#0 プロローグ
ごくふつうに生まれ、ごく普通に育ち、ごく普通に生活していた。
友達にも恵まれ、いじめられることもなく、それなりに人生を歩んできた。
平凡な人生を歩んでいた。
・・・そうだよな?
ただ、心残りがあるのだとすれば、今の今まで彼女が一切できずにいたこと。
・・・それくらいかな。
・・・でも、今は違う。
いや、ていうか、違う。違いすぎる。
正確には、昨日から、まるっきり違う。
だって、俺の目の前には、彼女と母親を名乗る女性がそれぞれいるから。
・・・もちろん、この世に生を受けたのだから、俺を生んでくれた母親は居るよ?
その母親じゃない。
もう一度改めて言う。
俺の目の前には、彼女と母親を名乗る女性がそれぞれいる。
しかも、母親を名乗るのが2人もいる。
今は朝6時。
俺はアパートの部屋の中で、布団に包まれて仰向けに寝ている。
左と右、両隣に2人、俺を見るように寝ている。
2人とも、母親を名乗っている。
そして、仰向けになっている俺の上に1人、俺を見るようにして、うつ伏せで乗っかっている。
乗っかっている女性が彼女を名乗っている。
そのうちのひとり、仰向けの俺から見て左側にいる、母親を名乗る女性が俺につぶやく。
「おはよう、潤」
睨まれたら怖ささえ感じるキリッとした目、黒のストレートロングヘアー、凛とした感じの女性から
発せられる優しめの声に、俺はうとうとしたまんまで言葉を返す。
「・・・ん?ああ、おはよう、みゅう」
その直後、矢継ぎ早に、仰向けの俺から見て右側にいる、母親を名乗る女性があとに続く。
「おっはようぅ、潤くぅん。うふふふふ」
優しそうな感じの目、茶色いセミロングヘアーの女性に声を掛けられた俺は、眠気を残したままで
彼女につぶやく。
「・・・ん?ああ、うん、おはよう、みーちゃん」
その直後、矢継ぎ早に今度は、俺の上に乗っかっている彼女を名乗る女性がつぶやく。
「おはよう、ダーリンっ」
さっきの2人を足して2で割ったような感じの、茶色のロングヘアーの彼女にいきなりキスをされて
抱き枕みたいに抱きつかれた俺は、急に驚いて目を覚ます。
「ちょ、ちょ、ちょ、おま、え、おい、き、き、キスで、キスで起こさないでよ」
・・・ああ、そうだ。言い忘れていた。
3人全員、人間ではない。
人間そっくりのロボットだ。
流すように話を聞いていたので、遠い宇宙の果てから来たことくらいしかわからん。
彼女たちは、昨日から、俺の部屋に居候している。
今までひとりぐらしだった、俺の部屋に居候している。




