4-26 かがり火 と ブーケ
そのまま 姉上の肩に顔を埋めてしまった僕の頭の上に姉上の戸惑ったような声が降って来て、次は、沈黙が降って来た。
「ビイ様!ザベス様!馬車を停めます」
エディの慌てた声がした。けれど、これは事故キスへの抗議じゃないよね?
馬車が急停車し、バランスを崩した姉上がシートから落ちないように僕はもう一度抱きしめる。
さっきの事があるからか、姉上が身体を固くし、ちょっと気まずいけれど、今はそれどころじゃない。
止まった馬車の窓から身を乗り出すと、前方、ルバートとの国境が随分明るい。沢山のかがり火が焚かれているようだ。
「追手?」
「お祭りかしら?」
姉上の言葉と僕の言葉が正反対で、二人で吹き出した。おかげで気まずい雰囲気も消えた。
今のは わざとですか?姉上?
クレアが馬車に乗り込んできた。
「旦那様方は先にルパートに入国されているはずですが、国境が妙に明るいので念の為にエディが様子を見に行きました。」
クレアの声が緊張している。
「きっと、今日はお祭りだから明るくしているんだと思うわ」
姉上は 僕に”大丈夫”と笑いかける。相変わらず 姉上は頼もしいなあ。でも 僕はせめて剣を持ってくればよかった、と後悔する。
「クレア、姉上をお願い。」
僕は二人をなるべく扉から離す。クレアは姉上を守るように抱きしめて馬車の奥へ避難する。
僕は何か武器になるものは無いかと椅子の下を探して武器になりそうな棒を見つけた。外に出た方がいい?それとも扉の近くに居た方がいい?
もう一度、様子を見ようと窓の近くによる。外に何の気配も無さそうなのでそっと顔を出したのと同時に、
「いいぞ! 大丈夫だ!」
エディの声がして、馬車が動き出す。
「アルフレッド殿下が 歓迎のかがり火をたいてくれている、との事です」
並走するエディの声に、ふうっと馬車の中の緊張がほぐれる。
アルったら脅かさないで欲しいよ……ってか どうしてアルが先についているんだろう?
「もう!アルったら 何が起こったのかと思ったよ」
僕は持っていた棒をシートの下に放り投げて、手をパンパンと叩いて汚れを落としてシートに座る。
「ね?お祭りって言ったでしょ?」
姉上が勝ち誇ったように言いながら、僕の隣に座る。
「お祭り、でしょうか?」
クレアが呆れたように言って 僕たちの向い側に座った。
やがて、昼間の様に明るく照らされた国境で馬車が止まる。たかが伯爵家の馬車を迎えるには派手すぎでしょ?
そんなことを思っていると馬車が止まる。国境を越えたのだろう。僕が馬車の扉を開けると
「おっそいよ ビイ!!」
学園祭の時のスーツのままのアルが扉の前で待ち構えて居た。
サプライズを演出しようとアルはどれだけ急いだんだろう?本当にこの王子様は人を驚かせるのが大好きなんだから……
「アルフレッド殿下!」
すぐにザベスも僕の隣に立つ
「ねえ ブーケは?」
アルが叫ぶ様に言う。
挨拶より先にそれですか?訳が分からないでキョトンとする僕達にクレアが座席の上に置いてあった青と白のブーケを姉上に渡す。
コレかしら?っと姉上が軽く掲げてアルに示すと
「それ 投げて!僕に! 」
戸惑った顏でいる姉上にアルが催促する
「ザベスほら! 投げて! ようこそ ルバートへ! ほら 高ーく投げて!」
「ザベスさま 多分、ルバートの風習ですよ!」
クレアに言われて 合点がいったらしく姉上がブーケを夜空に向かって放り投げる。
沢山たかれた、かがり火の明かりの中に白いブーケが放物線を描いて飛んで行き、アルがキャッチした。
その小さなブーケを両手で包んだアルが、今まで見た中で一番の笑顔で笑って
「お し まい!!」
と言うのが聞こえた。
読んで頂きありがとうございました。本編終了です
プロット(?)らしきものを作った時はこの半分以下の文字数の予定でしたが、読んでくださる皆様と勝手に動いてくれた登場人物たちのお陰で長編を書き上げることが出来ました。感謝 感謝 感謝 です。 一人、語り足りないって方が居るので、明日は閑話でその方の登場です。それから短編でもうひと方、出番が少ないと不満顔の方がいらっしゃるので明後日くらいに投稿予定です。
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