!!」
階段を二段飛ばしに降りて 約束通りにアルにご馳走してもらおうと飲み物を求めに行く。
流行っているのか発泡水があった。
「あ!これ 最近 流行ってるらしいよ これ奢って」
「ボクは果実水しか奢らないよ~」
「でもさ レモンはいってるよ?奢ってよ!」
ふざけていたら リックとビビア嬢と武の一族が通りかかる。
些細なことで男子が盛り上がれるのは いずこも同じ?




