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2-4 嫌われてしまったのでしょうか?

 アリスのおかげで、最近は家の中では迷わなくなったし、言葉遣いもアリスから褒められることがあります。少し成長したかな、なんて思っていたのがいけなかったのでしょう。




「ヒビキ 食器の音がうるさいわ」


夕食を食べている時に、姉上に叱られてしまいました。


「ザベス お前だってなかなかにうるさいよ」

「ザベス もう少し淑やかに言えないかしら」


ぼくが謝る前に父上と母上が姉上を窘めます。姉上はもっと大きな声を出しました。


「ずるいです。ヒビキばっかり可愛がられて。わたくしにはクレアなのにヒビキにはアリスが付いて、わたくしは昼食の後も学習なのにヒビキは遊んでいます!」

「ヒビキはまだ5歳だからね。ザベスだって学習を開始したのは6歳になってからだよ」


父上が姉上をなだめるように言います。ぼくも今年でもう6歳ですって言わなくちゃ


「エリザベス。クレアに謝りなさい」


口元を拭いた母上が姉上に言いました。静かな口調でお顔は微笑んでいますが、怖いです。


「はい お母さま」


姉上はすぐに椅子から降り、控えていたクレアの所へ行き、クレアと何事か会話を交わし頭を下げて戻ってきました。


「謝りました」

「よろしい」


沈黙の中食事は再開されましたがぼくには味が分かりませんでした。ずるい、なんて言われてもどうしたらいいのか分かりません。姉上はぼくのことは嫌いになってしまったのでしょうか?謝ればいいのでしょうか?でも、何を?なんて?






トントントントン  トントントントン


雨の音で目が覚めました。目を開けると窓の外に月が見えます。久しぶりの夢見でしょうか?

トントントントン 


雨でなくて、ノックの音ですね。ソファで眠ってしまっていました。アリスかな?ルディかな?「失礼します」って入ってきてくれていいのにな。だって、身体が重くて……」


トントントントン


はあい、なんとか身体を動かそうとしたぼくはソファから落ちてしまいました。ふかふかの絨毯がほっぺの下と目の前にあります……ドアが遠慮がちに開く気配と悲鳴が聞こえたような気がしました。





あごまでかけられた布団の中から隣に居るアリスを見上げます。ぼくは夢見の一族ですが ベッドに居る時間が長すぎる気がします。


「大丈夫ですよ。成長期です。それに夢見の一族ですからね。シュウマンさまは夢見の後はたいてい1日眠ってらっしゃいますよ」


そうなんですね、父上もよくお休みになるんですね。それから、6歳って成長期でしょうか?


「成長期ですとも、さ。お水を飲みましょうね」


ぼくの上半身を起こしてくれたアリスがコップを渡してくれました。なぜアリスはぼくが考えて居る事が分かったんでしょう?あ、お水、美味しい!

「それから お薬です」


もう一つ、コップを渡されました。グイっと飲むと、美味しくない。不味い!


「はい お水です」


そうそう お水!!早くちょうだい!!!両手でコップを持ってお水を飲み干しました。


「アリス ありがとう」


やっと 声が出ました。



 夕食の後で姉上は父上と『話し合い』をしてから、ぼくの部屋に来てノックしても返事がないからドアを開けてみたらぼくがソファの下に倒れていて、それで急いでアリスを呼んでくれたそうです。そして、アリスがお医者さんを呼んでくれて、あの不味い薬を飲んで2-3日休んだらすぐに元気になるらしいです。


「しばらくはお勉強もお休みしましょう。アリスはここに居ますからゆっくりお休みください」


アリスはぼくのベッドの横で椅子に座って細い糸で何か編み始めました。ちょっとだけアイスブルーの母さまを思い出しました。母様のはもっと太い毛糸でしたけど……

 朝のお散歩も父上のお見送りも出来ません。今のぼくは寝るのが仕事だと言われました。それに誰かに風邪をうつしても大変なので眠い気もしませんがふとんに包まっている事にします。


トントントントン トン


寝室のドアを誰かがノックしています。アリスだったら入って来てくれると思いますけれど?


「誰ですか?」

「ザベスよ、入ってもいいかしら?」

姉上!姉上です。会いたいです。謝らなくっちゃ 嫌いにならないでってお願いしなくっちゃ

「ダメです 入らないでください」


姉上に風邪をうつしたらダメです。


「…… 怒っているの? …」

「いえ?ぼくは怒っていませんけど、怒っているのは姉上では?」

「え?わたくしは謝ろうと――」

「お嬢様!! こちらに来てはいけませんと申し上げましたが?」


アリスの声が聞こえて姉上が何か言う声が聞こえて、そしてドアが閉まる音がしました。よかった。姉上の声が聞けました。姉上は怒っていないみたいです。


 安心しました。あくびが出ます。眠るのが仕事、なので、眠ることにします。姉上にあったら、お礼を言いたいな、倒れているぼくを見つけて、アリスを呼んでくれてありがとうって。




 人の気配にうっすら目を開けると父上がベッドの横に座っています。小さな明かりをつけて 何かを読んでいます。何を読んでいるのかな?父上の方を見ようと体の向きを変えます。


「おや 起きたのかな?」


父上が読んでいたものを脇に置いてぼくの近くに椅子を寄せます。


「僕は…息子が出来たのが嬉しくってね。君に負担をかけてしまったようだ。ごめんよ」

「伯爵が謝る事では―」

「父上とは呼んでもらえないのかな?」


父上の眉尻が下がります。


「間違えただけです、父上」


本当に間違えただけなんです。


「えっと、父上、ぼく、朝の散歩が楽しいです。母上や姉上とのレッスンも好きですよ」

「そう」


父上が優しく微笑みます。


「父上、ぼく、父上のその優しいお顔も好きですよ」


布団の外へ伸ばしたぼくの手を父上が両手で一度握って、そしてすぐに布団の中に戻しました。それから、布団を肩の所まであげてくれました。……ほくは本当にこの優しい父上が好きです。



らないで言いました。

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