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閑話  ヒビキという子供  ルディ目線  中

「ユメに聞いたが ヒビキという名前は出てこない。」


旦那様の夢見にも出てこないヒビキという子供は その後もどこかの家の兄妹事情や没落の予知夢をつづってきておりました。


ヒビキのウサギの夢から 気づけば二年ほどたち、子供の筆跡で夢見の報告をされていた私たちは

ヒビキの事を 甥の様に思っていたのかもしれません。


「ヒビキをわが家の養子に迎えたい」


旦那様からそういわれたのは ヒビキが五歳の時でした。

上流貴族として生きるのであれば五歳というのは、ギリギリの年齢です。

しかも お嬢様がいらっしゃるのに養子を迎えるという事は跡取りとして考えるという事になります。生まれ月を調べてはいませんが お嬢様の兄になるのでしょうか 弟でしょうか?

何より、王都から離れた地方の男爵家の次男に、王都の伯爵家嫡男が務まるのでしょうか?


旦那様のお考えに私は すぐに賛成はできませんでした。


改めて 調べてみると ヒビキは満年齢ですとまだ4歳でした。

お嬢様よりも 半年ほど遅く生まれていますから”弟”ということになります。


私は 自らヒビキという子供を見極める為にアイスブルー領へ赴く事にしました。

妻のアリスにその話をすると 自分も行きたいと言い出しましたが、現在アリスは伯爵家の人間ではありません。

”妻”を同伴するとなると 仕事ではありません、単なる夫婦旅行です…いえ、もちろん、妻と旅行に行きたくないわけでは無いのですが…


結局 妻から託された伯爵家の料理人による焼き菓子を山ほど持って 私が一人でアイスブルー家へと向かいました。


偶然を装って会ったヒビキは 私が本家の人間だと知り、お菓子の山を見ると気を許したようです。さすが我が妻、子供の扱いを心得ています。


私を”ヒツジさん”と呼び お嬢様のことを気にしていました。王子にいじめられている女の子だと思っているからでしょうか? 心根の優しい子なのでしょう。


**


「ヒビキは、大変可愛らしい、聡明な子供でしたよ。ただ、やはり地方の男爵家の子供ですから所作は平民とかわりません。

当家の血筋らしく、濃紺の瞳を持ってはいますが、髪色は銀ですから一目で当家の実子でないことは分かってしまうでしょう。そして 家族を慕っていますから環境も違う王都の伯爵家へ引き離してくるのは、私は賛成致しかねます」


これが 私の出した結論でした。

本来 ヒビキが自分の家を離れるにあたっての気持ちなど、ネイビー家にとっては関係のない事です。私がそこに言及してしまったあたり、もう私はヒビキの事が気に入っていたのかもしれません。


「ヒビキが夢見の才が有る子供なのはルディも認めるだろう?

 現在、 エリザベスには夢見の才が見られないから、夢見のできる兄弟が出来る事はエリザベスにとっても大いに助けになる。

 ルディが問題視している貴族教育は、ネイビー伯爵家で責任をもって行おう。

 養子として迎える子供は 本来はわが伯爵家の子どもとして生まれるところを間違えて生まれたに過ぎないのだ。

 ヒビキはわが家の子どもなのだから返してもらっても何も問題はあるまい?

  もちろん これまでの養育費や礼金は惜しむつもりはない。」


数日間 旦那様と奥様が話し合った結論がこれでした。




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