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絶望魔王の滅ぼし方  作者: 広海智


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十二 瀕死王国

 星夜神ラートゥリーが、妹である暁光神ウシャスと交替した。途端に、地上に眩い光が行き渡っていく。毎朝のことだが、美しい光景だ。けれど、その夜明けを待たずに、ラクシャスの少年は姿を消していた。自分がここに留まれば、どういうことになるか、よく分かっていたのだろう。それは、ナヤク達も同じである。怪我の治りかけた右足を引き摺り引き摺り、去っていく少年を、アアシャも、一緒に世話を焼いたチャッタンも止めなかった。少年も、礼は言わなかった。それでいい。それで仕方ない。

(アアシャや兵達は、おまえの一族の者を大勢殺した。おれも、今度会ったら、そうするかもしれない……)

 ナヤク自身は、昨夜ただの一人も殺めていないが、それはアアシャのお陰である。

(アアシャは、おれ達を守るために呪力を使ってくれた。おれは、アアシャに殺戮をさせておいて、ただ安穏と突っ立っていたんだ……)

「ナヤク」

 不意にアアシャが背後から声をかけてきた。振り向けば、少女祭官は不満顔だ。暴風雨にぐしゃぐしゃにされた長い黒髪が、いつにも増してあちこち跳ねているさまが妙に可愛らしい。聖仙の威厳が半ば台無しになっている祭官は、厳しい声音で言った。

「ウシャスになど見とれていないで、早く朝食を用意して下さい。軍が出立してしまいます。食事抜きで過ごすなど、考えたくもありません」

 ナヤクは、完全に食事担当と目されているらしい。くすりと笑って、ナヤクは踵を返した。

「すまない。すぐに用意する」

 ナヤクが小麦粉を発酵乳で溶いていると、チャッタンも起きてきて、小さくなりかけていた焚き火に枝をくべ、火を大きくしてくれた。アアシャはその傍らで、嬉しげに朝食の完成を待っている。ナヤクは、布施の中から蜂蜜を選び出し、母がしてくれたように、焼き上がった麺麭に塗ってやることにした。



 ラクシャスを手痛い目に遭わせて撃退した所為か、以降、遠征軍がレギスタン王国へ至るまで、神魔の襲撃は殆どなく、たまに遭遇しても、兵達が力を合わせれば、簡単に撃退できる程度のものだった。ナヤク達が所属する先遣隊の後方から来る本隊も、同様だったらしい。遠征軍は、ほぼ無傷で、最初の目的地たるレギスタン王国へ入ったのだった。だが、そこで、ナヤク達は魔王復活の現実を見ることとなった。

「――酷いものだな……」

 道を行きながら、兵達の一人が呟いた。もともと砂漠の国たるレギスタン王国は、手足のない長い体で水を堰止める魔蛇ヴルトゥラによって、高地からの水の流れを止められ、更に乾燥し切った死の大地へと変えられていた。地下から汲み上げる水で水路が整備してあるはずの村々で、作物が皆枯れている。家畜達も痩せ衰え、村人達の顔からは生気が消えている。それは、悪魔の襲撃とはまた別の、軍の力では如何ともし難い、一国全土に渡る荒廃だった――。

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