3-18 ダンス ダンス ダンス
二人で窓からのぞいてみると、フレーミイ王子が踊っていた。お相手は婚約者候補と言われているグリーン公爵令嬢、簡単な曲でもやっぱり上手下手は分かるんだなあ。
ダンスのレッスンのお手本の様、違うなダンスの教師よりも正確だ、息もピッタリなのは普段から一緒にいるからなのかな?
二人とも 目指しているのは”正確さ”同じ曲を明日踊っても 同じところで同じステップを踏むのだろう。
そして、その正確さを二人とも楽しんでいるのが伝わって来る。
ザベスが邪魔をする事も無くなったんだから この二人くっついてくれればいいのにな。
慣例としては王子が婚約者を決定・発表するのは卒業後、成人してからだけれど もう婚約者候補じゃなくて婚約者に決めてしまえばいいのに――
「ねえ ボクと踊ってよ?」
「は?」
踊る二人を見ながら考え事をしていた僕の思考をアルが遮る。
「ボク 女性パートも得意なんだよね」
「はああ??」
アルが何を言っているのかが理解できない。
踊りに行こう、じゃなくて 踊ってよ?女性パート?誰が?アルが?
「でも、ここじゃ目立っちゃうからなあ」
アルは何を探しているのかキョロキョロしている。
「あ!こっちこっち」
なんでアル こんな場所知っているの?
講堂の裏側には、なんの為なのかちょっとした空間があった。
「わあ やっぱりあった! ビイ 踊ろう!」
アルは”女性パート”と言っていたクセに強引に僕の手を取る。こんな強引な女性パートナーはいません!でも、この強引な王子様に請われたら結局は断れないんだよな。
講堂から聞こえてくる音楽に合わせて、僕とアルは踊る。
自分で言った通り、アルの女性パートは完璧で、授業で組む女生徒よりもよほど上手で踊りやすい。
「アル、お上手ですね!」
「今日は簡単な曲ばかりだしね」
「それでも 僕は自分のパートだけでも必死です」
チラリチラリと足元を見ながら踊る僕に対して アルはお喋りをする余裕がある
「基本的な曲だけだよ。ルバートの王宮では兄さまたちのダンスの練習相手していたからね。
ナイショだけど、今の王太子はビビと同じくらい下手だったからさ、それが外に漏れるのをお母さまが心配してさあ」
さも僕のリードの様にアルがクルリと回る
「ダンスの上手な二番目の兄さまが王太子のお相手で女性パートを踊って練習したんだって。
その流れでボクも女性パートを先に覚えて 二番目の兄さまのダンスのお相手――イタ!」
「すみません!」
「よく これで上級クラスにいるな?」
まあ、学園に入る前から一応エディ達や姉上と練習してましたから、は言わないでおこう。
「相手が 姉上じゃなくてよかったあ」
「は?」
「だって 踏んでも靴、丈夫そうだし」
今度の曲は ちょっとステップが難しい、それに話していたら音楽が聴きとりにくい
「え? イタ!」
「ちょっとダメだ もう、アル 黙って!」
「イテ!」
男の子はケンカすると仲良くなるってエディが言っていたけれど、ダンスで足を踏みまくっても仲良くなるのかな?
アルは足を踏まれて怒っているけど楽しそうだし、僕も王族相手っというより友達相手って気がしてきた。
途中で少し休んでここに来る前に買ってきた果実水を飲んで、また アルに誘われて踊って、随分たくさん踊ってヘトヘトになって ここに来る前に買った果実水も飲み終わってしまった。
「ビイ、大分 上手くなったんじゃないか?」
「アルのお陰です!でも こんな場所で男子同士で踊ったのはナイショにして下さいね?」
「ナイショ?いいね。その代わり ボクに対しては友達に対するのと同じ言葉遣いにしてね」
「……畏まりました」
ふーん とアルが目を細めた。
「分かった 今のダンスで足を踏まれた話をザベスに――」
「了解!分かった 敬語なしな」
うんうん と アルは頷いて今度はご機嫌な顔になった。
ルバートの王族はみんなこんなに表情豊かなんだろうか?
クレッシェンドでは 王族も貴族もそんなに喜怒哀楽を表さないから不思議な気持ちになる。
気が付けば ダンスの音楽がやんでいる。
少し時間を置いたら 同じ講堂で今度は生徒会主催の後夜祭だ。
姉上は制服からドレスに着替える為に一度屋敷に帰っているけれど、僕は制服のままで参加だ。
前もってアルが 「ボクが着替えるとなると ルバートの正装になっちゃうから制服のがいいかな」と言っていたし 僕だけ着替えるのも学友としては変だし、そもそも 男子生徒は制服のままの生徒が多いと聞いているしね。
ビイは真面目過ぎて、ダンスが苦手なんです。もっと楽しめれば上達すると思うんですけどね。
好きこそモノの上手なれ




