4-22 姉上、悪役令嬢ってご存知ですか?
僕は目を瞠ったけれど、直ぐに姉上に向かって親指を立てた。「当たり です」
姉上が得意げな顔になる。僕以外にも同じような夢を見た者が居る事は言わない。姉上が知るのは最低限でいいからね。
「それで?どんな夢見なの?」
「夢見では、夢見のエリザベスは、フレーミイ王子が大好きで、ピンクウサギと対立しているんだ。ピンクウサギに意地悪もしているかもしれない。
それで後夜祭で、今日の様に王子に詰め寄られる。でも、エリザベスは王子に『証拠も無いのに』って言い返して、王子たちを嘲笑うんだ。」
「えっと、それはどういう事なのかしら?王子が大好き?ピンクウサギと対立?え?嘲笑うって??」
姉上が目をぱちぱちさせて 両手でこめかみを押さえるようにしている。なんだかその様子が可愛くて ギュっと抱きしめたい!けれど、全開にされている扉の向こうから エディとクレアが見ているような気がして、出来ない……
「それで、ビイは私がそんな風に王子を挑発したり、嘲笑ったりすると思っているのかしら?」
気を取り直したのか、姉上が片方の眉を上げて、微笑みながら僕を見る
「えっと、夢見は、予知夢、つまり、あったかも知れない未来」
夢見のエリザベスの事はあまり言いたくないけれど
「夢見のエリザベスは 母親を小さいころに亡くしていて、父親もそれが悲しすぎてエリザベスにかまってくれない。誰も、エリザベスを気にしたり、愛してくれなかったから、エリザベスは王子の関心を引きたかったし愛されたかったんだと思う。」
「まあ、お母さまが居ないなんて可哀そうに。やっぱり、わたくしとは違う世界のエリザベスなのね?」
「うん、姉上じゃないんだよ、夢見のエリザベスは姉上とは違う存在なんだけど、それでも 僕や父上や母上は、どこかで、何かのタイミングで夢見のエリザベスと姉上が重なることを心配したんだ」
「え?父上や母上もご存知なの?」
「姉上を夢見のエリザベスと違う存在にしようと、一番模索したのは父上だと思う」
僕じゃないのは残念だけれど、僕はいろんな意味でまだまだ父上には敵わない
「あのね、姉上、神様の中に運命の神っているでしょ?」
姉上は、突然の僕の質問に不審そうな顔で頷く
「今度は 何の話かしら?」
「その神に、悪役、『悪役令嬢』って役を割り当てられちゃう人もいるんだって」
「それが わたくし?」
姉上が不満げに聞いて来る、僕は首を振る。
「それが、夢見のエリザベスだった。不幸な生い立ちを与えられて、悪役令嬢にされちゃったんだ」
「酷い神様ね!」
姉上は扇で顔を隠すけれど、眼が怒っているのは丸わかりだよ。
「ねえ、姉上。もし、僕が友達に意地悪をするような『悪役令息』って役を与えられていたらどうする?」
「ビイが誰かに意地悪をするなんて想像も出来ないけれど?」
姉上が小首をかしげる
「もしも、だよ、僕が意地悪な『悪役令息』で 家族や使用人に我がままばっかり言って、皆に嫌われるような役を与えられているヒビキで、最後にはリックにやっつけられちゃう役を与えられている。それを姉上が 夢見で知ったらどうする?」
僕は姉上の顔を覗き込む
「もし、ビイが悪役を割り当てられていたとしたら、ビイがその役を演じる事を全力で阻止するわ
我がままには育てないし、リックには近づけない」
姉上の瞳が輝く。むしろリックが悪役みたいだね、リックごめんね。
「同じように 父上と母上、それから僕も思っていたんだ。姉上を『悪役令嬢』になんてさせないって」
クレアの事は伏せておく、多分、クレアもその方がいいだろうから……




