閑話 ビイのこと エリザベス目線(もうすぐ二年生)上
学年切替の休日のお話をザベス視点で……
寒いのに庭の方から剣術の稽古をしている声が聞こえてきます。
学校が休みに入ったと言うのにビイとエディは毎日 剣術の稽古を欠かさないのです。
「姉上 見て! 来年は上級クラスだよ」
先週、二年生の剣術の授業のクラス分け表を自慢げに持ってきたビイの嬉しそうな顔を思い出すと、わたくしの顔まで綻んでしまいます。
あ! 上級クラスに上がったお祝いをしていないわね。これから、そのお祝いのお茶会をしましょう。
「クレア! ビイたちの稽古が終わったら、エディやクレアも一緒にお茶にしましょう」
「私共もですか?」
「そうよ 今日はビイが上級クラスに入ったお祝いのお茶会にしましょう。エディは剣術の先生だし、クレアは…私達のオネエサンだから、当然、参加よ!」
エディの恋人だからと言おうかと思ったけれど、そんなことを言ったらクレアは照れて怒ってしまいそうですから、今日は止めておきますわね。ふふふ……
「畏まりました では テラスの方にお支度をいたしますね。ベリーのタルトがあると良いのですが…」
ほらねオネエサンでも、クレアったら顔を赤くしているもの。
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さて わたくしはビイたちを探しに行きましょう。大き目のショールを羽織って、庭に出ます。
ふと、一年前 ビイの剣術の授業のクラス分け表を見た時の事を思い出しました。
”伯爵令息として恥ずかしくないように”と普段、努力を惜しまないビイなのに、一年生の剣術のクラスは初心者クラスでした。
「授業が始まる前に、なぜリックやエディに教わらなかったのかしら?」
ただ単に疑問に思って聞いたのだけれどビイには責めているように聞こえたのでしょう。
「姉上に恥ずかしい思いをさせちゃう?」
不安げにビイの濃紺の瞳が揺れました。
ビイはいつも”姉上”の事ばかり考えているのです。
「ビイは、どう思っているのかしら?」
「僕自身が 剣を持つのは学校の授業が始まってからって決めてたから、 僕はいいんだ。
でも姉上は剣が出来ない弟は恥ずかしい?」
「ビイの事 恥ずかしがる訳ないでしょ?」
ビイ自身がそれで良いと思っているのなら それで良いのです。
ビイは 何でも出来るように見えます。勉強も所作も伯爵家令息として遜色ありません。
それは”出来るようになるまで”努力するからなのをわたくしはいつも見ているから知っています。
それなのに、なぜ剣術に限っては学園の授業が始まるまで触る事さえしなかったのか?
なんだかビイらしくなくて不思議でした。
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「あら この間はこの辺りに居たと思ったのだけど?」
この前、二人が剣術の稽古をしていた池の近くに来ましたが今日はこちらには居ないようです。
でも 声がしたのはこの方向だと思うのです。
もう少し奥の方から声がするようです。果樹園の方かしら?
果樹園はビイが来るまではわが家にはありませんでした。
ビイが「木になってる果物を見たことがない」と言ったわたくしの為にお父様にお願いしてくれたのです。
もう10年も前になるんだわ。
父上に「ザベスの弟が見つかったよ!もうすぐ帰って来る」そう言われた時から、ずっと帰って来るのを楽しみに待っていた弟。
ルディに抱かれて馬車から降りた彼が、深く下げていた顔を上げた時、流れた銀の髪がとても綺麗で わたくしと同じ濃紺の瞳の光が強くて、わたくしは一目で彼を好きになってしまったのです。
初めての場所に不安だったのか涙を流すビイの手を握りながら、守ってあげよう、優しくしよう、わたくしはお姉さんだから、そう思いました。
それなのに、その可愛い弟にお父様とお母さまが夢中になり、弟が両親に懐いたのを見たら わたくしは両方に嫉妬してしまった。
父上と話し合い、ビイがこの家から居なくなるかもしれないと言われた時は悲しみと後悔で泣きました。
ビイに謝ろうと思ったわたくしは、ビイを秘密の場所へとつれだし、そして 使用人が言っているビイの悪口をビイ本人に聞かせる事になってしまった。
ビイを傷つけた事を許さない ビイを守らなくちゃ そう思ったのに……
何があったのかは教えて貰えなかったけれど お父様に抱かれて食堂に現れたビイは手や首に包帯を巻いて 綺麗な銀の髪がところどころ引きちぎったようになっていましたた。
わたくしは ビイを守れなかったのです。
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