3-12 ネイビー伯爵家の庭園には果樹園もあるのです
「なあ ビイ お前 アーサーをどうやって懐柔したんだ? あの時のアーサーは確かにおかしかったけどさ、 数日であの変わりようってどういう事なんだ?」
「うーん あの後 ご両親と一緒に謝りに見えてさ」
身に覚えのあるリックの顔が引きつる
「エディか?」
「ううん 庭の果樹園のリンゴを一緒に食べたら凄く喜んでくれて それがきっかけかな?」
「果樹園のリンゴ?」
「そう 木から直接取って食べたんだ お行儀は悪いけどね」
「一緒に、木から、取った?」
「そう、すぐに食べたんだ。うちの庭師は腕がいいからね 美味しかったよ」
「まだ ソレはあるのか?」
「リックも好きだった?持ってこようか?」
「一緒に、木から、取って、一緒に、食べたい。」
なんか リック怒ってるの?背後からゴゴゴって音が聞こえそうだけど?
「うん いいよ 次の休みに来る?」
「今日 行く!」
武の家系 いつも通りに行動が早いです。突然の訪問に母上は驚いていたけれど、
「果樹園のリンゴを取って一緒に食べたいんだって」
僕が呆れ気味に告げると何か分かったような顔をして、笑って頷いた。
姉上は母上に呼ばれて行ってしまったので、果樹園には僕とリックの二人だ。
アーサーと食べたリンゴの木にはまだ実がなっていたから アーサーの時と同じように リンゴを取って、同じようにベンチに並んで座って 一緒に食べた。
「さあ リック これで満足した?」
「あのな ビイ 俺たち武の家系は一緒に飯食ったりするって話しただろ?
俺たちにとって 一緒に何かを飲むとか食べる、というのはとても意味がある事なんだよ。
だから ビビアがお前たちをあの飲食を伴う集会に招待したのは意味があるんだけどさ」
「え?そうなの?」
「そうなんだよ! で 特に 獲物を一緒にとって食べる というのは 兄弟分って言うくらいの仲なんだよ それを お前 知らなかったんだとは思うけど 俺より先に アーサーとってさあ。
そうかあ ネイビー伯爵家の庭園には果樹園があったんだよなあ はああ まさか 果樹園とは盲点だったなあ。」
ああ アーサーが突然”許された”なんて言いだしたのは、僕が兄弟分になろうって提案したと思ったんだね そういう訳かあ
あ!それよりも今、リックが 怒るよりもがっかりしている事にショックの深さが感じられるから フォローしなくちゃね
「リック まだ お腹に入る? 」
リックがだまったまま頷く
「じゃあ 次はミカン 一緒に食べようよ」
「甘いのをリックが選んでさ、それを半分こしよう」
一緒に一つのモノを食べる方が、ただ並んで同じモノを食べるよりも仲良し度は上でしょ?
みかんの木の所に着く頃には、リックの機嫌は直っていた。
リックが選んだ大きなみかんは 甘いというよりもけっこう酸っぱかったけれど、リックは美味しいと喜んだ。
手のかかる 親友です。 ま、喜ぶ顔を見られて僕も嬉しいけどね。
***
そうこうするうちに 三の月になった。
「ビイ 君が負担に思うようなら断れない事も無いんだけれどね」
夕食の終わりに父上が切り出した。
母上やルディは知っているような顔をしているけれど何だろう?
「来月から 北のルバート王国から、アルフレッド第三王子が我が国の王立学園に留学生として編入される事になっていてね。ルバート王国では3月が卒業式だからね、あちらの年少学校を卒業されてから 我が国の王立学園にいらっしゃるという事なんだ。」
「それがビイとどのような関係があるのでしょうか?」
「ああ、勿論、ザベスにも多分に関係してくる話になるから ザベスの意見も聞かせておくれ」
「クレッシェンド王立学園としては初めての留学生。しかも王族だから、アルフレッド王子の”学友”、まあ世話役だね としてフレーミイ王子を予定していたんだ。」
それが妥当ですね と姉上と僕は頷いて、父上が話を続けるのを聞く。
「それなのにね、なぜかアルフレッド王子ご自身が、ビイを指名して来た、というんだ。」
「「え?」」
姉上と僕の声が重なった。
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