3-20 夏季休暇が来たのに、父上はお忙しい様です
学園祭が終わり 数日が過ぎれば夏季休暇だ
今年の夏季休暇には父上のお供で北の領地へ視察に行く計画を立てていた。
母上や姉上も一緒で、家族そろっての旅行なんて初めてだから楽しみにしていたのだけれど……。
明日出かけると言う日に 父上が申し訳なさそうに言った。
「すまないけれど 北の領地の視察は次の機会にしよう」
西に位置する夢見の家系の子爵が亡くなったのだ。
悪い事は続くというのか 父上が東から帰ってきた日に、北の男爵家で事故があったと知らせが有り父上は翌日には北へ向かった。
北の男爵家と聞いたときはドキリとしたけれど、アイスブルーでは無いと分かった時には、事故に遇った家には申し訳ないと思いながらも胸をなでおろした。
北方から帰って来てからも、今度は城での仕事が溜まってしまっているらしく 早い時間から登城し 帰りも遅いので、食事を一緒に取ることも出来なくなった。
帰宅時の挨拶だけは 辛うじて出来ているけれど「ただいま」と笑う顔は、いつもの笑顔ではなくとても疲れて見える。
そして ここ二日程、父上に会っていない。寝室で眠ったままだそうだ。
母上が言うには 明日の朝食は一緒に食べられるだろうという事だけれど……
両親の部屋の前をうろうろしていたら、エディが来た。
「ビイ様 ここでウロウロしていてもしょうがないですよ。旦那様はご病気ではないから大丈夫です。ああ それに領地の視察なんて 学校を卒業すれば嫌でもしなくちゃならないんですから急ぐことはないのです。
それよりも 剣の稽古をしましょう。二年生には上級クラスに入って頂きますよ!」
エディに言われて 庭でエディと剣の稽古をする。
いつもは ちっとも褒めてくれないエディが今日はやたらと褒めてくれる。僕を元気づけようとしてくれているのかな?
ちょっと元気が出て来た、身体を動かすのはいいのかもね。
そして 初めて、まぐれだろうけれどエディから一本取った!!
うん 僕は褒められて伸びるタイプなんだな。
***
しばらくすると、父上の仕事も落ち着いて来たらしく家族で朝夕を一緒に過ごせるようになった。
そして僕の誕生日が来て。僕は14歳になった。
僕は例年の様に 屋敷中の人にお祝いしてもらって、家族からプレゼントをもらって、ケーキのロウソクをいつものお願いをしながら吹き消した。
そして 好きな人たちと過ごせる幸せを嚙みしめながら眠った。
その翌日、僕は父上の執務室に呼ばれた。
いつものように 執務室のソファに父上と並んで座り、父上の斜め後ろにはルディが立っている。
「ビイ 大事な話をするよ。 ネイビー伯爵家に連なる夢見の家系は、当面、活動を中止する」
「え?」
思いもしなかった言葉に父上を見つめる
「二か月前、西のマリンブルー子爵が亡くなったのは知っているね。」
「はい ちょうど夏季休暇に入る前日に亡くなられたんでしたよね?」
父上が頷いて続ける
「優秀な夢見でも、自分の死は分からないのだと残念に思ったのだが、亡くなった状況があまりにも偶然が重なりすぎている。
子爵はいつものように領地の見回り中、飛び出してきた犬に馬が驚いて立ち上がった。その日に限って鞍の装着が悪くて鞍ごと落馬した、そこに 偶然大きな石があって頭を打った。鞍はいつもなら自分でつけるのだが その日はたまたま 使用人が着けた鞍をあまり確認しないで乗ってしまったらしい。
偶然が重ならなければ、一つでもずれていれば 死に至る事はなかっただろうにと『運命の支配者』の未来から退場させられたのでは。という者たちも居る。」
「『運命の支配者』ですか?」
思わず僕は呟く。自分で作った未来を実現させるために人の命でさえ奪う”神”?父上は頷いて続ける
「そして、北の男爵家の事故だ。
こちらは ウサギの養殖地の拡大の為に少し山を削ったのだが、その削った土の山が大雨で崩れて、男爵家の建物を直撃した。少しずれれば 庭に土の山が出来ただけで済んだのに家が大破してしまった。幸いけが人は出なかったけれどね。
二件続けての出来事に、夢見の家系の重鎮の中に、これらの出来事は『運命の支配者』による警告ではないか、と言いだす者が出てきた。
神でもある『運命の支配者』は われわれ夢見の家系が「自分が作った未来を変える事」を不快に思っている、という訳だ」
父上が忙しかったのは、夢見の家系の長として、調整役としての仕事があったのだと思い当たる。
「夢見の精査に関わっている者達との協議 それから僕のユメの判断も鑑みて、夢見の家系ネイビー伯爵家は当面『運命の支配者』の未来を静観する、という結論に達した。」
え?
thanks
夢見の伯爵家、「運命の支配者」に屈する?




