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1 おんなのこが おうじみたいなこにいじめられている 夢

「うわあ 美味しそう!」


 目の前のテーブルには山盛りのデザート、隣には肉料理、あっちのは飲み物で、むこうにあるのは……あれ?ここはどこでしょう?見回すと黒っぽい服や綺麗なドレスを着たお兄さんやお姉さんが楽しそうに笑ったりお話したりしていて、天井には沢山の明かりが灯っていて……分かりました、ここはお城です。これから舞踏会が開かれるのです。絵本で見た事があるので間違いないです。

 ほら、今入って来た金の髪のお兄さんはきっと王子様です。そして、王子様に近づいていく紺の髪のお姉さんはお姫さ――。


「エリザベス・ネイビー!貴様に謝罪を要求する!!」


王子様が突然、そのお姫様に指を突き付けて怒鳴りました。

王子様だとしても女の子を怒鳴りつけるなんてダメです、五歳のぼくでも分かります。なんで誰も動かないんでしょうか? 

 黒い扇で口元を隠したお姫様、エリザベスが何か言い返します。目は笑っているように細められています、口の両端も吊り上がっています、でも笑ってはいません。エリザベスがヒラリと黒いスカートを翻して向きを変えた時に、綺麗な紺の目から涙がこぼれそうになっているのが見えました。エリザベスの悲しい気持ちがぼくの中に流れ込んできて、胸がギュっとなります。

「だいじょうぶ なかないで」ぼくはエリザベスに駆け寄――


 パチリと目が開いてイブキ兄さまの銀の髪が見えました。僕と同じ色の髪が月の光を受けて白く光っています。首を回すとマリー姉さまがやっぱり月の光を受けながら眠っています。いつもと同じ静かな夜。なのにぼくの胸がドキドキうるさいのは、急に夢の世界からここに戻されたからなのか、それともエリザベスの涙に濡れた目を見たからなのかよくわかりません。

 ぼくは二人を起こさないようにそっとベッドから抜け出して机の引き出しから”ヒビキ アイスブルー”と名前がはいった夢見帳を取り出します。慎重にインク壺と羽ペンも取り出して今の夢を書きつけます。


”ごうかなパーティ。みんな黒いふくをきている。金のかみの男の子にこんのかみと目の女の子が何か言われている。女の子は向きをかえた。女の子の名前は エリザベス・ネイビー 王子様とお姫様でお城かもしれない”


どこで、だれが、何をしたか。それから自分の想像は想像だって分かるように書くこと、よし、大丈夫です。あれ?ネイビーというのは本家の家名と一緒です。もしかしたらあの女の子は本家のネイビー伯爵家のお嬢様なのかもしれません。


 ネイビー伯爵家はぼく達アイスブルー男爵家の本家です。夢見の伯爵家と呼ばれ予知夢により未来を占い、国を助けているのです。その末席に連なるぼくたちアイスブルー男爵家もそれを助けるべく夢を記録しています。ぼくも3歳の頃からちゃんと自分で夢の記録をしています。夢を報告することで分家のぼくたちは本家の伯爵家からリョウチケイエイのホジョキンがもらえるし”すごい夢”を見ればご褒美がもらえるのです。でも、うちはお金持ちではなくて……それは”すごい夢”が見られないからかもしれません。


 ぼくはまだインクが乾かない帳面を机の上に開いたまま置いて、ペンとインク壺を引き出しにしまいました。「エリザベス・ネイビー」お姫様の名まえを呟くとまた胸がドキドキし始めました。その胸を押さえながらベッドに戻って兄さまと姉さまの間に滑り込みます。ドキドキがおさまって来てアクビがでました。この場所はとても落ち着くのです。



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