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2-16 サフラン侯爵家でのお茶会

そして、王立学園の入学試験の夏。少し緊張しましたが、僕たちは無事に合格通知を貰いました。クラス分けも僕と姉上は同じAクラス、学校へ通いだしてもずっと一緒に居られます。

 合格発表の翌日、母上の従妹、サフラン侯爵家からお茶会の招待状が届きました。双子の御令嬢が王立学園で僕たちと同級生しかも僕達とクラスメイトということで親子で顔合わせをしましょうって書いてありました。

 お茶会の招待状が届くの早すぎない?いつ書いたの?なんだか不思議ですが「それが貴族社会というものです」エディがそう言って、クレアも頷いていました。流石 貴族社会です。



「本日はようこそ サフラン侯爵家へ。皆様 来年から王立学園での同級生になりますからどうぞ仲良くしてくださいませね。内輪のお茶会ですから、わたくしが紹介させていただきますわね。わたくしの右隣におりますのが 娘のユウリイカとエウレイカですわ」


夫人と同じ赤みがかかった金髪の令嬢が二人立ち上がってピッタリ同じにお辞儀をします。

僕は双子という人に初めてお会いしたのですが、本当にそっくりなんですね。


「そのお隣がわが家と同じ知識の家系のオリーブ子爵家フィリップ様」


金髪のご婦人とご子息が一緒に一礼


「そして 武の家系ルビー侯爵家のエリック様」


赤い髪の背の高い婦人と大柄なご子息が一礼しました。僕はもっともっと大きくなりたいので 同級生なのに背の高いエリック様が羨ましいです。


「最後に私の左隣が私の従妹、ネイビー伯爵家のエリザベス様とヒビキ様ですわ」


三人一緒に立ちあがりお辞儀をします。楕円形のテーブルなので僕達で一周して紹介が終わりました。母親と子息令嬢方が見事に同じ髪色で、親子で髪色が違うのは僕達だけでした。僕は母上とは全く血縁関係がないので当然ですけれどね。


「ご存知のように王立学園では学生は平民も貴族も等しく平等ということになっておりますから、今日のお茶会は爵位に関係なく、平等、対等ということでお願いしますわね。子供達もわたくしたちもね 気軽なお友達として今日は過ごしましょう」


最後に口調も気軽な調子に変え サフラン婦人がお辞儀をして座られました。





「皆さま ボードゲームはお好きでしょうか?」

「当家のサンルームにいくつかご用意いたしましたの」


双子のご令嬢に案内されて、僕たち子どもは庭が良く見えるサンルームに案内されました。

少し暑いくらいの部屋に幾つかのテーブルと椅子がセットされて、ボードゲームが山積みになっています。


「こちらはカラハ、このガラス玉を穴に入れて動かしていくゲームですの」

「こちらは最近話題になっている将棋ですの」


ユウが広げたのは、少し前に父上がユメのお告げをヒントに考え出した”将棋盤”です。

販売しだしたのはつい最近のはずですが、サフラン家ではもう入手しているのですね。姉上が小さく親指を上げるのをみて僕も同じポーズをして笑いあいます

「ヒビキ様とエリザベス様は双子ではないんですのね?」

「それなのになぜ 同じ学年なのですの?」


ユウリイカ様とエウレイカ様が興味津々という顔で僕と姉上の前に立ちました。


「僕は五歳の時にネイビー伯爵家に養子入りしたので、姉上とは両親とも違うのです」


双子が顔を見合わせて しまった!という顔をしました。


「すいません、不躾な質問でした。」

「知りたいと思うと直ぐに聞いてしまうのは、私達の悪い癖だと言われていますの」

「いいえ いいんです。すぐに分かる事ですから気にしないでください」

「ヒビキ様は北のアイスブルー男爵家のお生まれ、ですよね?」


声のする方を振り向くとフィリップ様でした。


「よくご存知ですね」

「ボク、貴族名鑑に興味がありまして今日の皆様のページは暗記したものですから」

「僕も名鑑は暗記しましたが実際にお会いした時に情報を活かすのは難しいですよね」

せっかく覚えたことを活かせなかった王城のお茶会を思い出します。

「でも、夢見の方々は記憶力がすぐれていると――」

「へえお前 男爵家の生まれなんだ。ネイビー伯爵家の令嬢ともあろうものが、男爵の子息風情を実弟のように扱うとは驚いたな」


フィリップさまとの会話に割り込んできたのはエリック様です。僕が男爵家の生まれなのは事実ですが、悪意のある言い方に姉上が僕とエリック様の間についっと進み出ました。


「ヒビキはお父様が認めた、れっきとしたネイビー伯爵家の息子ですのよ。わたくしにとっては大事な弟ですわ」

あ、姉上の目が細められました。大丈夫ですから、そんなに挑戦的に言わないでください。

「お前、侯爵家に逆らうのか?」

「あら学園では平等、本日は対等ってお話、先ほどお聞きにならなかったのかしら?」

「ねえ姉上、カラハの遊び方を教えてもらいましょう」


 僕は姉上の手を取り「失礼します」とエリック様に笑いかけて、エリック様から少し離れようとしました。それが気に入らなかったのかエリック様の手が僕の胸元目指して飛んできます。こんなところでケンカですか?先に手を出したのはそちらですよね?僕はこちらに向かって来る手を掴んで、ごく軽くひねりました。エディに教わっている護身術の技です。


「痛い 男爵風情が生意気だぞ」


男爵?いえ、ネイビー家は伯爵ですけどね。とりあえず、手を離してすぐに姉上を後ろにかばいます。


「エリック、どういうことなの?」


ルビー夫人の厳しい声が後ろから飛んできました。不味い。僕は伯爵家、相手は侯爵夫人です。


「先に手を出したのは エリック様ですから」

「ヒビキ様を突飛ばそうとしましたから」


エウレイカ様とユウリイカ様が僕たちの後ろから叫ぶような声をあげました。


「こんな 恥ずかしい息子をここに晒してはおけないわ」


ルビー夫人はエリック様を引きずるようにして早々に帰ってしまわれました。


 残された僕達はそれぞれの親の隣に座らされてお茶会が続行されました。他所の家のお茶会って楽しくない物なのかなっと思いながら周りを見ましたら、サフラン侯爵家の双子も フィリップ様もいかにも『楽しい』という笑みを顔に張り付けてお菓子を食べたりお茶を飲んだりしていました。もちろん姉上も同じような笑みでお茶を飲んでいますし、こんな事を考えている僕も他から見たら上手に微笑めているはずです。

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