3-14 アルフレッド王子とのファーストコンタクト
招待状の指定の時刻に、僕と父上は王城へ向かった。
城に着くと案内役は父上の顔見知りらしく挨拶を交わしている。
海外の王族の世話役となった彼は緊張した面持ちで、僕達をアルフレッド王子の住まいとなっている城内の離れの入口まで案内する。
「アルフレッド王子はヒビキ様とお二人だけで話をすることを望まれていますので、伯爵はまた時間になりましたらこちらにおいで下さい。」
父上はちょっと心配げな顔をしながらも微笑んだ。
「じゃあビイ時間になったら来るからね。いつもの君で大丈夫だよ。僕は城の執務室に居るからね」
案内役にも軽く頭を下げて、父上は去って行った。
*
「こちらでお待ちください」
案内役がドアを開けると
「ビビ?!」
ソファの前に 銀の髪を後ろで一つにくくった、紫の目の少年が立って、こちらを見ていた。
隣の案内役が立ちすくむ
「王子!なぜ こちらに!!」
案内役にとっても 不測の事態だったのだろう
「だってさあ 待ちきれなかったんだよ~ 入って入って!!」
僕はフウと一つ息を吐き、部屋に入り丁寧に礼をする、王子の呟きが聞こえる
「ビビ! ホンモノだ!!」
ビビ? ホンモノ?
ルバートの言葉は 殆どクレシェンドと同じだけれど聞き間違えたかな?
「ヒビキ殿 初めまして。 アルフレッド・ルバートだ。会えてうれしいよ」
うん さっきのは聞き間違えだな。
アルフレッド王子は本当にうれしそうだ。予知夢というものに随分と興味がおありらしい。
「先に申し上げますが 夢見については国家機密も含まれますので ご期待するほどのご説明は出来ないかと存じます。」
「分かった。 あ、座って!」
王子はソファに座り その前の椅子に座るようにと僕を促す。
「失礼いたします」
面喰いながらも 僕はその椅子に腰を下ろした。
「あ 君たちはもう出て行っていいよ」
王子が案内役と、王子の後ろに控えている黒い服の男性に声をかけた。
案内役は一礼をして去り、黒服の男性は、もう一度王子にドアの方を指さされて、渋々といった様子で出て行った。
「ねえ ビビって呼んでいい?」
二人が出て行くと 向かい側に座った王子が身を乗り出した。
「はい?」
「やった! 僕の事はアルって呼んでくれる?」
「それは……」
「じゃあ 命令ね。僕の事はアルって呼ぶように」
「……畏まりました……」
なんなんだ?自由な国だとは聞いてるけど自由すぎないか?
僕は自分の背中がソファにくっついているのに気が付く。
「君には姉君がいるんだよね?」
「はい」
「どんな方?学校では一緒にいるの?」
え?ここで姉上について語るの?なんて?
何とか姿勢を正して顔に微笑みを乗せる。落ち着いて僕、平常心、平常心……
「今日は私一人で参りましたが 学園では常に姉とは行動を共にしておりますので
学園にいらした時には紹介させていただきます」
「え?一緒にいるの?ベスと?」
「ベス?」
「ああ ゴメン クレッシェンド王国の貴族名鑑には目を通させてもらったんだ。
姉君はエリザベスでしょ? ベスって呼んでいるのかなって思ってさ」
「いえ そのようには…」
「そうなの じゃあ なんて呼んでいるの?」
「私は姉上と 両親や友人達はザベスと呼んでおります」
「ザベス?!? え?じゃあ もしかして君はビビって呼ばれてないの」
「ええ 家族や友人からはビイと呼ばれております」
ここで隠しても 学校へ行けば分かる事だ
「そうなんだね!じゃあ 僕もビイと呼ぶね」
「……御随意に」
「ビイね うん ビイ」
アルフレッド王子はなんだか嬉しそうにつぶやかれた。
「ああビイ、君を指名したことについてだけどさ、ボクとフレーミイ王子が一緒に居たら、学園の生徒や教師も必要以上に気を遣うことになるでしょ?
だから、中流貴族がいいなあってクレッシェンドの貴族名鑑を見ていたら”夢見の一族”なんて変わった一族をみつけてさ、その家にたまたま同級生がいたから指名しただけなんだ。夢見について色々聞き出そうと思っている訳では無いから安心して!
ゴメンね世話役を押し付けて」
アルフレッド王子はそう言いながらもあまり悪いとは思っていなさそうだった。
それから せっかく他国に来たのだから、学園には寄宿舎から通いたいと希望していたけれど、他の生徒との兼ね合いや警備の問題から王城から通う事になったのだと、不満顔で話した。
王城と言っても住んでいるのは離れだから 気軽に遊びに来て欲しいと言われたけれど、王城は僕達中流貴族の、しかも学生が気軽に入れるところではない。
自由だなあ アルフレッド王子……
僕は表面上は、ニコニコしながらも内心呆れていると、アルフレッド王子の侍女が時間が来たことを告げに来た。
王子はエントランスまで僕を送って下さり、そこで僕を待っていた父上を驚かせた。
驚きながらも礼を取る父上に、王子は軽く頷いて、退出する僕達を見送った。
馬車へ行くまでの間も馬車の中でも、父上は何か聞きたそうにしていたけれど、グッタリと疲れている僕を見て そっとしておいてくれた。
王族って皆 あんなふうなんだろうか?
いや フレイミー王子は誰に対してもあんなにフレンドリーじゃないぞ。
ルバート王国の人たちは自由人だって 地理の本には書いてあったけれど 思っていたよりもずっとずっと自由な気がする。
これがカルチャーショック、というモノなんだろうか?
ありがとうございます。本日は連休中なのであと一話投稿予定です。ブクマして頂けるとわかり易いと思います。




