閑話 ビクトリア・イエロー侯爵令嬢の場合 中
目が覚めると……あら? 何故目が覚めるのかしら?おかしいですわ?
わたくし いつの間に部屋のベッドに?
書庫に居たはずなのでは?あのノートは?
その時、遠慮がちなノックの音に続きドアが開き、光がさして 侍女のアリアが入って来ましたわ。
「アリア?」
「お嬢様~!!!!!!」
持っていた水差しをよく取り落とさなかったものね 流石 アリアですわね
アリアは慌てた様子で わたくしの近くに来るとひざまずき
「目を覚まされたのですね 今 お医者様をお呼びします」
小走りに出て行くアリアを はしたないですわよ、と見送りながらクスリと笑ったその時に、
自分がビクトリア イエロー侯爵令嬢であることを自覚しましたわ。
わたくしはビクトリア イエローにして 転生者?
つまり、あの不思議な文字を使っている世界から、転じて、クレッシェンド王国に生まれてきた者、という事ですのね。
そして あの文字の世界から見ると この世界は、えーと 「虹のリリ」という小説の世界なのですわね
それから?
とにかく あのノートをもう一度見なくてはいけませんわ。
鍵は?鍵?! お父様から頂いた鍵!!!
大変ですわ!!! 機密書庫の鍵を紛失なんてことになりましたら……
慌ててベッドから下りようとした時に、ノックの音がしてアリアと両親そしてドクターが部屋を訪れました。
「とくに 悪いところは見当たりませんから、 少し お疲れになったのでしょう
最近は 試験勉強や 入学の御仕度でお忙しかったのではないですか?」
ドクターからの特に問題はないという言葉に、書庫へ行こうとしたのですけれど、両親から止められてしまいましたわ。
鍵を返しに来ないわたくしを心配した父が 雑の書庫へ行くと窓際の椅子にもたれて気を失っているわたくしが居たのだそうです。
「今日、ゆっくり休まないのであれば、可哀そうだけれど、もう書庫の鍵は渡せないよ」
お父様は二本の指でつまんだ鍵を見せびらかすようにして、わたくしに言い渡し、明日までは預かるからと鍵を上着のポケットに入れてしまいました。
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翌日 わたくしは雑の書庫へ行き、あの緑のノートを探しましたが見つかりませんでした。
倒れていたわたくしの周りにそのようなノートはなく、お父様はそんなノートを雑の書庫でも、他の書庫でも見たことは無いというのです。もちろん 蔵書一覧にも載ってはいませんでしたわ。
「虹のリリ」、若しくは「リリ」という少女が出て来る小説についても探しましたわ 雑の書庫は勿論のこと、知識の家系の次期当主であるお兄様と文芸書庫の鍵をお持ちの次のお兄様にもお願いしたのですがみつかりませんでしたわ。
「リリというのは、平民の名前だからもしかしたら平民の間にだけ広がっている物語かも知れないな」「そんな事があり得るのですか お兄様」
「うん 王家に対して不敬な内容だったりするとね、そんなこともあるんだよ。まだお前は知らなくていいよ、僕達に任せておいて」
頼もしくお兄様方が約束して下さいましたから、この国に存在するようでしたらきっとお兄様方が見つけて下さることでしょう。
でも、と わたくしは思うのです、「虹のリリ」は やはりあの不思議な文字の世界にのみ存在する小説なのではないかと…
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あのノートの内容をこの国の言葉で書き残す事は、ノートを書いた方の気持ちを踏みにじるような気がします。でも、ノートの主さま わたくしの日記帳に少しだけ 単語だけ、書き記す事をお許しくださいませね。
鍵のついた箱にしまってある日記帳に 私なりの暗号を使いながら単語を記しておく
二時りり ふれいむ
三人の悪役
グリーン家(再考) クレナイ(チイ) ネイビー(母)
フレイム王子という王子が現れるまで、あのノートの内容はわたくしの心の中にしまっておこうと思います。わたくしが転生者であるかもしれないという思いと共に……
thanks




