とある少女の話
あるところに可愛らしい少女がいました。
その少女はお母さんに買ってもらった赤いポンチョがお気に入りでいつも身につけていました。
ある日少女はお母さんから頼まれごとをしました。
「おじいちゃんのもとへ届け物をしてくれないかしら?」
「もちろんいいわ、お母さん」
「じゃあ、これをお願い。決してこれを開けてはいけませんよ」
「わかってるって」
「後これもお願い。これはおじいちゃんと一緒に食べてね」
そういって少女はお母さんから革製の布に包まれたものと木でできたかごのバックを受け取りました。
「絶対に寄り道はしないようにね」
「はいはい、わかっているわ」
そしておじいさんのもとへ向かった少女。
おじいさんの家へ行くためには森を抜けなくてはいけませんが少女はどうしても森を通りたくなかったのでどうにか森を通らない方法はないかと考えているところでした。
「ああ、そこのお嬢さん」
「なんですか?」
一人の男が少女に話しかけてきました。
「この近くに町はないかね?」
「町?町ならこの森を抜けた先にあるけど・・・」
なぜそんなことを聞くのかを疑問に思いながら心優しい少女は教えてあげました。
「そうかい、親切なお嬢さんどうもありがとう」
バカな女だ。俺がオオカミだとも気付かずに町を教えるなんて。
次はその村を襲おう。さあ、少女が来るよりも先に行かないとな。
しばらく、考えたが森を通るルートしか浮かばなかった少女は仕方なく森を通ることにしました。
森には少女を誘惑するものがたくさんありましたが、お母さんと寄り道はしないという約束があったので少女は我慢して進みました。
そしてやっと町の入り口付近に来た少女は町の入り口のところにある木に狼がいるのを見つけました。
森ではずっと我慢していた少女。
さすがにもう限界で、お母さんから絶対に開けてはいけないといわれていた革製の袋を開け中身を取り出してしまいました。
そして、ゆっくりと気付かれないようにオオカミに近づいた。
後ろから一突き。
「おい、何している」
「あっ、おじいちゃん」
オオカミを一突きしたところをおじいさんに見られていた少女はとても気まずそうな顔をしました。
「ああ、またか」
「ごめんなさい」
「おまえに頼むといつもこうだ。せっかく研ぎに頼んだのに届くころには使用済み。俺は研ぎたてが使いたいんだが・・・」
「森の中では我慢したのよ。でも、森の外にいるとは思わなかったからつい・・・」
「はー、ついじゃないだろ」
おじいさんに怒られてしまった少女はすっかり落ち込んでしまいました。
「殺したのか?」
「ううん、気を失っているだけ。だから少ししたら起きるよ」
「起きたこいつをどうすんだ?」
「うちで飼えないかしら?」
「無理だろう。あいつが家畜の飼育以外を許可するとは思えない」
「そうよね」
「そうだわ、おじいちゃんの家で飼えないかしら?ねぇ、お願いおじいちゃん。この子きっといい番犬になるわ。お世話にだってくるから。ね、お願い。」
可愛い孫にお願いされたおじいさん。孫のお願いは断れないし、なによりこれがきっかけで孫が頻繁に家に来るならと自分の家でオオカミを飼うことに決めました。
「はっ、ここは?」
「ここは俺の家だ」
「人間の家だって?それは好都合だ」
そういったオオカミはいきなりおじいさんに飛びかかろうとしました。
しかし、飛びかかれませんでした。
飛びかかる前にオオカミはおじいさんとの力の差がわかってしまったからです。
「俺をどうするつもりだ」
「番犬にしようと思ってな」
「俺を犬扱いするというのか」
「ああ。お前を捕まえた孫がたまにお世話に来るっていうからしっかり番犬するんだぞ」
「意味が分からないんだが」
「いいな」
どう頑張ってもおじいさんには勝てないことが分かっているオオカミさんは諦めて番犬になることを了承しました。
その後、お世話に来た少女を見てオオカミさんは驚きました。
なんといってもおじいさんの孫は5歳にも満たない少女だったのだから。